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    小説や映画、詩や歌に残された作家たちの名言。その舞台となった土地をたずね、言葉が生まれた物語や背景、今を生きる人々の記憶を紹介します。

    私は今日から男になっとよ…映画「緋牡丹博徒」

    男社会のヒロイン 力強く

    私は今日から男になっとよ(映画「緋牡丹(ひぼたん)博徒」より)

    • 青井阿蘇神社に夕日が差し、本殿壁面に飾られた木彫りの唐獅子牡丹はにわかに赤みを帯びる(熊本県人吉市で)
      青井阿蘇神社に夕日が差し、本殿壁面に飾られた木彫りの唐獅子牡丹はにわかに赤みを帯びる(熊本県人吉市で)

     肥後熊本は五木の生まれ、姓名の儀は矢野竜子、通り名を緋牡丹のお竜と発します――。映画「緋牡丹博徒」シリーズのヒロイン、お竜さんは男社会の中で生きる強い女性だ。藤純子じゅんこ(現・富司純子すみこ)さんの颯爽さっそうとした格好良さで人気を集めた。熊本・人吉で一家を構える博徒の娘だったが、殺された父の四十九日を終えて組は解散。父の敵討ちを決意したお竜さんは、「私は今日から男になっとよ」と宣言する。その時、庭の白い牡丹が深紅に染まる。山下耕作監督の演出は鮮やかだった。

     人吉は、鎌倉時代に地頭に任ぜられた相良氏が、戦国大名を経て江戸時代も治め、明治まで約700年間も一族で統治したという、全国でも珍しい地域だ。地元で「青井さん」と親しまれる青井阿蘇神社は、806年創建と1200年以上の歴史を持つ人吉球磨地方の総鎮守。1610年から4年間の慶長年間に造営された社殿群は、2008年に国宝に指定された。「神社を中心にこの地域が発展、相良氏が入ってからも良い関係で共存してきました」と宮司の福川義文さん(52)は語る。

    • 動画は写真をクリック
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     映画の回想シーンで、娘時代の楚々そそとしたお竜さんは、青井阿蘇神社に参詣し、人吉城跡の石段を下りる。人吉城跡を三の丸まで登ると、人吉市街が一望できる。彼女もここから古里を眺めたのだろうか。

     緋牡丹のお竜の通り名が示すように、その肩には鮮やかな赤い牡丹の刺青いれずみが彫られている。女を捨てて渡世に生きることを決意したしるしだ。青井阿蘇神社には、この刺青のモデルになったと言われる牡丹の彫刻が二つある。

     一つは、本殿と拝殿の間の「幣殿へいでん」内部。四季を表す花鳥風月の彫刻が四方の壁の上部をぐるりと囲んでおり、春の部分に赤い牡丹が描かれている。もう一つは本殿裏側の軒に下がる唐獅子牡丹が彫られた板。

     「どちらが基になったのかは分かりません」と福川さん。お竜さんの刺青に唐獅子はないので、デザインとしては幣殿の方なのだけれど、木地そのままの本殿の唐獅子には何とも言えない迫力があった。(文・福永聖二 写真・林陽一)

    「緋牡丹博徒」
     女優・藤純子の人気を不動にした東映の 任侠 にんきょう 映画シリーズ第1作。明治初期の熊本・人吉で一家を構える矢野仙蔵の一人娘・竜子(藤)は、商家との縁談が調っていた。ところが、仙蔵が闇討ちに遭って落命。組は解散し、縁談も流れた。竜子は女であることをやめて、父の敵を捜す旅に出る。脚本の鈴木則文が付けたタイトルは当初、「女博徒緋牡丹お竜」だったが、タイトル作りの名人・岡田茂京都撮影所長(当時)の一声で「緋牡丹博徒」に決まったという。

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    2016年02月29日 10時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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