<2>中学1年の次女 車衝突の巻き添えに

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小学校の卒業式の記念撮影で、父親の隣でポーズを決める佐藤有希さん(左)(2005年3月、佐藤逸代さん提供)
小学校の卒業式の記念撮影で、父親の隣でポーズを決める佐藤有希さん(左)(2005年3月、佐藤逸代さん提供)
中川署で講演する佐藤逸代さん=徳澄奏撮影
中川署で講演する佐藤逸代さん=徳澄奏撮影

 スクリーンに小学校の卒業式で記念写真に納まる親子の姿が映し出された。父親の傍らでピースサインをする少女はもうこの世にいない。撮影の4か月後、交通事故に巻き込まれて命を落とした。

 「13年前に思い描いていた家族像が全く違ったものになってしまいました」

 中川署で3月7日に開かれた講演会で、佐藤逸代さん(55)は次女・有希さんを失ってからの苦悩の日々を声を詰まらせながら語り出した。

 

 2005年7月17日朝、中学1年の有希さん(当時12歳)は同級生とソフトテニス部の試合会場に向かう途中、名古屋市名東区の自宅そばの国道302号交差点で信号待ちをしていた。そこへ赤信号にもかかわらず乗用車が進入。その車と出合い頭で衝突した別の乗用車が弾みで歩道に乗り上げ、有希さんたちをはねとばした。

 佐藤さんが連絡を受けて病院に駆けつけると、全身が腫れ上がって動かない有希さんの前で、医師に「最善を尽くしたのですが……」と告げられた。「うそ、なぜ死亡宣告をするの」。目の前の現実を受け入れられなかった。

 自宅に閉じこもり、有希さんが事故直前に立ち寄ったコンビニ店から8分間の防犯カメラ映像をもらい何度も再生した。友人と無邪気に笑い合う有希さんの姿を見て、「お菓子でも買って、店を出るのがもう少し遅れていたら……」と嘆いた。

 「一番苦しいのは自分なんだ」と一人で悲しみに沈み、告別式翌日から普段通りに学校に通う2歳上の長女の背中を「何で平気なの?」とにらみつけ、有希さんの名前が消された住民票を役所から持ち帰ってきた夫に「信じられない」と当たり散らした。

 事故を起こしたドライバーの女性は「信号は青だった」と言い張り、謝罪をしなかった。業務上過失致死傷罪に問われた女性は結局、裁判所に赤信号の交差点に進入したと認定されて有罪判決を受けたが、心がすり減るばかりだった。

 

 「生きていてもしょうがない」と思い詰めていた頃、有希さんが事故2か月前の母の日に書いてくれた手紙が目にとまった。「ママの笑顔が大好きだよ。いつまでも笑顔でいてください」。顔を上げてよ、と励まされた気がした。

 同じ頃、女性に対する慰謝料請求訴訟で提出した意見陳述書に長女が「私だけでも強くないと家族が壊れてしまうと思った」と記しているのを見て、長女が無理に平静を装っていたことを知った。自分のやり場のない怒りを夫が黙って受け止めてくれていたことにも気づいた。

 娘や夫がそれぞれの形で悲しみを抱えていたことを知った時、「家族の中でも苦しみ方は違う」という思いが芽生えた。事故後に知り合った事故遺族の勧めもあり、10年5月に「あいち交通犯罪死ZEROの会」を設立。全国各地で事故の悲惨さや命の尊さについて講演したり、同じ境遇の遺族に寄り添っては自らの経験を伝えたりしている。「私は家族からたくさん教えられた。遺族はいろんな痛みを抱えて生きていることを知ってほしい」。同じ思いをする家庭がこれ以上増えないことを祈っている。

 

■死亡事故の6割 交差点で

 県警によると、県内では昨年1年間、車の信号無視が原因の交通事故で前年より9人多い19人が亡くなった。

 また、交差点内と交差点付近での交通死亡事故件数計121件は全体の61・7%を占め、全国平均の45・9%を大きく上回る。その理由について、県警の担当者は、自動車保有台数が全国1位の本県では、多くの車を通過させるために信号の切り替えのサイクルが長いことを挙げ、「信号無視には『赤信号になる前に早く行かなければ』というドライバーの心理が働いている」と分析する。

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436273 0 輪禍を防げ~脱ワースト~ 2018/04/13 17:00:00 2018/04/13 17:00:00 父の隣でポーズを決める有希さん(左)(佐藤逸代さん提供) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20180413-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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