子供のいたずら~何をしたの?お手てがまっ黒じゃないの!

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三つ子ちゃん×辻仁成 子育てエッセー第7回

三つ子ちゃんが夜にお出かけで手が真っ黒
(c)Nicole Lambert

―ママ あなたたち、夜の散歩楽しかった? あら、何をしたの?? お手てがまっ黒じゃないの!!!

―あれ、ぼくたち夜を触っちゃったのかな!(訳・辻仁成)

ただ叱られただけなら、不良になっていたかも~エッセー・辻仁成

 子供のいたずらに対して、どこまで寛容でいればいいのかは、難しいところです。ぼくの母は絶対に怒らない人でした。ぼくはとっても悪い子で、落とし穴を掘ったり、車のマフラーに石を詰めたり、法事に集まった親戚の人の靴を全部隠したり…。それでもぼくの母は絶対に怒りませんでした。その代わり、「ひとなり、そのアイデアは面白いけど、人を困らせたり、傷つけるのはよくないことだから、人を笑わせたり、喜ばせたりすることに活用できないかな」と言ったものです。なるほど、と思ってぼくは詩を書き始めたり、人前で歌うようになったり、演劇の真似事をするようになります。

 そこでただ叱られていただけなら、もしかすると反発をして、ぼくは不良になっていたかもしれません。でも、才能を認めてもらえ、何ものかわからないぼくでしたが、「君はぜったい何かできるわよ」とはっぱをかけられたことが今の人生を決定づけたのだと思うのです。

 ですから、ぼくも息子を叱ることはしません。もっとも、うちの子は昔のぼくとはほんとうに正反対の性格で悪いことなどしたこともないし、野蛮なことを思いつくこともないのです。自由奔放に生きてきたぼくからするとちょっと物足りないというのか、おとなしすぎる気もします。しかし、ぼくのような自由過ぎる親のもとに生まれたせいで、自分だけはまともに生きなければと思っているのかもしれませんね。

 けれども、彼はいつの間にか、音楽をはじめていたし、バレーボール部に所属していました。小さな頃からこの二つはずっと続けていて、バレーボールはフランス大会で金メダルをとっています。音楽もフランスのヒップホップ系のアーティストたちと交流があり、なかなかの腕前です。

 ぼくは実際、彼を何一つ導いたこともありませんが、ただ、ぼくは自分の母に謙虚に背中を押されたことが忘れられなかったので、恩返しのつもりで、息子のバレーのコーチを引き受けたことがあります。音楽は教えていませんがぼくがいつも歌っているので、きっと何か影響を与えたかもしれませんね。でも、ぼくは息子に期待をしていません。こういうと怒られそうですが、普通に生きて当たり前の幸福を掴んでもらえたら、それが一番だと思っています。だから、しっかり勉強をして、大学に行って、あるいは専門職の勉強をして、早く社会に出て頑張りなさい、とだけ言います。

 幸福というのはいわゆる成功とは別のものです。その子が自分の人生を肯定出来るのであれば、合格点だと思っています。どろんこになって帰ってきたら、一緒にその手を洗えるような親でい続けたいと思っています。

「三つ子ちゃん×辻仁成の子育てエッセー」一覧はこちら

作者プロフィル

 ニコル・ランベール(Nicole Lambert)

 1948年、パリ生まれ。美術学校を経てモデルとしてのキャリアをスタートし、その後、子供服やおもちゃのデザイナーとして働き始める。雑誌向けにイラストを描くなかで、1983年に『マダム・フィガロ』で「三つ子ちゃん(Les Triples)」の連載を開始。同作は人気を集め、世界で翻訳・販売される。日本ではフランス国外で初めて書籍化された。テレビ化もされ、近年は世代を超えて親しまれている。一男一女の母。

 辻 仁成(Tsuji Hitonari)

 1959年、東京生まれ、パリ在住。作家。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞。97年「海峡の光」で芥川賞、99年「白仏」のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。長男が小学5年生の頃から、シングルファーザーとしてパリで子育てを行う。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Webマガジン「Design Stories」主宰。

無断転載禁止
1087131 0 三つ子ちゃん×辻仁成 2020/03/19 10:00:29 2020/03/13 12:36:26 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/2003-toucher-la-nuit-.jpg1_.jpg?type=thumbnail

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