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春は出会いと別れの季節。友達も親類もいない東京で子育てに奮闘するアッコさん(27)の連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」も今回が最終回です。これまで都会での子育てについていろいろつづってきましたが、最後のテーマはやはり最愛の娘について。いつかこのコラムを読むことになる娘に書き残しておきたいことがあるそうです。
最終回に何を書くか、ずっと悩んでいた

3月も後半になり、東京は暖かい日が続いている。
窓から見えるキレイに並んだ洗濯物がお日様に照らされて、とても気持ちよさそうだ。
「みーちゃんと公園に行ってくるから、ゆっくり書きなよ」
夫はそう言って、娘の手を引いて2人で出かけていった。
さっきまで、朝の家事でバタバタと走り回っていた私は、1人で取り残されると、どうして良いか分からない。とりあえず、コーヒーを
すっぴんだし、ミニオンのTシャツを着ているけど、こうやってパソコンに向き合って、何かを書いているなんて、「なんかカッコイイ……」。ちょっぴりうれしくなって、いつもは豆乳で割ってしか飲めないコーヒーをブラックで飲みたくなった。
……う~ん、やっぱ苦い。すぐさま豆乳を投入した。
文章を書くようになったところで、私は私。何が変わるというわけではない。
このコラムは今回が最終回だ。
何を書いたらよいのか、今年に入ってずっと悩んでいた。でも、作文すらまともに書いたこともない私が、連載に挑戦しようと思ったのは、「娘に何かを残せるなら」と思ったからだ。
これから大きくなって、複雑な年頃になるにつれて、ママの気持ちを娘にゆっくり伝えることは難しくなっていくだろう。ママがどれだけ娘を愛しているか、どれだけ大切な存在か。
それって当たり前のようで、子どもには伝わりにくいと思う。私だって思春期の頃は、「親からすれば、私なんてどうだっていい存在なんだ」と思っていた。
だから、この最終回は娘に向けて書くことにする。
娘の言葉が心配、でも夫は例によって……

「ママーだいすきだよ」
2歳半になった娘の最近の口グセだ。
私が怒っていたり、しかめっ面をしていたりすると、そう言って、ギューッと抱きしめてくる。こう言われてしまうと、ついうれしくなって、怒りも完全に鎮火。ついこの前まで赤ん坊だったはずなのに、「だいすき」という言葉を処世術として使いこなす「ちっさなお姉さん」にいつの間にか成長した。
ただ、成長につれて、気になることも出てきている。
「パパパパ…パパ!」「こここ……公園、い、い、行く!」
どうやらスムーズに言葉を発するのが難しいみたい。調べてみると、3歳頃から
ただ、夫に相談すると、返ってきたのは、例のごとく意外な返事だった。
「え? 治らなくても別にいいじゃん。かわいいし!」「そんな理由で付き合えないという男なら、最初から付き合わなくてよろしい」
……だよね。確かに。
「治らなくたって別にいい」。そんなふうに考えることができなかった自分がちょっと恥ずかしくなった。
期待する「枠」に子どもを囲う、それは間違い

「娘には自分のようになってほしくない」
彼女が生まれた時から、ずっと願い続けてきたことだ。まともに勉強もせずにまわりに迷惑をかけまくってきた過去へのコンプレックスってやつだろう。それを乗り越えるために育児本を読みまくり、ママ友からもせっせと情報収集をして、私なりにがむしゃらに努力してきたつもりだ。
ただ、ここにきて何となく分かってきたことがある。
「完璧」も「理想」も「常識」も「普通」もそれが、親の期待する「枠」に子どもを囲い込むためのものになってしまったとしたら、それは違うんじゃないかってこと。
そもそも私はまともに勉強をしたこともないし、タトゥーも入っている。「人生論」とか、「勉強の大切さ」を語るようなガラじゃない。
2歳半の娘にはこれからも、いつもと変わらず精いっぱい遊んで、笑って、泣ける日々を送ってほしいと思う。失敗したって、時に回り道をしたって、パパとママがみーちゃんを愛しているということは決して変わることはないのだ。(ママがみーちゃんを叱ってもね)
私は余計な心配をするのはやめることにした。
人生ってホント何があるか分からない
娘「こんにちわ」
私「こんにちわ、私ミニー」
娘「よろしくね。じゃあ何する?」――………。
ミッキーマウスの人形を片手に持ち、ミニーマウスを私に押しつける娘。
突然始まる、お人形遊びは一日に何回も繰り返される。しかも場所や時間はお構いなし! リビングはもちろん、風呂、公園、食卓、布団………。一度始まると、本当に長い。
しんどい時もあるけど、「お人形遊びが一緒にできるのもあと数年かぁ」と思うと、なんだかジーンとくる。ここまでの2年半もあっという間だったし、やっぱり、今を大切にすること以上に親にできることなんてないのかもしれない。

みーちゃん。あなたはこの先、何を好きになり、何に喜び、何に悩むだろう。
いつか大切にとってあるこのコラムを読む日も来るんだろうなぁ。
どんな顔をして私の文章を読むのだろう。
「こんなヤツでも生きられるなら、私はまだマシかも」って、思ってくれるなら、これ以上にうれしいことはない、と心から思う。
田舎の元ヤンだったママが、東京に住みコラムを書けるようになったくらいだから、人生ってホント何があるか分からない。
平凡だけど、涙あり笑いあり。みんなそんな人生を懸命に生きている。誰かに褒められたり、有名になったりしなくてもいい。あなたがあなたらしくいられる毎日こそが、かけがえのない大切なものなのだ。
私はちょっと回り道をしたけれど、あなたのおかげでそれに気付くことができた。
改めて言わせてほしい。みーちゃん、本当にありがとう。
2021年3月、桜が咲いた東京で。あっこ
筆者(アッコさん)プロフィル
1993年生まれの27歳。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と2歳の長女と3人暮らし。