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    旅の専門誌「旅行読売」から、旅に役立つ特選情報をお届けします。

    由布院温泉の魅力にふれるひとり旅へ

    • 「山のホテル夢想園」の女性用露天風呂。広さは約150畳。日帰り入浴もできる
      「山のホテル夢想園」の女性用露天風呂。広さは約150畳。日帰り入浴もできる

     由布岳や九重(くじゅう)連山へと続く山並みをかすめて、白い雲が流れていく。クセのない単純温泉で火照(ほて)った体を、早春のひんやりとした風がなでる。ここは由布院盆地の南端に立つ「山のホテル夢想園(むそうえん)」の露天風呂。温泉に来たならまずはひと風呂と、日帰り入浴を楽しんだ。

     夢想園は高台にあり、由布院が盆地だということが一目瞭然だ。眼下に広がる街は、かなりのにぎわいを見せているという。「かなり」と聞いてもピンとこないので統計を探ると、2016年度の宿泊客数と日帰り観光客数の合計は約360万人。群馬県の草津温泉が約300万人というから、何となく想像がつく。その魅力は何なのか、ひとり旅では何ができる? 早速、街の中へ向かった。

     時刻はまだ正午前。由布院温泉へは大分空港から直行バスで55分、福岡空港から同1時間35分とアクセスは容易だ。羽田空港を8時頃出発して、午前中に到着できる。

     ひとり旅に出て静かな湯宿へ行くか、にぎやかな通りを訪ねるかは好みが分かれるが、由布院はその両派に“ほどよい”環境にある。土産物店や飲食店が100軒以上も並ぶ湯の坪街道は「九州の軽井沢」と称されるにぎわいだが、少し離れただけで民家や田園、清らかな川辺が広がり、のどかだ。

    • 「コミコ アート ミュージアム ユフイン」のラウンジでひと休み。雄大な由布岳が圧倒的な迫力で迫る
      「コミコ アート ミュージアム ユフイン」のラウンジでひと休み。雄大な由布岳が圧倒的な迫力で迫る

     2017年10月に開館した「コミコ アート ミュージアム ユフイン」も湯の坪街道に近いが、焼き杉の黒い板をめぐらした建物は静かなたたずまい。目立つ看板はなく、知らなければ美術館であることに気づかない。しかし気になって入ってみたくなるのは、設計者・隈研吾の手腕といえるだろう。入館は予約制(当日でも予約状況によっては入館可)。観覧は所要1時間のツアー形式で1回の定員は15人程度なので、ガイドの解説もじっくり聞ける。

     同館では現在、村上隆の作品6点、杉本博司の作品5点を展示している。現代アートへの関心が高まるとともに、展示作品数を絞ってじっくり見せる斬新な展示方法にも目を見張る。2階に上がるとラウンジがあり、大きなガラスの向こうには枯れ山水の庭が広がり由

    布岳が見えた。建築物と自然とが見事に融合している景観に出合えて、得をした気分になれた。

    路地裏の美術館、寺社巡り 意外な出合いがある

    • 「由布院 玉の湯」の「ティールームニコル」で人気のアップルパイ(520円)
      「由布院 玉の湯」の「ティールームニコル」で人気のアップルパイ(520円)

     同館から歩いて3分ほどの「由布院 玉の湯」は、「亀の井別荘」「山荘無量塔(むらた)」とともに「御三家」と呼ばれ、由布院を代表する宿の一軒。ひとり泊もできるが、料金はかなり高額。少しでも雰囲気に触れたいと、誰でも利用できる「ティールームニコル」でひと休みした。窓越しに広がる木立が美しい。

     ここで偶然に出会った玉の湯会長・溝口薫平さんによると、四十数年前の由布院は無名で、小さな旅館が三十数軒あるだけだったという。今のように発展するまでには紆余(うよ)曲折があったが、一貫して訴えたのは「自然を守れ」ということ。歓楽街と化すのを防ぎ、建物にも高さ制限を設けるなどして環境と景観を守っているという。由布院の魅力は、のどかな山里風景の中にあり、路地裏に隠れている。この後の旅の過ごし方は決まった。ひとまず宿にチェックイン。翌日は体験施設や寺社仏閣、クラフト工房などを巡ることにした。

     宿泊した「名苑と名水の宿 梅園(ばいえん)」の敷地は1万坪。露天風呂も貸し切り風呂も広大で、自家源泉をかけ流す。土を少し掘れば温泉が湧き出るという由布院の温泉力を実感した。

     チェックアウト後は、由布院を開拓したと伝わる宇奈岐日女(うなぎひめ)(まつ)る宇奈岐日女神社に参り、「箸屋一膳」で箸作り体験。主人の西原慎一郎さんは「由布院ならではの土産をと考え、箸を思いつきました。地元の木材を使い、間伐材の有効利用にも役立っています」と話す。

    • 工房で修業を積む作家などによる木工品が買える「アトリエときデザイン研究所」
      工房で修業を積む作家などによる木工品が買える「アトリエときデザイン研究所」

     佛山寺(ぶっさんじ)茅葺(かやぶ)き屋根の山門がユニーク。由布岳の山岳信仰の場でもあるという。昨年11月にオープンした「蓄音機の梅屋」、木工作家・時松辰夫(ときまつたつお)氏の工房に隣接するショップの「アトリエときデザイン研究所」で土産探しと、散策を続ける。

     蓄音機の音は衝撃的だった。1900年代初頭にイギリスで作られた蓄音機から流れる音楽は臨場感たっぷり。音の圧力にたじろぎそうになる。1曲聴いて思わず拍手をすると、「どんなにデジタルが発達しても、この音は再現できません」と、店主の梅田英喜(ひでき)さんはご満悦。

     温泉はもちろん、この地が気に入って工房や店を営み、暮らす人々がいる。数ある由布院の魅力に、少しだが触れられた旅となった。

     文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

    【施設データ】

    山のホテル夢想園

    日帰り入浴は10時~15時/不定休/700円/電話0977・84・2171

    コミコ アート ミュージアム ユフイン
    入館は予約制(当日でも空きがあれば入館可)、9時30分~17時30分/隔週月曜休/1500円/https://camy.oita.jp/

    ティールームニコル
    9時~17時(変更の場合あり)/無休/電話0977・84・2158(由布院玉の湯)

    名苑と名水の宿 梅園
    [ひとり泊データ]通年可/1泊2食2万6070円~/トイレ付き10畳+6畳和室など/電話0977・28・8288

    箸屋一膳
    9時~17時(体験受け付けは~15時、2700円)/無休/電話0977・84・4108

    蓄音機の梅屋
    11時~17時(事前に要連絡)/不定休/電話0977・85・8845

    アトリエときデザイン研究所
    9時~18時/無休/電話0977・84・5171

    (月刊「旅行読売」2018年4月号より)

     月刊「旅行読売」は、1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内は こちら

    2018年03月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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