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    セクハラやパワハラ、ネット犯罪に対処するための法律の知識が身に着くコラム。

    増えるイクメン、職場のパタハラ問題の対処法

    パタハラ解消のために意識の変化を

     前述した、イクボスプロジェクトが端的に表しているように、まずは「イクボス」へと変わる必要があります。つまり、企業はもちろんのこと、仕事一筋であった一定年齢以上の管理職が、「女性活躍」と「男性の育児参画」はセットであることを理解するということです。

     こうした変化の必要性が、今まさに社会から求められているという現実を十分に認識する必要があると思われます。男性の育児参画に対する価値観が変わりつつあることを認識しないと、大きなリスクを背負うことになりかねません。

     本コーナーの「『言葉のセクハラ』最高裁判決の意義」(15年3月11日)で解説したように、言葉のセクハラを理由とした懲戒処分について争われた事案で、最高裁判所は身体接触のない発言だけであっても、企業は社員に重い処分を下すことができる旨を判示しました。

     この裁判の審理過程において、言葉のセクハラを繰り返し、懲戒解雇に次ぐ重い処分である出勤停止処分を受けた男性管理職は「性的な関係を迫ったり、わいせつな行為をしたこともなく、その人格を直接傷つけるようなことを述べたわけではなく、雑談の中で男女の関係に関する話題を口にしただけ」「休憩室での雑談の中で持ち出された話題をいちいち取り上げて問題にすることは間違っている」というような主張を行っています。

     この主張は、もしかすると一定年齢以上の男性社員にとっては共感できるものであるかもしれません。しかし、最高裁判所は、そのような主張そのものが既に時代の変化に取り残されていたことを明らかにしました。

     この管理職は、何が違法なハラスメントに該当するかの基準が時代の変化とともに変わっていたことに気がつかなかったために、重い懲戒処分を受けるに至ったわけです。

     上記本コーナーでも、読売新聞のコラムである「編集手帳」が、上記最高裁判所判決につき述べた一節を紹介しましたが、今回も同じように、そのコラムの引用で締めくくりたいと思います。

     企業やそこに勤める管理職は、世間から「いまどきの人やおまへんな」と言われないように、セクハラばかりではなく、パタハラを含むハラスメント全ての基準が時代の変化に伴って年々変わっていくことを十分に認識し、その変化に柔軟に対応していかないと、予期せぬリスクに直面する可能性があることを自覚する必要があると思います。

     「昔の小説を新装版で読んでいて、巻末の注釈に出合うことがある。〈本書には現在から見て不適切な表現が用いられているが、原文の歴史性を考慮し、そのままとした〉などの文章である◆「結婚もせんで、こんな所で何してんの。親、泣くで」「もうお(つぼね)さんやで。怖がられてるんちゃうん」。ほかにも露骨に性的な表現を含む言葉があったというから、半世紀前の小説か映画の一場面を思い起こさせる◆大阪市の水族館「海遊館」の運営会社で、管理職の男性2人(40代)が部下の女性2人に言ったという。3年前の発言とはいえ、あんさん方、いまどきの人やおまへんな」

     ※これまでの連載に大幅加筆した法律解説書「おとなのIT法律事件簿」が発刊されました。

    2015年09月09日 11時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    蒲俊郎 (かば・としろう
    弁護士(第二東京弁護士会所属)
    城山タワー法律事務所代表
    http://www.shiroyama-tower.com/
    桐蔭法科大学院・教授
    http://toin.ac.jp/lawschool/teacher/kaba/
    桐蔭法科大学院・法科大学院長
    http://toin.ac.jp/lawschool/info-top/message2/
    日本法律家協会会員、日本私法学会会員、情報ネットワーク法学会会員他
     専門分野は、電子商取引全般、労働事件(使用者側)、会社商事関係全般等
     多数の企業の顧問弁護士として日々活動するほか、複数の上場するネット企業の社外監査役なども務める。他方、2010年4月、ロースクールのトップである法科大学院長に就任し、多忙な弁護士業務の傍ら、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。
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