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    各界で活躍する著名人に影響を与えた「1冊」に迫ります。

     参議院議員・国際政治学者 猪口邦子さん(63)(1)

    紛争やテロはなぜ繰り返されるのか?

     連日うだるような暑さだった「戦後70年」の夏。集団的自衛権を許容する安全保障関連法案が国会で審議され、憲法9条との関係などを巡って国論を二分するほどの議論になった。安倍首相による戦後70年談話も内外の神経質な視線にさらされ、先の大戦から今日に至るまでの日本の軌跡について、粘着度の高い議論が方々で交わされた。

     そういう議論を聞いていて解せなかったのは、世界各地で発生し続ける紛争やテロの撲滅に、日本は主要国の一員としてどう関与していくのかといった議論がほとんど聞かれなかったことだ。

     こうした法案を議論しなくてはならない根本原因だからである。安倍政権も「積極的平和外交」を提唱しながら、紛争解決への関与のあり方については丁寧な説明はしていない。

     そんなことを思ったのは、この夏に読んだ1冊の本がきっかけだった。本には、こんなくだりがある。

     「現代の戦争では死傷者の九0%が戦闘員ではなく非武装の民間人であり、その半分が子供である。子供の戦争犠牲は兵士よりもはるかに多く、またどの年齢層の大人より多い」(『戦略的平和思考 戦場から議場へ』=NTT出版)

     なぜ今も、紛争やテロは発生し続けるのか。なぜ、子供たちが犠牲になってしまうのか。そもそも、私たちはどんな時代を生きているのだろうか。

     少なくとも筆者はよくわかっていない。自分に関係しそうな事にしか関心が及ばない「半径1メートル人間」になりかけているからかもしれない。そう考え、専門家に教えを乞いに行こうと決めた。

     その相手は参院議員で国際政治学者でもある猪口邦子。先の『戦略的平和思考』の筆者である。

     猪口は上智大学教授から軍縮大使に転じ、小泉政権下の少子化・男女共同参画担当相などを経て、現在は参院議員(自民党)として男女共同参画社会の実現に注力している人である。

     筆者は30年近く前、猪口が主宰する国際政治学のゼミ生だった。しかし、猪口が国会議員になってからはその意図が理解できず、学恩こそ忘れないものの、正直なところ距離を置いて見つめていた。

     猪口の元ゼミ生の多くも同意するだろうが、これまでのキャリアをなげうって、毀誉褒貶(きよほうへん)も多い国会議員へ転身したことが解せなかったのである。それだけ、教壇に立つ当時の猪口は輝いていたし、彼女が指し示す国際政治学の最新知見は刺激的だったからだ。

     とはいえ、このテーマを聞くのに政権与党内にいる国際政治学者は最適だ。後半生の生き方について膝詰めで聞く良い機会でもあると考え直した。

     インタビューは参院開会中の8月下旬、何回かの日程変更の末、ようやく実現した。場所は東京・永田町の参議院会館。安全保障関連法案が参院で審議されている折、会館横の道路脇には黒塗りの車が止まり、そのダッシュボードには「防衛省」の所属を示すカードが置いてあるのが見える。

    2015年09月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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