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    セクハラやパワハラ、ネット犯罪に対処するための法律の知識が身に着くコラム。

    増えるイクメン、職場のパタハラ問題の対処法

    パタハラとは

     「パタハラ」とは、「パタニティー・ハラスメント」の略です。パタニティー(Paternity)は父性という意味で、母性という意味のマタニティー(Maternity)の対義語です。

     パタハラとは、男性の労働者が育児休業をとったり、育児支援のための短時間勤務やフレックス勤務をしたりすることを、妨害したり嫌がらせをしたりする行為のこと(降格等不利益な取り扱いや育児参加を否定するような言動も含みます)。マタハラ(マタニティー・ハラスメント)の男性版として使われるようになった言葉です。

     余談ですが、マタニティー・ハラスメントもパタニティー・ハラスメントも、セクシャルハラスメントとは異なり、和製英語です。

    育児・介護休業法

     女性の社会進出に伴い共働き世帯が増加したことによって、男性の育児参加が求められるようになってきています。

     2010年6月30日に施行された「改正育児・介護休業法」では、父親も子育てをできる働き方の実現(父親の育児休業の取得促進)のために、<1>父母がともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長<2>出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進<3>労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止――がなされました。

     <1>は「パパ・ママ育休プラス」と言われるもので、それまでは父親も母親も、子どもが1歳に達するまでの1年間育児休業を取得可能だったのですが、改正法では母親だけでなく父親も育児休業を取得する場合、休業可能期間が1歳2か月に達するまで(2か月分は父親のプラス分)に延長されました。

     その結果、母親が育児休業を終えて職場復帰で大変な時期に、父親が育児休業を取ることで、協力して子育てをするような対応が可能となりました。

     <2>は、妻の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、特例として、育児休業の再度の取得を認めることとして、出産後8週間以内に父親が育児休業を取得しやすいようにしました。

     <3>は、改正前までは労使協定により、配偶者が専業主婦であれば育児休暇の取得を不可とすることが可能だったのですが、改正法ではこの規定を廃止し、すべての父親が必要に応じて出産後8週間以内であれば育児休業を取得することができるようにしました。

     なお、育児・介護休業法では上記改正前から、男性の仕事と子育て両立の支援制度として、ほかにも以下のような内容が規定されています。

     <4>3歳に達するまでの子を養育する労働者は短時間勤務を申請可能

     <5>小学校就学前までの子を養育する労働者が請求した場合、1年150時間を超える時間外労働を制限

     <6>小学校就学前までの子を養育する労働者が請求した場合、22時から5時の深夜業を制限

     <7>小学校就学前までの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日を限度として看護休暇付与を義務付け

     <8>労働者を転勤させる場合、育児の状況についての配慮義務

    イクメンプロジェクト

     こうした育児・介護休業法改正による支援のほかに、厚生労働省は10年6月17日から、男性による子育て参加や育児休暇取得の促進を目的として、「イクメンプロジェクト」を始動しました。

     このプロジェクトは、働く男性が、育児をより積極的にすることや、育児休暇取得をすることができるよう、社会の気運を高めることを目的としています。同省は、「イクメン」をより幅広くPRしていくため、「イクメンプロジェクト」のサイトを立ち上げて、委託事業として実施しています。

     このサイトの冒頭には、「育てる男が、家庭を変える。社会が動く。」というキャッチコピーが掲げられており、「イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと。または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと。イクメンがもっと多くなれば、妻である女性の生き方が、子どもたちの可能性が、家族のあり方が大きく変わっていくはず。そして社会全体も、もっと豊かに成長していくはずです。イクメンプロジェクトは、そんなビジョンを掲げて発足しました。」と高らかに(うた)っています。

     ちなみに、このプロジェクトでは、13年より「イクメン企業アワード」という企業表彰の制度が設けられており、10月2日には15年の受賞企業が発表される予定です。昨年の受賞企業としては、アース・クリエイト、昭和電工、住友生命、千葉銀行、日本生命、日立ソリューションズ、丸井グループなどの名前が挙がっています

    育児休業の現状

     こういった世の中の動きを受けて、実際に男性の育児への参加意欲は徐々に高まっているようです。13年8月にライフネット生命が発表した育児休業に関する意識調査によれば、63・6%の男性が「育児休業を取得したい」と希望しています。

     しかし、厚生労働省が実施した14年度の雇用均等基本調査によれば、男性の育児休暇取得率は、13年度の2・03%から0・27ポイント改善したものの、依然として2・30%に止まっています。

     また、12年度の雇用均等基本調査によれば、男性の育児休業の取得期間は、5日未満が41・3%、5日~2週間未満が19・4%、2週間~1か月未満が14・8%。1か月未満の取得が75・5%と、男性はごく短期間しか育児休業を取得していない結果となっています。

     こうした現状が、前述の読売新聞における「『イクメン』離職続々」という事態へと、積極的に子育てをしたい男性を追い込んでいるのだと思われます。

    育児休暇取得とパタハラの密接な関係

     制度的には、育児・介護休業法の改正によって育児休暇を取得しやすい状況となり、男性の育児への参加意欲も高まっているにもかかわらず、男性の育児休暇取得はそれほど進んでいない大きな要因の一つとして、パタハラの問題があると指摘されています。

     前述のライフネット生命の育児休業に関する意識調査でも、76・4%の人が、「男性が育児休暇を取得できる雰囲気がない」、20・1%の人が「同僚の男性が育児休暇を取得すると不快と感じる」と回答しています。

     日本労働組合総連合会(連合)が14年1月23日に発表した「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」でも、「自分の職場は男性も子育てをしながら働ける環境にある」と回答した人は21・9%にとどまりました。51・0%の人が「そのような環境にない」と回答しています。「自分の職場で男性の子育てに対し理解があると思う人が誰もいない」と回答した人も、45・1%と半数近くに及んでいます。

     これは、男性の育児休暇取得に対する職場の抵抗感が日本では依然根強いことが原因であると考えられます。同調査における「職場でパタハラが起こる原因は何だと考えるか」の質問に対する回答も、「上司や同僚の理解不足・協力不足」が57・3%と最も多く、「会社の支援制度の設計や運用の徹底不足」が45・4%、「性別役割分担意識」が4・1%、「職場の恒常的な業務過多」が41・3%、「フォローする周囲の社員への会社からのケア不足」が35・8%となっています。

    2015年09月09日 11時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    蒲俊郎 (かば・としろう
    弁護士(第二東京弁護士会所属)
    城山タワー法律事務所代表
    http://www.shiroyama-tower.com/
    桐蔭法科大学院・教授
    http://toin.ac.jp/lawschool/teacher/kaba/
    桐蔭法科大学院・法科大学院長
    http://toin.ac.jp/lawschool/info-top/message2/
    日本法律家協会会員、日本私法学会会員、情報ネットワーク法学会会員他
     専門分野は、電子商取引全般、労働事件(使用者側)、会社商事関係全般等
     多数の企業の顧問弁護士として日々活動するほか、複数の上場するネット企業の社外監査役なども務める。他方、2010年4月、ロースクールのトップである法科大学院長に就任し、多忙な弁護士業務の傍ら、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。
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