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    旅の専門誌「旅行読売」から、旅に役立つ特選情報をお届けします。

    飛行場、お稲荷さん、江戸前…東京・羽田散歩

    東京モノレールで訪ねる昭和

    • 羽田の空と海の安全を見守る大鳥居。週末は釣り人やサイクリング愛好者らでにぎわう
      羽田の空と海の安全を見守る大鳥居。週末は釣り人やサイクリング愛好者らでにぎわう

     昭和39年、東京五輪で羽田空港―都心間のアクセスを改善するために建設された東京モノレール。以来次々と途中駅が誕生し、開業から半世紀が過ぎた現在、沿線には商業施設や観光スポットも増えた。土・日曜、祝日には乗り降り自由の一日乗車券(700円)もある。時代に合わせて進化する東京モノレールに乗って、浜松町駅から昭和を訪ねる散歩に出た。

     目指すは天空橋駅。正月の「羽田七福いなりめぐり」で知られる(あな)(もり)稲荷神社があり、今も下町風情が色濃く残る地域だ。だがその前に、2駅先の新整備場駅に立ち寄りたい場所があった。

     地下駅を出ると飛行機のエンジン音がこだました。羽田空港のA滑走路とC滑走路を結ぶ連絡誘導路がフェンス越しに一望できる、航空ファン垂涎(すいぜん)のスポットだ。さらに絶景を楽しめるのがユーティリティセンタービル2階の喫茶店「ブルーコーナーUC店」。前方を通り過ぎる飛行機を眺めながらコーヒーを味わい、軽い高揚感とともに天空橋駅に引き返す。

     ジェットエンジンをモチーフにした駅舎を出て左に進むと、海老取(えびとり)川が多摩川に合流する弁天橋のたもとに赤い鳥居が見えた。

     この「羽田大鳥居」は、かつて羽田空港旧ターミナルビルの駐車場の真ん中に立っていた。

     案内板にその歴史が記されていた。終戦直後、連合国軍は羽田空港を接収し、拡張するために海老取川より東側の住民らに強制退去を命じる。穴守稲荷神社も彼らとともに移転を余儀なくされた。ところが、大鳥居だけは、動かそうとするたびに工事関係者に不幸が起き、そのまま残すことに。ようやく平成11年、新滑走路整備に伴い「旧住民の心のシンボルに」とクレーン車で弁天橋に運ばれた。

     穴守稲荷神社に向かう途中、路地に小さな社殿が立ち(白魚(しらうお)稲荷神社)、民家の庭先に小さな(ほこら)を見つけた。そう、ここはお稲荷さんの街なのだ。

     そのいわれを穴守稲荷神社宮司の矢野次男さんが教えてくれた。

     「江戸後期、波浪で決壊する堤防の穴を守るために稲荷大神を(まつ)ったのが当神社の起こりです」

     今は交通安全の守り神として空港関係者や旅行者の参拝が絶えない。「十数年前まで隣に日本航空の訓練センターがあり、堀ちえみさん主演の『スチュワーデス物語』もよくここでロケをしていました」と矢野さんは思い出を語る。

    旅客機操縦の疑似体験も

     昭和の薫り漂う羽田の中でも、羽田6丁目界隈(かいわい)は特に細い路地が巡る。路地裏を縫うように多摩川を目指す。堤防の手前で赤レンガの胸壁にぶつかる。多摩川下流の改修のために昭和初期に造られた「羽田レンガ堤」だ。階段を上って堤防に立つと、目の前に多摩川が広がった。

     かつてこの辺りに羽田の渡しがあった。今は住民の散歩道。川岸には釣り糸を垂れている親子の姿も見える。

     海水と淡水が混じり合うこの一帯は古来、羽田浦と呼ばれる好漁場だった。ところが、東京五輪を控えて羽田沖が埋め立て予定地となると、羽田の漁師の多くは漁業権を放棄して陸に上がった。ただ今も、名物のボサエビ(小枝を束ねたもの=ボサ=を水中に沈めて捕獲するスジエビ)漁やシジミ漁は残り、船着き場に小舟が浮かんでいる。

    • ラグジュアリーフライトでは、ボーイング737-800、747-400の操縦を疑似体験できる
      ラグジュアリーフライトでは、ボーイング737-800、747-400の操縦を疑似体験できる

     堤防から引き返し、穴守稲荷神社近くの「ラグジュアリーフライト」へ。ここでは本格的なフライトシミュレーターでボーイングの旅客機の操縦を疑似体験できる。

     店長の中澤勇太さんの助けを借りて、羽田空港を離陸して東京湾上空を回る初心者コース(15分間、3240円)に挑戦する。「パイロット志望者やプロの操縦士も練習に訪れます」と中澤さん。

     無事、着陸に成功して一息つくと、散歩の疲れがどっと出てきた。そこで近くの銭湯「玉の湯」で筋肉をほぐすことにした。

     穴守稲荷界隈には今も銭湯が五つある。玉の湯の特徴は、その華やかな瓦ぶきの屋根。中央部が弓形で左右両端が反り返り、黄色味のある赤色に塗られている。

    名物“ボサ天重”で知る 江戸前の味と羽田っ子の意地

    • 「食通 ゆたか」の名物「ボサエビの天重」(1650円)は夜(17時から)のみ提供
      「食通 ゆたか」の名物「ボサエビの天重」(1650円)は夜(17時から)のみ提供

     ひと風呂浴びてさっぱりしたところで、羽田や東京湾で()れた魚を味わえる「食通 ゆたか」に向かう。名物は、お重からはみ出すほど大きなボサエビの天重。中温でじっくり時間をかけて揚げたかき揚げは、中までサクサク、口いっぱいに甘みが広がる。

     店主の村石保さんは78歳、羽田で生まれ育った。「小さい頃、よく多摩川にウナギを捕まえに行った。高校を出て自動車整備工になったが、料理が好きでウナギ料理の店を開いた。多摩川の水が昔みたいにきれいに戻ると、羽田で獲れた魚を専門に出すようになった」。残念なのは、近年、羽田空港の拡張工事で魚が千葉や神奈川に逃げてしまったことだ。

     後継者はいない。それでも毎朝5時に起きて腹筋運動を欠かさない。「あと数年すれば魚が戻ってくると漁師たちは言っている。俺も頑張ってその日を待ちたいね」

     江戸前の味と羽田っ子の意地に感銘したところで帰路につく。

    • 「TOKYO MEGA ILLUMINATION」の見どころのひとつ、江戸時代の農村風景をイメージしたイルミネーション
      「TOKYO MEGA ILLUMINATION」の見どころのひとつ、江戸時代の農村風景をイメージしたイルミネーション

     大井競馬場前駅で途中下車。同競馬場内で開催されている関東最大級のイルミネーション「TOKYO MEGA ILLUMINATION」を楽しむ。キャッチフレーズは「未来、現在、過去にタイムスリップ」。タイムトンネル内には昭和の黄昏(たそがれ)の横丁を再現したコーナーもあり、多くの人が足を止めて見入っていた。 

    文・写真/天野久樹

    ◇施設データ

    ブルーコーナーUC店

    11~20時/土・日曜、祝日休/電話03・5756・9205

    穴守稲荷神社

    9~17時(社務所)/電話03・3741・0809

    ラグジュアリーフライト

    10~20時/不定休/電話03・6423・7371

    食通 ゆたか

    11時30分~13時30分、17~20時/月・火曜休/電話03・3741・2802

    TOKYO MEGA ILLUMINATION(大井競馬場内)

    18~21時(土・日曜、祝日は17時から。オープン時刻に一部変動があるため、公式サイトを参照のこと。営業日は12月28日までの土・日曜、祝日と2019年1月12日~3月31日/1800円/電話03・3762・5230

     月刊「旅行読売」は、1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内は こちら
    2018年12月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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