昔ながらの宿場を後に、鈴鹿峠越えに挑む

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東海道 関宿~土山宿(三重・滋賀)/徒歩約7時間(約18.5キロ)

宿内にある眺関亭(ちょうかんてい)から関宿を一望。江戸時代には1日に1万人以上が行き来したという
宿内にある眺関亭(ちょうかんてい)から関宿を一望。江戸時代には1日に1万人以上が行き来したという

 鈴鹿(すずか)峠は伊勢と近江の国境となる峠。奈良時代は奈良から伊賀、加太(かぶと)、伊勢への大和街道が東の幹線道路であったが、平安京遷都にともない、886年に鈴鹿峠越えの「阿須波道(あすはみち)」が開かれ、後に東海道となった。険路と山賊の恐れから、箱根峠に次ぐ難所とされた。

 東海道で、今も宿場の面影が色濃く残る所は?と聞かれたら、関宿(せきじゅく)を挙げたい。日本橋から47番目の宿場だ。東西1.8キロに200軒ほどの古い町屋が連なり、東海道では唯一の国の重要伝統的建造物群保存地区でもある。関宿を起点に、難所と恐れられた鈴鹿峠を越えて土山宿(つちやましゅく)を目指した。

 関宿の建物は江戸期から明治中期頃に造られたものが半数以上を占め、平入りの2階建てが多い。

 「財力を示すためにわざわざ木材を曲げて造った『むくり屋根』、牛馬をつないだ()金具、虫籠窓(むしこまど)など細かな意匠を探しながら歩くと面白いですよ」と、東海道関宿まちなみ保存会の雲林院孝制(うじいたかのり)さん。

 その言葉通りに面白い看板を見つけた。関宿(はた)()玉屋歴史資料館の向かいに立つ菓子舗・深川屋(ふかわや)の庵看板(かんばん)で、京側を向くとひらがな、反対の江戸側は漢字で書かれている。14代目の服部亜樹さんは、「東海道の旅人が方向を間違えないよう看板の表記を統一しました。京は『かな文化』でしたから、京へ向かう時はひらがなをたどったのでしょう」と教えてくれた。

「関の戸」6個入り500円。自家製こしあんを求肥(ぎゅうひ)で包み、和三盆をまぶしてある
「関の戸」6個入り500円。自家製こしあんを求肥(ぎゅうひ)で包み、和三盆をまぶしてある

 江戸期の宿場内は水害対策として今よりも30センチほど低く道が造られ、両側に小川を設けて小さな橋を渡り往来していた。「虫籠窓はいわばマジックミラーで、外から中の様子は見えない。町民は室内から参勤交代の大名行列をこっそり見ていた」など服部さんの話は面白い。だが旅は始まったばかり。銘菓の餅菓子「関の戸」を買い、鈴鹿峠に向かった。

山賊伝説が残る峠を越え、のどかな近江の国へ

 関宿西追分から(ころび)(いし)を経て、国道1号沿いを1時間ほど歩く。弁天一里塚の先で「東海道」の看板に従い旧道を進むと沓掛(くつかけ)集落だ。昔の町屋がわずかに残り、次第に上り坂がきつくなる。

 坂は照る照る 鈴鹿は曇る

  (あい)の土山 雨が降る

鈴鹿峠の鏡岩から国道1号を見下ろす。峠越えの疲れも忘れる絶景だ
鈴鹿峠の鏡岩から国道1号を見下ろす。峠越えの疲れも忘れる絶景だ

 馬に人や荷物を載せ、鈴鹿峠を越えた馬子(まご)らが口ずさんだ民謡「鈴鹿馬子唄」の展示がある鈴鹿馬子唄会館でひと休みしたら、48番目の宿場・坂下宿を通過。その先、片山神社への分岐を右に入ると、クライマックスの始まりだ。

 昼なお暗い杉林の急坂を上り軽く汗をかいた頃、城壁のような石垣と鳥居が見えた。平安中期の延喜式(えんぎしき)に記された片山神社だ。

 鳥居右側の山道へ入り、石畳を踏みながらつづら折りの坂を上っていくと、「八町二十七曲り」と呼ばれた険路の名残が感じられる。国道1号をくぐり、もうひと頑張りすると鈴鹿峠のてっぺんに到着。脇道に入ると鏡岩がある。伝説では山賊がこの岩を磨き、そこに映った旅人を襲ったとか。岩の上に立つと傾斜地を右に左に曲がる国道が見下ろせた。よくぞ上った。この達成感は峠を越えた者だけが得られる特権だ。

麦芽糖を原料にカニの甲羅を模して手作りする「かにが坂飴」1包1000円
麦芽糖を原料にカニの甲羅を模して手作りする「かにが坂飴」1包1000円

 鈴鹿峠の山賊を退治したという坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)(まつ)る田村神社まではさらに約2時間。国道1号沿いをのんびり下ろう。田村神社入り口で売っている「かにが坂(あめ)」は古くからの土山宿名物で、べっこう色の飴を竹皮で包んである。

 ゴールの土山宿は、第3代将軍の徳川家光が上洛する際に設けられた土山本陣跡や江戸期の民家を改築した東海道伝馬(てんま)館をはじめ、連子(れんじ)格子(こうし)の町屋が並んでいる。鈴鹿峠を越えた旅人はこの宿場でホッと胸をなで下ろしたことだろう。宿場を抜け、国道1号を左に少し歩くと土山西口バス停。路線バスで草津線貴生川(きぶかわ)駅に出て、家路についた。

 文・写真/内田 晃

起点(関駅)までの交通

 名古屋駅から関西線快速1時間の亀山駅で加茂行きに乗り換え5分、関駅下車

 東名阪道亀山ICから国道1、25号経由2キロ

問い合わせ

 亀山市観光協会/電話0595・97・8877

 甲賀市観光協会/電話0748・60・2690

深川屋

 10~17時/祝日を除く木曜休/電話0595・96・0008

関宿旅籠玉屋歴史資料館

 9~16時30分/月曜休(祝日の場合は翌日休)/300円(関まちなみ資料館と共通)/ 電話0595・96・0468

かにが坂飴

 9~18時/火曜休(祝日の場合は翌日休)/電話0748・66・1426

(月刊「旅行読売」2019年6月号から)

 ◆月刊「旅行読売」
 1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内はこちら

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569291 0 たびよみ 2019/05/09 05:20:00 2019/05/09 12:42:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190422-OYT8I50131-T.jpg?type=thumbnail

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