しまなみ海道、タオル…魅力満載の愛媛県今治市

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 最近、愛媛県今治市がサイクリストに人気らしい。「今治タオル」は知っているけれど、なぜ自転車? そんな疑問を抱きつつ初めて訪問したら、サイクリングや今治タオル以外にも、「岡ちゃん」こと元サッカー日本代表監督の岡田武史氏がオーナーを務めるサッカーチーム「FC今治」など魅力あるコンテンツが意外にたくさんあった。しかも今後、これらを連携させて、さらに今治の魅力を訴えていくのだという。

しまなみ海道の風景
しまなみ海道の風景

 瀬戸内海をまたぐ瀬戸内しまなみ海道。今治市と広島県尾道市を結ぶこのルートには、自動車道のほか、世界でも珍しい海峡を横断する全長約70キロのサイクリングロードが併設されている。アメリカのCNNテレビが世界7大サイクリングロードに選んだことなどもあり、国内外から数多くのサイクリストが訪れる。尾道市の観光客数推計によると、2017年のサイクリング客数は約20万4000人と過去最高となり、このうち、かなりの人がしまなみ海道を体験している。

ゲストハウス「シクロの家」とNPO法人の山本優子代表理事
ゲストハウス「シクロの家」とNPO法人の山本優子代表理事

 もちろん今治でも、サイクリング客の誘致に熱心に取り組んでいる。JR今治駅前には、NPO法人「シクロツーリズムしまなみ」が運営する簡易宿泊施設「シクロの家」があるほか、しまなみ海道沿いの島々でもゲストハウスや民宿などが相次いで誕生している。朝に宿で荷物を預けてサイクリングに出発すると、その日の夜には次の宿に荷物が配送されるサービスがあり、自転車で大きな荷物を運ぶ必要がない。レンタサイクルを借りて途中で乗り捨てることもできる。自転車を自分でこぐのに疲れた人には、市内観光のために自転車タクシー(有料)も用意している。NPO法人の山本優子代表理事は「本格的なサイクリストだけでなく、初心者でも楽しめるようにしている」という。

今治市内を回る自転車タクシー(NPO法人「シクロツーリズムしまなみ」提供)
今治市内を回る自転車タクシー(NPO法人「シクロツーリズムしまなみ」提供)

 今治タオルは、地方ブランドが全国的に知名度を上げた好例とされる。2000年代に安価な中国製品に押され、タオル産業は勢いを失いかけていた。そこで2006年から著名クリエイティブディレクターである佐藤可士和氏と組んで、「安心・安全・高品質」を訴え、東京に店舗を進出。タオル片を水に浮かべて5秒以内に沈み始めるかかどうかという、一般人でも吸水性の高さを判別できる品質基準を創設。こうした努力が国内や欧州など海外で認められて、「今治タオル」ブランドは再生した。

佐藤可士和氏の下、サイクリング、タオル、サッカーなどが連携

 訪れた3月9日には、市内中心部にある今治タオルのショップ「今治タオル本店」で、菅良二市長と佐藤氏が、同市のゆるキャラ「バリィさん」と並んで、メディアの撮影に応じていた。地域の活性化を図るブランディング戦略「アイアイ今治キャンペーン」のロゴ発表とカフェ開店の記者会見が行われたのだ。

 会見で菅市長は、「今治市は素晴らしいコンテンツを多数有しているが、各々(おのおの)が独自のプロモーションを展開し、市全体をイメージできる魅力発信には至っていない。佐藤さんには、誰にでもわかりやすいブランドイメージの発信をお願いしたいと思っている」と語った。今後、佐藤氏が旗振り役となり、今治タオルのカフェでJAによる地元食材を使ったスイーツの提供などを行っていくという。

 このキャンペーンでは、サッカーチーム「FC今治」も連携先のひとつだ。2014年、当時四国リーグのチームだった運営会社の株式の過半数を岡田氏が取得。その後、日本フットボールリーグに昇格し、Jリーグ入りを目指している。サッカーだけでなく、「国内外から人が集まり、活気のある街づくりに貢献する」という目標を掲げ、プレーヤーや指導者の養成にとどまらず、野外学校などを通じて自然と人の共生なども教えている。

今治市のゆるキャラと記者会見の撮影に応じる佐藤可士和氏(左)ら
今治市のゆるキャラと記者会見の撮影に応じる佐藤可士和氏(左)ら
対談後、握手する岡田、佐藤両氏(FC今治のグラウンドで)
対談後、握手する岡田、佐藤両氏(FC今治のグラウンドで)

 FC今治のグラウンドで、佐藤氏との対談に臨んだ岡田氏は、「人工知能(AI)が発達した時、改めて人間は何ができるかが問われる時代になる」と予測し、スポーツなどを通じて、人間の持つ長所を引き出す場所の提供などを考えていきたいと話した。

「さいさいきて屋」に並ぶ果実など
「さいさいきて屋」に並ぶ果実など

 新規開店したカフェでスイーツなどの販売に乗り出すのが、JAおちいまばりだ。その直売所「さいさいきて屋」は、売り場面積、売上高ともに全国有数の規模を誇っている。毎日、約1300人の登録農家が新鮮な農産物を並べている。一定の販売手数料を徴収されるが、残りは農家の収入になる。農家の高齢化が進み、一定規模以上の農産物を作らねばならない専業では農業を続けられない人が増えたため、2000年に少量の出荷も受け入れる直売所を開設した。高齢者は、自分ができる範囲で農産物を作り、直売所に並べる。商品には、農家の名前が入り、各自が品質管理などを行っている。

移住者と地元住民が協力 働く場を確保し、人口減に歯止めへ

 

 今治イメージをさらに昇華する責を担う佐藤氏は、「キーワードは共創。今までバラバラに活動していたものをつなげ、新しいものを生み出せれば」という。

 地方都市の再生は、地元産業の振興や観光客誘致という側面もあるが、最終的には地元で働く場を生み、人口減に歯止めをかけるのが本来の狙いだ。すでに、サイクリング施設やサッカーチームでは、他の地域から移住してきた人々が働き始めている。移住者と地元の人とによる相乗効果があって、初めて地方都市の再生が可能になるのかもしれない。数年後、今回のキャンペーンがどう実っているのか、再訪してみたい気がした。

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497887 0 2019/03/20 05:20:00 2019/03/20 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190319-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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