お得に楽しく 飛騨路で飲み歩き旅

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お得な特典が盛りだくさんの「ぎふ呑んべぇパスポート」
お得な特典が盛りだくさんの「ぎふ呑んべぇパスポート」

 近頃、著名な酒(どころ)では、複数の酒蔵が参加して、酒蔵巡りを楽しむ人に特典を提供する「酒蔵めぐりパスポート」のような企画を行っている。岐阜県では2017年から「ぎふ()んべぇパスポート」を発行している。特典もいろいろあり、これを頼りに酒蔵を巡りたくなった。

 とはいえ、参加酒蔵は県全域にわたり29軒、全蔵制覇はさすがに無理だ。そこで、豪雨の影響で一部区間の運転を見合わせていた高山線が2018年11月21日に全線復旧したこともあり、飛騨地区に狙いを定めた。過去には「駅弁食べ歩き」で胃袋を鍛えたが、日本酒飲み歩きはいかに? 「飲みすぎてはいかん!」と肝を据え、旅に出た。

 まずは名古屋駅から「特急ワイドビューひだ」で2時間30分の高山へ。高山駅から東へ徒歩15分。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された上三之町(かみさんのまち)にあり、200年以上続く酒蔵が舩坂(ふなさか)酒造店だ。「深山(みやま)菊」や「甚五郎」の銘柄で知られ、店舗の奥に醸造蔵や瓶詰め・貯蔵場、食事処「味の与平」が中庭を囲んで立っている。醸造蔵は高山市のイベントでの「酒蔵めぐり」の限定公開(2月8~14日)。酒造りの様子は見学できないが、食事処で日本酒と飛騨牛を試したくてやってきた。

舩坂酒造店の食事処味の与平で一番人気の飛騨牛御膳(2980円)と飲み比べセット(800円から)
舩坂酒造店の食事処味の与平で一番人気の飛騨牛御膳(2980円)と飲み比べセット(800円から)

 「酒米の出来具合や気候は毎年異なりますから、酒造りは毎年1年生という気構えで臨みます」とは、(とう)()の平岡誠治さん。「蔵人の思いは必ず酒の出来に反映される」が信念で、「大吟醸四ツ星」の仕込みでは蒸した酒米を一粒も重ならないように手作業でほぐして冷やすという。パスポート特典の升酒を楽しんだ後、食事処で飛騨牛御膳と大吟醸四ツ星をいただく。

 飛騨牛はサッと表面を焼き、タレをつけずに食べると上質な脂の甘味が口中に広がる。一瞬、日本酒が負けてしまうのでは?と思ったが心配は無用。脂分を洗い流すようなスッキリした口当たりで、フルーティーな吟醸香とともに、ふわりとした米の優しい甘味が広がった。

笑い声で日本酒がおいしく!?

渡辺酒造店の築140年ほどの建物は、国の登録有形文化財に登録されている
渡辺酒造店の築140年ほどの建物は、国の登録有形文化財に登録されている

 吟醸酒のさらなる誘惑を振り払って高山駅に戻り、富山方面へ。アニメ映画「君の名は。」の舞台にもなった飛騨古川駅で降り、人気銘柄「蓬莱(ほうらい)」を醸す渡辺酒造店を訪ねた。もともと渡辺家は両替業と生糸を商っていたが、5代当主が京都で日本酒のうまさに感動し、1870年に酒造りを始めた。現在、酒米は飛騨産ひだほまれが中心で、飛騨山脈の伏流水を仕込み水に使い、最新の機械で醸造。岐阜県でトップの製造量を誇る。

 驚いたのは仕込みタンクが置かれた部屋。なんと! 観客の笑い声も入った吉本新喜劇の録音音声が大音量で流れている。蔵人の塚腰穣さんは「楽しい酒になるように発酵中の(もろみ)にお笑いパワーを注入しています」とほほ笑む。春のイベント「蓬莱蔵まつり」(3月16・17日)では、蔵内で吉本新喜劇のライブも行われるそうだ。

 試飲は5種ほど。米のうま味が詰まり、奥深いコクがある「蓬莱家伝手造り 純米吟醸」をはじめ、あれこれ試すうちに顔がニンマリと緩んでくるが、これは“酔い”ではなく、“お笑いパワー”のなせる業である。土産の日本酒を買うと、パスポート特典の「スマイルおちょこ」がもらえた。

酵母による味の違いも実感!

奥飛騨酒造玄関前には新酒ができた合図である緑の杉玉がつるされる
奥飛騨酒造玄関前には新酒ができた合図である緑の杉玉がつるされる

 まだまだ飲める!と意気込み、名古屋方面に戻り飛騨金山駅から徒歩10分、奥飛騨酒造へ。1720年に酒造りを始め、代表銘柄の「初緑(はつみどり)」は尾張藩の殿様が命名したとか。酒造りでは8代目になる。

 昔ながらの手作業による酒造りを貫く一方で、貯蔵庫は気温3度を維持できる最新施設を10年前に導入。しぼりたての新酒をすぐ瓶詰めにして、新鮮な香りと味わいを長く楽しめる「無濾過(ろか)生原酒」を岐阜県では初めて世に送り出した。

 蔵を案内してくれた当主の高木千宏さんは「酒造りでは米、水と並んで、酵母の役割も重要です。当社では5種の酵母を使い分けています」と語る。

 試飲すると、酵母の重要性がよく分かる。例えば、多酸性G酵母を使った「初緑スパークリング」は日本酒なのに黒酢ドリンクを思わせる爽やかな酸味だ。

 3軒の酒蔵を訪ねただけでも、それぞれにこだわり、味わいの違いを実感できた。帰りの列車、次回はどこへと考えているうち、心地よい眠りに落ちた。

 文・写真/内田 晃

ぎふ呑んべぇパスポート

 岐阜県内の酒蔵29軒が参加。パスポートは酒蔵、宿泊施設、観光案内所などで無料配布している。酒蔵で提示すると普段は流通していない酒蔵限定酒の購入、無料試飲などの特典がある。有効期限は2019年3月31日まで。問い合わせは、岐阜県観光企画課/電話058・272・8393

舩坂酒造店

 電話 0577・32・0016/営業 売店は8時30分~18時(3~11月は20時まで)・無休、食事処は11時~14時30分、17~20時・不定休/蔵見学 不可/交通 高山線高山駅から徒歩15分/住所 高山市上三之町105

渡辺酒造店

 電話 0577・73・2347/営業 8時30分~17時・1月1~6日休/蔵見学 1週間前までに要予約/交通 高山線飛騨古川駅から徒歩5分/住所 飛騨市古川町壱之町7-7

奥飛騨酒造

 電話 0576・32・2033/営業 8~17時・不定休、1月1日休/蔵見学 要予約/交通 高山線飛騨金山駅から徒歩10分/住所 下呂市金山町金山1984

(月刊「旅行読売」2019年2月号より)

 月刊「旅行読売」は、1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内は こちら
58102 0 たびよみ 2019/01/24 05:20:00 2019/01/25 10:53:19 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190117-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

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