渓谷美と駅弁を満喫! 廃線ウォークも

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わたらせ渓谷鐵道「トロッコわっしー号」(群馬・栃木)

美しい渓谷に沿って走るトロッコわっしー号(写真/わたらせ渓谷鐵道)
美しい渓谷に沿って走るトロッコわっしー号(写真/わたらせ渓谷鐵道)

 北関東を流れる利根川支流の渡良瀬川。その美しい渓谷沿いを走る「わたらせ渓谷鐵道(てつどう)」の愛称は「わ鐵」。桐生駅を出発したトロッコわっしー号は、都会の電車と違ってゆっくりと進む。同行してくださった「わ鐵」の樺澤豊社長は「新幹線をはじめとしてスピードが重視される時代に、ゆっくり走ることを目指しています」と言う。いまどきの電車の窓は固定されていて開けられないものがほとんどだ。ところが、窓ガラスそのものが取り外されているトロッコ車両では、沿線の風景の中に自分がいるのだと実感できる。

「わ鐵」の「わ」に込めた思い「輪」「和」「話」「環」

 かなり離れたところにある橋の上から人が手を振っているのが見え、乗客も手を振って応える。「『わ鐵』の「わ」には、私たちの思いを込めて四つの漢字をあてています」と樺澤社長。

 まず、沿線地域との連携、チームワークを表す「輪」。そして「みんなが平和で仲良く、和やかな気持ち」の「和」。この二つの漢字は、駅や列車のスタッフの笑顔、次々と手を振ってくれる沿線の人たちを見ていると実感できる。

 トロッコわっしー号は、景色のよい場所では徐行してくれる。白御影石の岩々と透明感のある川の水のコントラストが、じっくりと楽しめる。途中、全長5.2キロのトンネルを走行している間は、天井部のイルミネーションがピンクや青色に変化し、乗客を退屈させるということがない。

廃線ツアーで歩いたトンネル。随所で非日常の光景に出会う
廃線ツアーで歩いたトンネル。随所で非日常の光景に出会う

 三つ目の「わ」は、話題づくりと情報発信で地域活性化を目指す「話」。マスコットキャラクター「わ鐵のわっしー」のグッズを次々売り出し、「うた声列車の旅」、現在の終着駅間藤(まとう)から旧足尾本山駅までの廃線跡をたどるツアーなど。さまざまな話題を生み出してきた樺澤社長は、就任から10年たったのを区切りに、6月28日に退任した。

 樺澤社長が「退任後も当面は続ける」としているのが、終着駅間藤から先の「廃線跡を歩こうツアー」のガイドだ。間藤から約1.9キロ、かつての終着駅・足尾本山の近くまで歩く。一部の区間は一般道を迂回(うかい)しながら、トンネルや鉄橋を歩く「非日常」の体験だ。鉄道トンネルの内部を、懐中電灯で足元を照らしながら進み、丸い形に光る出口を目指すのは、ちょっとした冒険である。

 廃線ツアーは旅行代金5500円で往復運賃・トロッコ整理券・足尾銅山観光入坑料を含む。廃線歩きの後には、かつて鉱毒問題もあった足尾銅山の歴史を学ぶ。

「列車のレストラン清流」は、東武鉄道の特急「けごん」の車体を利用している。写真は「やまと豚弁当」(1030円)
「列車のレストラン清流」は、東武鉄道の特急「けごん」の車体を利用している。写真は「やまと豚弁当」(1030円)
神戸駅ではトロッコ列車の乗客にコーヒーやカレーパンを販売していた
神戸駅ではトロッコ列車の乗客にコーヒーやカレーパンを販売していた

 間藤駅から普通列車で折り返し、神戸(ごうど)駅で途中下車。「列車のレストラン清流」で、名物駅弁「やまと豚弁当」を注文した。風味抜群の豚肉を食堂車のような店内で賞味する。もとは東武鉄道の特急車両だったというから、駅弁を食べるには最高の場所だ。

 駅弁のかけ紙には、四つの「わ」が印刷されていた。四つ目の「わ」は「環」。「鉄道と環境、地域を大切にする心」とあった。この駅弁も「作り置き」はしないのがポリシーだといい、待たずに食べたい場合は、電話予約をすることもできる。

 レストランの窓越しに、トロッコわっしー号が入線するのが見えた。急いで店を出て、近くに行くと、なんとも懐かしい光景が目に入った。レストランのスタッフたちが、カレーパンやコーヒーを載せたお盆を抱え、トロッコ車両の窓越しに、乗客相手に販売しているではないか。電車の窓が開かないのが当たり前になった昨今、こんな情景はめったに見ることができない。窓ガラスがないのだから、窓越しに買うのも簡単だ。これぞ、今は失われた、古き良き時代の旅情だ。不意に、30年以上前、金沢駅ホーム上で、立ち売りの販売員から購入した「あんころもち」を思い出した。列車の窓を開けたかどうかは記憶にない。

 わたらせ渓谷鐵道の駅舎や橋梁(きょうりょう)など38施設が国の登録有形文化財となっている。樺澤社長によれば、補修には細心の注意を払い、神戸駅の屋根のコケもあえて残したままにしているという。古き良き鉄道旅の情緒が懐かしくなったら、またトロッコわっしー号に乗りに来ようと思った。

 文/藤原善晴

わたらせ渓谷鐵道「トロッコわっしー号」

【運行区間】桐生―間藤
【運行日】11月までの土曜、休日が中心
【料金】運賃のほかにトロッコ整理券(510円)が必要
【予約方法】トロッコ整理券は、乗車日1か月前の11時から、相老・大間々・通洞の各駅窓口などで発売
【問い合わせ】大間々駅/電話0277・72・1117

(月刊「旅行読売」2019年8月号から)

◆月刊「旅行読売」
 1966年創刊。「読んで楽しく、行って役立つ旅の情報誌」がモットー。最新号や臨時増刊などの案内はこちら

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669725 0 たびよみ 2019/07/04 05:20:00 2019/07/04 14:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190701-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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