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    天空の城と北陸の小京都を歩く

    越前大野城(福井県)

    • 戌山城跡の南出丸下から見た越前大野城。雲海に浮かぶような姿はまさに天空の城
      戌山城跡の南出丸下から見た越前大野城。雲海に浮かぶような姿はまさに天空の城

     越前大野(現・大野市)は福井と岐阜を結ぶ美濃街道の要所、「北陸の小京都」として栄えた城下町。今も残る碁盤目状の町割りに、歴史ある寺社や醤油(しょうゆ)醸造場、酒蔵などが点在している。

     織田信長の家臣、城下町建設で名高い金森長近(ながちか)が、越前一向一揆を平定し、恩賞で賜った大野郡3万石の領主として築いた町並みだ。北西部に位置する標高249メートルの亀山に立つ越前大野城は、城下町のあちこちから仰ぎ見ることができる。10月上旬~4月下旬の早朝、周辺の小高い山に登れば、「天空の城」と呼ばれる雲海に浮かぶ神秘的な光景が現れ、城好きを魅了する。

     越前大野駅から、城へ続く六間通りを西へ向かう。途中、越前一向一揆で討ち死にした朝倉式部大輔景鏡(かげあきら)の居城、亥山城(いやまじょう)(現在は日吉神社の境内)の脇を歩き、五番通りを北上すると美濃街道の七間通りに出る。

     南北の道は二番通り、三番通り、東西の道は六間通り、七間通りと数字の着く通りの名前が多いのも、碁盤の目のような町割りゆえのことだろう。

     七間通りでは、400年以上も朝市が開催されている。春分の日から大みそかまでの7~11時頃に10軒前後の露店が並び、10月、11月ならサトイモなどの農産物を中心に販売。近隣農家のおばちゃんたちの朗らかな大野弁が響く。10月27・28日は三大朝市物産まつりを開催する。

    • 御清水はお殿様がご用水として使っていたことから、殿様清水の名でも親しまれる
      御清水はお殿様がご用水として使っていたことから、殿様清水の名でも親しまれる

     七間通りには、国の登録有形文化財に登録されている南部酒造場などの風情ある木造建築が並び、建物の間から垣間見える越前大野城の姿も独特の趣がある。

     盆地である大野は地下水が豊富で、今も十数か所の湧水地が残る。城近くにある名水百選の御清水(おしょうず)に立ち寄ることにした。殿様のご用水だったひんやりした軟水を飲んで、ひと息つく。北に進めば大野城の外堀だった百間堀(ひゃっけんぼり)。まもなく城の南登り口がある。

    つづら折りの坂道を登り2重4階の天守へ

     11月上旬には杉など緑の木々の間に赤いモミジなどが色付く整備された山道を歩き、江戸時代に本丸へ上がる唯一の道だったつづら折りの百間坂を登って約20分、天守が見えてきた。

    • 越前大野城の大天守4階展望室からは市街地が一望できる
      越前大野城の大天守4階展望室からは市街地が一望できる

     城は初代城主でもある金森長近が1575年頃から5年かけて建造。亀山山頂を削って多聞塀を周囲にめぐらせた本丸、南東の山麓部に二の丸、三の丸を持つ梯郭式(ていかくしき)で、東麓には城下町が広がる。町割りには直進できない鍵状の通りを施して城を守った。

     天守は1775年の大火で一度焼失し再建されたが、1873年の廃城令で取り壊され、現存する建物は1968年に復興されたもの。しかし、堂々とした野面(のづら)積みの石垣下部は創建当初、440年以上前のものと推定され、武士が駆け上がった「武者登り」と言われる急な石段もある。

     城主は江戸初期に松平氏、1682年から廃藩まで土井氏が務め、館内には第4代利貞所要の胴具足や歴代藩主の書など、土井氏の貴重な遺品を鑑賞できる。4階の展望室からの眺めは圧巻で、城下町はもちろん、好天なら日本百名山の荒島岳なども見える。

     「天空の城として大野城を望みたいなら、城の1キロ西部、標高324メートルにある戌山(いぬやま)城址からがおすすめ。日中との寒暖差がある雨が降った翌日、風のない明け方から9時頃なら、良い具合に見える可能性が高いですよ」と大野市商工観光振興課の廣作(ひろさく)力さん。

    • 人力車は春分の日~11月末の土・日曜、祝日に営業。1週間前までに要予約(大野市観光協会)
      人力車は春分の日~11月末の土・日曜、祝日に営業。1週間前までに要予約(大野市観光協会)
    • 本町通りへ向かう路地をそぞろ歩き。城下町の町割りは、金森長近が整備した頃から400年以上も大きく変わらないという
      本町通りへ向かう路地をそぞろ歩き。城下町の町割りは、金森長近が整備した頃から400年以上も大きく変わらないという

     城下町に戻り、大野城外堀の土居が庭に残る旧田村家(大人200円、中学生以下無料)、大正時代の数寄屋風書院の離れのある国の登録有形文化財の旧内山家(同)と二つの武家屋敷を見学。観光用の人力車(歴史の路体験コース=2000円など、問い合わせは大野市観光協会)もあり、高い目線から広く町を見渡せる。9宗派16寺が集まり江戸時代をしのぶ寺町通りなど、車夫が名所の解説をしてくれるのもうれしい。

     おいしい水が湧き、盆地で寒暖差のある大野は、醤油やみそ、酒造りも盛ん。野村醤油では、大野グルメの醤油カツ丼のタレを考案したという6代目の野村明志さんと一緒に「しょうゆ作り体験」(1000円要予約、冬季休)もできる。

    文/児島奈美 写真/谷口 哲

    交通=北陸線福井駅から越美北線に乗り換え、越前大野駅下車

    問い合わせ=電話0779・65・5521(大野市観光協会)

    (月刊「旅行読売」2018年11月号より)

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    2018年10月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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