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    一度は見たい 大自然のオブジェの宝庫・隠岐諸島

    • 条件がそろうと、こんなに幻想的な景色を船上から眺められるローソク島の夕景
      条件がそろうと、こんなに幻想的な景色を船上から眺められるローソク島の夕景

     隠岐(おき)がどこにあるかご存じだろうか? 出雲や松江のある島根半島から沖合へ約40~80キロ。後鳥羽上皇や後醍醐天皇の流刑地として知る人も多いだろう。今は出雲縁結び空港から約30分、大阪・伊丹空港からは約50分のフライト。松江に近い境港などから大型フェリーも運航し、気軽に行ける島である。

     島といっても、“隠岐島”という島はない。

     「島前(どうぜん)」3島と「島後(どうご)」1島の有人4島と180余の無人島を総称して隠岐諸島と呼ぶ。空港のある島後は、外周の道約150キロと諸島最大だ。

     隠岐に来た一番の目的は、この島後で「ローソク島」の夕景を見ること。夕刻の遊覧船出航まで島内をドライブすることにした。

     まずは「隠岐自然館・隠岐ジオパークビジターセンター」で、島の歴史や自然について学ぶ。隠岐はユネスコ世界ジオパークに認定されており、地形や地質をたどるのが面白い。難しいテーマのように思われがちだが、観光的には“大自然のオブジェ”と呼ぶにふさわしい名所が多いということ。ローソク島はその筆頭格だ。

     「壇鏡(だんぎょう)の滝」も人気がある。高さ約40メートルの岩壁を流れ落ち、すぐそばには壇鏡神社が鎮座する。そこへ降り注ぐかのように飛び散るしぶきが日に輝き、いやが上にも神秘的に映る。

     那久岬(なぐさき)もおすすめだ。島前3島の眺めはもちろん、一面の草原に放牧された牛の群れに驚かされる。海と断崖と牛とが一枚に収まる光景は太古の姿を見るようで、映画「ジュラシック・パーク」の1シーンを思い浮かべたほどだ。

     そんな景観を前にしても、ローソク島を思うと雲ゆきが気になる。案内をしてくれた隠岐観光協会の小泉(たつき)さんの話では、「7回訪れ、一度もローソク島の夕景を見られなかった人もいる」とのこと。高さ約20メートルの奇岩の先端に夕日が重なる姿が、ローソクに火が(とも)るように見える名所。夕日が顔を出さないことには始まらない。

     夕晴れを願いながら福浦港へ向かうと、遊覧船のガイドさんが「今日はどうかな? 夏は90%の確率で見られ、秋は空がかすんでさらに(あかね)色が美しい」という。

     木目のような紋様が特徴の海食崖(かいしょくがい)を見ながら海上を進むこと約20分。ローソク島が見えてきたが、夕日は雲隠れ。時折、薄明光線を落とすものの灯火とまではいかない。船長もガイドさんも粘ってくれたが日没が迫りタイムアップ。それでも乗船客は、「次こそ絶対に見たい思いが強まった」「時折、雲間から差す光も幻想的」と一様に満足げだった。

    罪人が歌を詠み、優雅に暮らす!?

    • 明屋海岸のハート岩。ハート形の穴がある
      明屋海岸のハート岩。ハート形の穴がある
    • 中ノ島の菱浦港へ入港する高速船「レインボージェット」。本土と隠岐諸島を約1時間で結ぶ
      中ノ島の菱浦港へ入港する高速船「レインボージェット」。本土と隠岐諸島を約1時間で結ぶ

     翌日、西郷港からフェリーで島前へ。島前3島は海底火山の噴火による隆起で誕生し、内海を囲むように点在する。内海はカルデラに海水が入り込んで出来、浸食により分離した3島はその外輪山の名残である。

     西郷港から1時間10分の船旅で着いた中ノ島も大自然のオブジェは多い。明屋(あきや)海岸にある岩礁は、ぽっかり開いた穴がハート形に見えることから「ハート岩」と呼ばれる。「三郎岩」は大小三つの岩が並ぶ名所で、海中展望船で洋上から間近に眺めると迫力がある。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが旅行で訪れた際、菱浦湾の鏡のように輝く美しさから「鏡が浦」と名付けたという。

     中ノ島はまた、後鳥羽上皇が流され19年の時を過ごしたところ。島内にある隠岐神社は後鳥羽上皇を祭神とする。歌人としても知られ、島ガイドの千葉梢さんが「後鳥羽上皇は隠岐で詠んだ歌を『遠島(えんとう)百首』としてまとめました」と教えてくれた。

     流刑の身でありながら、なんだか優雅に思える。というのも、隠岐は絶海の孤島ながら、自給自足の農産物、海産物に恵まれた地。生活に困らない島であることから、近世以前は身分の高い罪人だけが流された。監獄はなく、庄屋の家や寺に預けられたという。

     島前3島の間には島前内航船が行き来し、中ノ島から西ノ島へ7分、知夫里(ちぶり)島へは18分と近い。西ノ島には日本有数規模の断崖が続く国賀(くにが)海岸がある。知夫里島には内海を見渡す赤ハゲ山がある。一口に隠岐といっても、島により表情はさまざま。残る2島を加えて2、3泊の旅をするのもいいし、次の来島の楽しみにとっておくのもまたいい。

     文/松田秀雄

    【施設データ】

     隠岐自然館・隠岐ジオパークビジターセンター

     8時30分~17時30分(12~3月は17時まで)/月曜休(祝日の場合は翌日休)、年末年始休/300円/電話08512・2・1583

     壇鏡の滝・壇鏡神社

     見学・拝観自由/電話08512・2・0787(隠岐の島町観光協会)

     ローソク島遊覧船

     10月31日まで運航(要予約)。日没にあわせて出航し、目安は7月下旬は17時50分、8月上旬は17時50分、下旬は17時30分など/3000円/電話08512・2・0787(隠岐の島町観光協会)

     隠岐観光協会

     電話 08512・2・1577

     (月刊「旅行読売」2018年8月号より)

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    2018年07月20日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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