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夏なのに憂うつ…タトゥーの秘密、義母には本当のことを話したけれど

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 連日の猛暑に見舞われている今年の日本列島。東京で子育てに奮闘する地方出身の元ヤンキー・アッコさん(26)にとって、夏はとても悩ましい季節なのだそう。原因は若かりし頃に入れた全身のタトゥー。特に人目につく場所にある右腕のタトゥーは外出の度にシールを貼って隠しているそうなのですが……。読売新聞オンラインの人気連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」。今回は夏とタトゥーと過去と未来――について。

長袖は日焼け対策?……でも手首は焦げ茶色

なんでいつも長袖?……ママ友もそろそろ不思議がる頃か
なんでいつも長袖?……ママ友もそろそろ不思議がる頃か

 ミーン、ミーン、ミーン―――………。

 長かった梅雨が明け、やっと東京にも夏がきた。気温は連日30度以上。窓を開けるだけで、全身からブワーッて汗が出てくる。

 今日は、よく公園で遊ぶママ友との約束がある。
 「遊びに行くよー!」
 声をかけると、娘は「おーっ!」と小さく拳をかかげ、玄関に駆け出した。お出かけが待ちきれないのだろう。パジャマ姿のまま靴を履いている。

 さて、と……。
 うれしそうな娘とは違って、私は出発前のこの時間がちょっとニガテ。
 原因は右腕のタトゥーだ。夏が近づくと、毎回この30センチほどの“やっかいな過去”にテーピングを貼りながら、「何を着ていこうかぁ」って悩むことになる。

 いつも決まって長袖のTシャツを手に取るけど、「アッコさん、なんでいつも長袖なんだろう?」なんて、そろそろ不思議がられるかもしれない。
 日焼け対策と言っても信じてもらえないだろう。チラリとのぞく手首は焦げ茶色に日焼けしている。

 うれしいことに、東京に来てから娘を通じて仲良しのママがたくさんできた。子育ての悩みや楽しさを共有したり、オススメの通信教育について情報交換したり……。
 同じ目線で何でも話せる存在――と言いたいところだけど、自分の過去についてはいまも隠し続けている。仲良くなればなるほど、大きなウソをついている気分になって、ここ最近はよけい悩むようになった。

 「いっそ、話してしまおうか」と思ったこともあるけど、そういえば、以前こんなことがあった。

夫は新聞社の知り合いに、私のことをこう話した

 「コラム書いてみない?」

 去年の秋頃だったと思う。その日、夫はえらく興奮した様子で帰宅してきた。酒に酔うと、地方出身の元ヤン妻の話を始める夫は、新聞社の知り合いに私の話をしたらしい。そこで「地方から出てきて、都会で子育てに苦労している人って多いし、せっかくだからネットでコラム書いてみたら?」と言われたんだとか。

 最初は冗談半分だったと思う。しかし、夫は「コラムニストってなんか良いじゃん!」とノリノリに。企画書を作ってみたり、試作してみたり……。あれよあれよという間に掲載が決まった。

 掲載前、最初に原稿が完成したとき、夫は爆笑していたけど、私は企画を説明する文章を見て、あることに気づき、血の気が引いた。

 〈実は彼女、全身タトゥーだらけの、ゴリゴリの元ヤンキーなのだ。〉

 「あっ、私、タトゥーは右腕の一つだけだって、お義母(かあ)さんにウソついてた!」

「実は……タトゥーは全身に」

楽しい晩ご飯の席で、私は意を決した
楽しい晩ご飯の席で、私は意を決した

 以前、この連載でも触れたけど、結婚する前、私は義母に大きなウソをついていた。

 夫の実家にあいさつに行った時のこと。義母に「タトゥーはこの右腕の一つだけ?」と問われ、思わず「はい。この一つだけです」と……。緊張もあったし、タトゥーに対する世の中の厳しい目を感じていたのも事実だ。

 無邪気な夫はすでに「アッコがコラムを始めるんだ」と両親に喜々として話している。あの時は一生、全身のタトゥーのことは秘密にしよう、と心に誓っていたが、もし本当にこのコラムをやるとすれば、全てを正直に打ち明けなければならない。

 結婚後も夫の実家には本当によくしてもらっている。夫抜きで、私と娘だけで泊まりに行くこともよくあるぐらいで、今の関係は本当に壊したくない。もしウソをついていたことを打ち明けて、義母にがっかりされたら……。

 不安ばかりが頭をよぎり、「いっそのこと、コラムをやめてしまおう!」って夫に相談したら、「一つタトゥーがあれば、他にもあると思ってるよ」と能天気な返事。
 「人のタトゥーをゴキブリみたいに言うな!」と思ったけど、いずれどこかでばれる日が来るかもしれない。私はタトゥーのことを正直に話すことにした。

 その日、義父母はいつものように、朝から娘とたくさん遊んでくれた。「子育て頑張ってるから、こんなに元気に育ってるんやなぁ」なんて、優しい言葉まで……。

 ううう。罪悪感がどんどん増していき、打ち明けるタイミングを逃しまくる。「いつ話そう……」「今、今?」「今……じゃないよね」って、思っているうちに、いつの間にかみんなで楽しく晩ご飯を食べ終えていた。

 お義父(とう)さん、お義母さんの晩酌が始まり、私は意を決した。
 「あの……コラムを始める前に、話さなきゃならないことがあります」
 めったにない改まった様子にみんな怪訝(けげん)な顔をする。

 「実は……タトゥーは1か所ではありません。全身にあります。今まで、ウソついていてごめんなさい!!」

 「!! そうなん?」。突然の告白に絶句した2人。これまで一緒に過ごした日々がバーッて頭の中に浮かんで涙が(あふ)れた。
 夫はいつも通り、隣で黙って推移を見守っている。

 どれぐらい沈黙が続いただろう。お義母さんが口を開いた。

 「変わろうとして、子育ても一生懸命に頑張っている姿を知っているし、気にすることないで」

過去は簡単に消し去れない……うーむ

右腕の“やっかいな過去”をテーピングで覆う
右腕の“やっかいな過去”をテーピングで覆う

 こんなことを思い出しながら、タトゥーのことをママ友に打ち明けても、仲良くしてくれるかなぁなーんて、考えてみる。

 だけど、夫の両親のように、過去に関係なく自分と接してくれる人はどれぐらいいるのかなぁ。タトゥーがあると知ったら、私のイメージは変わるかもしれない。そのせいで、いまの関係が崩れるのは……やっぱり怖い。

 結局、長袖に腕を通し、この日も娘と公園へ行った。

 「今日は日差しが強いですねー」って、これでもかって日焼けを気にするアピールをしてみる。公園から帰宅して、右腕に貼ったテープを剥がすと、汗でかぶれていた。

 なんだか最近はタトゥーのことが頭から離れない。帰ってきた夫に「タトゥーを消したい」と言ってみると「いくらかかるの?」なんて聞いてくる。

 ネットで調べたら、全身全部消すとしたらビックリ価格の「ウン百万円」コース! う~ん。どうやら過去というものは、簡単には消し去れないらしい。

 未来は変えられるけど、過去はなかなか消せない。
 過去はなかなか消せないけど、未来は変えられる。

 やっぱり夏は悩ましい季節だ。子どもの頃は大好きだったはずなのに……。

【次回更新は9月3日(木)の予定です】

 筆者(アッコさん)プロフィル
 1993年生まれの26歳。中部地方出身。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と1歳の長女と3人暮らし。

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1421583 0 子育て 2020/08/20 10:01:00 2020/08/20 10:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200818-OYT1I50038-T.jpg?type=thumbnail

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