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友達も親類もほとんどいない東京で、子育てに奮闘する元ヤンママのアッコさん(26)。いまも、家事と子育てを一人でこなす「ワンオペ育児」の状態は続いているそうなのですが、最近、「仕事で忙しすぎる夫」に少しだけ気持ちの変化が生まれてきたのだとか。読売新聞オンラインの人気連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」。今回は、夫の働き方から考えたこと――。
平和なショッピングモールが突然、修羅場に
以前、「ワンオペ育児」についてつづった回にこんな意見をいただいた。
根本的な解決になっていない――。そう、おっしゃる通りです。よくぞ言ってくれた!という感じ。
いくら私がママ友と息抜きを覚えても、私が一人で子育てをしている現状に変化はない。そんな中、夫はどうしたのか。今回はそんな話。

夫は娘の歩くペースを知らない。
先日、地元のショッピングモールを訪れたとき、私はそれを知って
久々の休日。夫は、それはそれは上機嫌。なんでも「欲しい新作ゲームがある」とのことで、モールに着くなり、目的地に向かってスタスタと歩き始めた。
「パパぁ~!」。お気に入りのミニーちゃんのTシャツを着て必死に後を追いかける娘。おいおい、そんなに走ると……。
バタンッ!!
あぁ、やっぱり
「てめぇ、いい加減にしろよ!」
突然の怒声にキョトンとした夫とざわつく周囲。
ちょっとやり過ぎた……。内心、そう思ったけど、もはや振り上げた拳の持って行き場もない。えーい! このまま怒りをぶつけてやれ!
平和な午後のショッピングモールは、あっという間に修羅場へと変わった。
家事と育児を一手に…積もり積もった不満
はたから見れば、感情をコントロールできないヤバい女。なぜここまでブチ切れたのか、理解できない人も多いと思う。
ただ、「突然キレた」ように見えても、私の中にはそれなりに積もり積もった不満があった。

「働かなくていいなら、自由でいいじゃん!」と思っていた専業主婦は、想像以上に大変だった。だって朝から晩まで家事と育児の繰り返し。2歳を目前にした娘は常に予想外な動きを繰り返すし、家事を片付けて一息入れようとしても、「ねぇねぇねぇねぇ! ママ! ママ! パパ? ママー!」てな感じで、おもちゃを押しつけてくる。正直、トイレにゆっくり入る時間もない。
よちよち歩きの娘を連れ、公園へ行き、買い物へ行き、娘に目を配りながら家事をして……。こっちは24時間、何をするのも娘に合わせて動いているのに、こいつは娘の歩くペースすら分からない。そう思うと、これまで心の中でたまっていたイライラが一気に爆発した。
確かに夫の仕事はかなりハードだ。朝、家を出て行ったら、そのまま夜10時過ぎまで帰ってこない。たまに早く家に帰ってきても、呼び出されたら戻らないといけないから、仕事用のスマホをいつまでも握りしめている。休日出勤も多いし、夏休みも正月休みも日程が決まるのは、前月の最終週。帰省や家族旅行の予定も休みの直前にならないと立てられない。
ちょっと前まで「2人目」の話をしていた夫も、最近はその話題を口に出すこともなくなった。たぶん、この状況ではもう1人家族が増えるなんて考えられないことが分かったのだろう。
夫が私たちのために頑張っているのは重々、分かっているつもりだけど、やっぱりこういう状況って、なんかおかしいし、モヤモヤする。
ショッピングモールでケンカした日の夜、私は昼間の出来事を謝りつつ、なぜそんな気持ちになったのかを夫に伝えた。
夫が平日に2日の“代休” 仕事用スマホも休業

数日後、夫は平日にもかかわらず2日間の“代休”を取った。
朝、「平日に連休取って大丈夫?」と聞くと、夫は「わかんない」と笑いながら頭をかいた。
ただ、娘にとっては、大人たちの“ソワソワ感”なんてどこ吹く風。前から行きたいと話していたショップに連れて行ってもらうと、ミニーちゃんグッズを両手いっぱいに持って、「パパぁ~」と駆け寄ってきた。私なら1個ぐらい残して残りは棚に戻すところだけれど、普段の様子を知らない夫は全部レジに持って行く。う~ん、娘も賢くなった。
いつもは片時も手放さない仕事用のスマホもこの2日ばかりは、開店休業。何回か会社から電話がかかってきたけど、少しオドオドしながら、「すみません。今日は休みなので、動けません」と切っていた。
2日目の夜。娘を寝かしつけ、夫婦で一息ついていると、夫がつぶやいた。
「ミニーちゃんをたくさん買ってあげられるように、明日から仕事がんばらなきゃな」
多分、夫はこの先も職場の上司や私の顔色をうかがいながら、仕事を続けていく。
仕事も育児もスマートにこなしてほしい、というのが本音だけど、私の連載を読んでくれている皆さんは、もう気づいていると思う。夫も、そして夫を支える私もそこまで器用ではないのだ。
だから、明日も、明後日も、私のワンオペ育児は根本的に解決されることはないだろうし、イライラにモヤモヤ、ソワソワにオドオド……そんな、しっくりこない感情と向き合っていくしかないのかもしれない。
ただ、この2日間のお休みで一つだけ気づいたことがある。
小さな歩み寄りと小さな成長。それが生み出す小さな喜びが、次に踏み出す勇気を与えてくれる。周りからみれば、ちっぽけなことかもしれないけれど。
筆者(アッコさん)プロフィル
1993年生まれの26歳。中部地方出身。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と1歳の長女と3人暮らし。