お母さんの力~おしゃれなフランスの子供たち

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三つ子ちゃん×辻仁成 子育てエッセー第8回

(c)Nicole Lambert

-ねえ、ママ、この木はシャネルが作ったのかしら?(訳・辻仁成)

小さい頃からセンスを着て生きている~エッセー・辻仁成

 フランスの子供たちはとにかくおしゃれです。もちろん、そうさせているのはお母さんの力なので、当然、お母さんたちもとってもおしゃれです。でも、ぼくが渡仏したばかりの頃、フランス人のファッションセンスの良さがわかりませんでした。とくに男性のセンスが酷すぎて、これがパリジャンの本当の姿なのか、と愕然としたのを覚えています。

 それだけ日本の人たちがおしゃれだったということですが、長く暮らしているうちに、まず、パリジェンヌたちのセンスの凄さに驚かされることになります。パリに溶け込んでいるのに、個性が際立っていて、非の打ち所がない。可愛いとか綺麗じゃなくて、かっこいいなんですね。

 そして、目立たないのに目立っている。つまり、彼女ら、彼らはものすごく地味な配色を好み、派手さを押さえながら、しっかりと自分を主張する能力が高いのです。それらがフランスのファッションブランドの根底にあることに気が付くのは渡仏後十年ほどしてからのことでした。

 とにかくパリジェンヌのファッションセンスは見事で、普段着の着こなしの素晴らしさに毎回唸らされています。するとムッシュたちの服装のダサさも、フェミニズムの国ですから、女性たちの陰にありながら、しっかりと自分流を貫いていることを理解していき、はぁ、そうだったのか、と気が付くことになるわけです。

 とくに冬のマフラーの色ですね。原色はもちろん嫌っていて、ちょっとくすんだ、からし色とか、ピンクでも他では見かけたことのない控えめな桃色を好みます。何か一つ派手なものを纏うところにパリジャンのセンスが光っているのですけど、その派手さは、地味さでもあるわけです。歴史あるパリの景観を壊さない配慮があり、強い美意識による集団的センスでもあるわけです。

 その子供たちはいつの間にかファッションの感覚を培って当然なのです。小さい頃からセンスを着て生きているわけですから、この子たちが大きくなるとそれは真似のできない自然なファッション感覚を身に着けていきます。息子の家庭教師のマリ先生はお母さんのお古を今風にアレンジして大事に着ています。彼女曰く「母から子へ」がパリジェンヌのファッションセンスの基本なのだとか。その受け継がれるセンスの良さに、これは敵わないな、と思わされたのでした。

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作者プロフィル

 ニコル・ランベール(Nicole Lambert)

 1948年、パリ生まれ。美術学校を経てモデルとしてのキャリアをスタートし、その後、子供服やおもちゃのデザイナーとして働き始める。雑誌向けにイラストを描くなかで、1983年に『マダム・フィガロ』で「三つ子ちゃん(Les Triples)」の連載を開始。同作は人気を集め、世界で翻訳・販売される。日本ではフランス国外で初めて書籍化された。テレビ化もされ、近年は世代を超えて親しまれている。一男一女の母。

 辻 仁成(Tsuji Hitonari)

 1959年、東京生まれ、パリ在住。作家。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞。97年「海峡の光」で芥川賞、99年「白仏」のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」で仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。長男が小学5年生の頃から、シングルファーザーとしてパリで子育てを行う。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Webマガジン「Design Stories」主宰。

無断転載禁止
1087141 0 三つ子ちゃん×辻仁成 2020/03/27 10:00:01 2020/03/13 12:41:40 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/1996-les-camelias.jpg?type=thumbnail

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