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[シングルスタイル・お便り]ひとりの今日と明日

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 半年ぶりに、お便り特集です。新型コロナウイルスの感染が広がるに伴って、先々は見えにくくなりましたが、「ひとり」について、深まった思索もあったようです。

 (シングルスタイル編集長 森川暁子)

【寂しい時】

 

小出さんが撮った飛行機雲
小出さんが撮った飛行機雲
大阪府の渡辺勝子さん(77)が見つけた五つ葉のクローバー。「縁起がよさそうなので」と同封されていた
大阪府の渡辺勝子さん(77)が見つけた五つ葉のクローバー。「縁起がよさそうなので」と同封されていた

 まずは、2週間前に掲載した、関西在住の50代女性への便りからです。お連れ合いが単身赴任、お子さんは進学で家を出て、さらにコロナで行き来ができず、孤食が寂しく……というお話でした。

 〈一緒に頑張りましょうね〉と書いてくださったのは、千葉県の女性(58)。似た境遇でひとり暮らしだそうです。

◆真剣に見る

 〈寂しい時は、録画しておいた自分の趣味、興味があることに関するTV番組を見ます。具体的には、Eテレの「趣味の園芸」「やさいの時間」「猫のしっぽカエルの手」、BSプレミアムの「美の壺」など。これらの番組は、本当に好きなので一人で真剣に見たいのです〉

 ひとりで集中したい楽しみもありますね。

◆年初の夢

 兵庫県の原美幸さん(57)のアイデアも、まねしたくなります。〈ふと、もの寂しくなる時は、手帳を見ます。そこには今年の初めに書いた夢がいくつか書いてあります(100書き出すと良いのですが、私は夢が少ないのか現在47しかありません)。それを読むと「私、これがしたかったんだ」「これが読みたかったんだ」と、夢を かな えるためにやる事がいろいろ出てきます〉

 茨城県の佐藤恵美子さん(66)は〈孤食は寂しいですよね。そこで私は音楽を聴きながら作っています。チョット旅行気分で「ボサノバ」なんかいかがでしょう〉。同じく茨城県の横山ばぁばさん(70)は、「行って参ります」「おはようさん」「おやすみなさい」などをひとりで声に出して言うそうです。〈特に「ただいま」の声は一段と大きいかもしれません。臆病者ですから 笑〉

 ひとりの時間、空間を照らす工夫はさまざまです。

◆飛行機雲

 長野県でひとり暮らしの小出文子さん(74)は、毎回、感想と併せて身の回りのできごとを書いてきてくださいます。畑のことや、地域デビューのこと。先月は〈今日は久しぶりに飛行機雲を見ました〉と、写真を送ってくださいました。空を見上げてあれこれ空想するのが好きな小出さんは、〈コロナで飛行機が減り、飛行機雲もあまり見られなくなった〉と寂しく思っていたそうです。何かの吉兆みたいでいいですね。

 4月に、コロナでひとり時間が増えてしまった学生さんたちについての記事を掲載しました。神奈川県の富岡淳一さん(67)から思わぬ感想が届きました。

 〈自分の大学時代を思い出しました。当時は学生運動が激しく、大学2年の時、大学構内が完全封鎖され、機動隊が入りました。通学が出来ず、自宅学習となりました。試験はレポートを提出するだけでした。英会話サークルの仲間たちと喫茶店に集まり学びあいました。そこがキャンパスでした。あのとき学んだ英会話は、今でも私の学びであり、趣味です〉

 状況はかなり違いますが、今も昔も、学生時代はかけがえのない時間だということでしょう。

 出産で里帰りをしていた娘さんが、お孫さんをつれて自宅に戻ってゆき、またひとり暮らしになった福井県のインプルーブマンさん(56)(男性です)は、この機会に、押し入れの中を整理しているそうです。〈捨てずにおこうと思うものもあります。娘が小学時代に使ってたプーさんの布カバン。つけ置き洗いをしました。あの頃の娘を思い出し、ちょっとだけしんみりしています〉

◆先人の生き方

 そのインプルーブマンさんからのご提案です。

 〈いま、社会哲学者のエリック・ホッファーにはまっています。港湾労働者として働きつつ自分なりに勉強し、大学の教授も務めた方です。生涯独身でした。著書の「波止場日記」(みすず書房)を読み、彼の生き方が私にとっては一つの理想のように思えてきました。

 みなさんが参考にしている「シングルスタイル」の先人を紹介していただけませんか。さらに楽しくなるのではないかと考えています〉

 なるほど。私は昨年、メイ・サートンの「独り居の日記」(同)を食い入るように読みました。自然の移り変わりをしっかり感じ取り味わう暮らしぶりに感銘を受けました。

 みなさんは、いかがでしょうか。ひとりのお手本が周りにいない、という声をたびたび聞きますが、いろんな本があって、先人はいるわけです。

【見つけた】

◆自分との時間

 神奈川県の女性(67)は近ごろ、こんなことを考えるのだそうです。

 〈たまたま3年前から1人暮らしとなり、コロナ禍で、自身と向き合う時間が増えました。今まで無かったような服の趣味が出てきたり、観なかったようなテレビの番組を見るようになったり、その中で意外なドラマに共感したり、今まで寄らなかったような店で小さな買い物をしたり。

 ひとりでつまらなくなること、物寂しくなること、人恋しくなる瞬間、不安を感じることも山ほどあります。でも、ひとりでいることの味わい、楽しさは、熟成されたワインのような味わいかなとも思います〉

 一方で〈これからの日々は全て人生初です。病に倒れるかも知れません。未曽有の災害に襲われるかも知れません。不慮の事故に会うかも、認知症になるかも知れません〉とも書いておいででした。

 私も、道々何が起こるんだろうと、よく考えます。

 千葉県の金井弘子さん(77)は、昨年秋、犬の散歩中に転んでけがをしたそうです。

◆これぞ愛しい

 〈腰を痛め、右手首を骨折し、初めて日常生活もままならない状態になった。息子は2人いるが、同居するつもりはさらさらない。 ってでも最後まで一人の生活をしたい。

 天の助けか近くに住む めい が、柴犬の食事と散歩を買って出てくれた。犬は盲目で、洗濯物をかけていると「僕はここにいる」と犬小屋から出てきて私の脚を鼻で突く。「 いと しい」とはこのことか。旅はまだ終わらない。今少しこの生活を続けようと思う。

 「死ぬまで元気」とはいかないかもしれない。でも実際にその日が来るまで悩むのはやめよう。誰の力も借りず産道をくぐり生まれてきたのだから、1人もがきながら、どこにどう着陸するかもきっと見つけられると信じている〉

 ひとりには、ひとりなりの心配事があります。このページでも、終活や病気、災害などに備える情報には多くの反響があります。でも、心配ばかりで、なんだか準備するために生きてるみたいだな、と感じることもあります。先々の準備をすることと、いまを生きること、どうしたらバランスが取れるのか……。

 高知県のパンダさん(34)(女性です)からいただいたはがきの言葉です。

◆幸せ感じる心

 〈緊急事態宣言の時、散歩に救われました。見慣れた風景に心からほっとしたのです。コロナ禍で先が見通せません。でも、気付きました。「明日」という未来ばかり追いかけて「今日」このときをないがしろにしていたことに。走り続けることは大切ですが、小さな何気ない幸せを感じる心は失いたくない。さあ、今日はどんな発見があるだろう〉

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2196856 1 シングルスタイル 2021/07/11 05:00:00 2021/07/11 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210710-OYT8I50040-T.jpg?type=thumbnail

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