バカンス自慢~雪は夏に何をしているの?

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三つ子ちゃん×辻仁成 子育てエッセー第5回

(c)Nicole Lambert

-ママ、この雪たちは夏は何をしているの?(訳・辻仁成)

父子の絆を強めるバカンス~エッセー・辻仁成

 フランスにはスキー休みというのが2月に2週間あります。ぼくはスキーが出来ないので、いつもその頃になると、話をごまかして、別の場所に旅行をしていました。バカンスの期間はどこかに連れていくのが親の役目で、というのも、子供たちは学校で「バカンス自慢」をするのです。バカンスというのはフランス語ですが、この国の人たちはバカンス命で生きています。親がそうですから、子どもたちもみんなバカンスはどこかへ行くと決めつけています。

 「ぼくはスイスにスキーに行くんだ」「わたしはドーヴィルのおばあちゃんの別荘に行くのよ」みたいな、かなりブルジョア風な会話が、普通にかわされています。何せ、こっちの子供たちは年の半分が休みなのです。2月、4月、7、8月、10月、12月とバカンス休みがあります。最低2週間、最大で2か月の休みがあるのです。

 大人たちも夏の2か月間は子供にあわせて断続的に休暇をとります。夏の間は役所も会社も一応やってることはやっていますが、残った人たちはあまりやる気もなく、だらだらと仕事をしながら、自分たちの旅行について思いを巡らせているのです。夏は何があっても休むのが彼らフランス人のポリシーです。当然、子供たちもそういうものだと思い込んでいます。親が日本人の我が家ですが、郷に入っては郷に従えの精神で、バカンス時期になると仕方なくどこか避暑地へ連れていくことになります。この時期は家族のために頑張るわけです。

 ちなみにぼくは出不精で、普段、飲みに出るのもおっくうな家派。でも、シングルファザーになってから、ぼくはこのバカンスの時期を利用して、父子旅を率先して計画するようになりました。それが父子の絆を強めることになると思ったからです。

 離婚の直前直後のバカンス時期の旅行が一番印象に残っています。彼が9歳の時に、ストラスブールに2人で行きました。そこで思いがけず息子は自分の未来の家族像について語りだしたのです。どういう家族を作りたいか、どういう親になりたいか、とくとくと話す息子の横顔を見ながら、申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。

 それから、時が流れ、16歳になった息子とこの2月にはじめてスイスへスキー旅行に行こうか、と話しをしています。でも、これがきっと最後の父子旅になるような気がします。フランスの子供たちはとってもマセていて、16歳と言えば、すでに大人。息子も例外じゃなく、仲間たちとアメリカツアーを計画したり、大忙しなのです。あと2年で成人ですから、その後、ぼくは一人でバカンス旅行に出ることになるのでしょう。それとも、家に籠ってギターを弾いているかもしれませんね。

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作者プロフィル

 ニコル・ランベール(Nicole Lambert)

 1948年、パリ生まれ。美術学校を経てモデルとしてのキャリアをスタートし、その後、子供服やおもちゃのデザイナーとして働き始める。雑誌向けにイラストを描くなかで、1983年に『マダム・フィガロ』で「三つ子ちゃん(Les Triples)」の連載を開始。同作は人気を集め、世界で翻訳・販売される。日本ではフランス国外で初めて書籍化された。テレビ化もされ、近年は世代を超えて親しまれている。一男一女の母。

 辻 仁成(Tsuji Hitonari)

 1959年、東京生まれ、パリ在住。作家。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞。97年「海峡の光」で芥川賞、99年「白仏」のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。長男が小学5年生の頃から、シングルファザーとしてパリで子育てを行う。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Webマガジン「Design Stories」主宰。

 

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1051133 0 三つ子ちゃん×辻仁成 2020/03/06 10:00:11 2020/03/11 18:04:14 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/2012-quest-ce-quon-fait-de-la-neige.jpg?type=thumbnail

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