コロナで外出自粛、娘はかんしゃく…不安な私に毎日出勤の夫が語った言葉
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新型コロナウイルスの感染拡大で長期間にわたる外出自粛を求められることになった今年の春。友達も知り合いもほとんどいない東京で子育てに奮闘する地方出身の元ヤンキー、アッコさんも我慢、我慢の生活を送っています。人気連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」の8回目のテーマは、見えない敵との闘いで見えてきたこと。
新型コロナウイルスがめちゃくちゃ
毎日のようにテレビや新聞でコロナ、コロナ、コロナ……! もう何度、聞いたことだろう。「コロナ」という言葉が体の中にドンドンたまっていくような気分で、さすがに疲れてきた。

東京はガチでヤバい。外出自粛を続けているのに、いまも毎日感染者が出て、ウイルスとの一進一退の攻防が続いている。日に日に「新型コロナウイルス」への恐怖心は強くなってきて、4月に入ってからはずーっと家にいるか、買い出しに行くだけの日々を送っている。
コロナの感染拡大の影響で、世間ではテレワークの会社が増えたらしい。でも、目の前にいる夫は仕事柄、緊急事態宣言が出た後も、これまでと変わらず、電車に揺られ、毎朝出勤している。
「じゃあ、行ってくるわ」。大きな顔に頼りなげなマスクをつけ、家を出る夫を、私はいつも不安な気持ちで送り出す。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
ある日の朝。普段は寝起きの良い娘が、布団の中で突然、大声で泣きわめき始めた。何事かと思って見ていると、彼女は布団から出て、「ドアを開けて!」と言わんばかりに寝室のドアを
う~む。コロナが流行してから、自宅ごもりが続く娘のストレスは爆発寸前。家での遊びって言ってもなぁ……。

お絵かきや折り紙、ねんどやボール遊び。
いいかげん飽きてきたし、大人の私も楽しむには限界がある。
良くないと思いながら、大好きなテレビを見せる時間が増えた。でも、それも影響しているのか、娘はさらにワガママ放題に。いや、私もきつい。
「もぉー! これはしちゃダメでしょ」「やめてよ!」と声を荒らげることが多くなった。
何でも「ダメ!」という育て方をしたくなかっただけに、自分のふがいなさに落ち込む。
週に1回だけの買い出しは、気を使うけれど息抜きにもなる。だけど、下町にある我が家の周囲は人が減っているようには思えない。近くのショッピングセンターには休校中の子どもたちや、ヒマを持て余したおじいさん、おばあさんがたくさん。近くのドラッグストアには、朝からマスクを買い求める人たちがずらーっと並ぶ。
初めて外出自粛要請が出たときなんて、スーパーは人であふれかえっていた。ほんと、レジに並んでいるのか、品物を選んでいるのか分からなくなるくらい。
インターネットでは買い占めに対する批判が噴出していたけれど、他の人に生活の必需品を買い占められてしまっては、我が家は買うことができない。「誰も助けてくれないんだ!」と思うと、自然と目の前の棚に手が伸びてしまう。
「夫や子供が感染したら?」「重症化して家族が死んだらどうするんだ!」「テレワーク増やして外出減らす法律作れよ!」
娘とおままごとしながらテレビに怒ってみるが、返事は誰からもない。
それでも夫は毎日、スーツを着て、仕事に行く。
自粛生活が始まってしばらくたったある朝、いつも通り家を出ようとした夫に、私は思わず、「こんなに私が不安で心配なのに。感染したらどうするの!?」と口走ってしまった。
すると、夫は一瞬、申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。
「まぁ、世の中が大変な時に大変になる仕事だから仕方ない。行ってくるよ」
「もう、知らない!」。認めたら負けな気がして、悪態をついて送り出してしまったことを後悔しつつ、ある言葉が私の心に深く刻まれた。

「世の中が大変なときに、大変になる仕事」
そうか。病院ではいま、お医者さんや看護師さんが身の危険を冒して新型コロナの患者さんの治療にあたっている。食材を買うためのスーパーも開いていて、食材を作る人たちも仕事をしている。
こうした緊急事態の中でも、私たちの暮らしに必要不可欠なものってたくさんあって、そのためにどんな状況でも働かなければならない人がいる。逆に、休業要請に応じて、働きたいのに働いていない人も。そして、そうした人を支える家族がいる。
みんな、誰かの「当たり前」の暮らしを守るために頑張っているんだ。
そのやりとりをしたのは、ちょうど食材が切れる日。その日、私と娘は外に出ず、ネットスーパーを利用した。
私ができることはできるかぎり外出をせず、娘を守り、夫を待つこと。その日はいつもより少し大きなハンバーグを作った。
筆者(アッコさん)プロフィル
1993年生まれの26歳。中部地方出身。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と1歳の長女と3人暮らし。