<4>ながらスマホで追突 「殺人だ」涙の妻

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被害者家族の意見陳述書(画像は一部修整しています)
被害者家族の意見陳述書(画像は一部修整しています)

 このまま何もせず終わらせたら夫の死が無駄になる――。

 「ながらスマホ」のトラックに追突されて夫を亡くした一宮市の女性(46)は1月中旬、すがるような思いで、同じ市内に住む則竹崇智たかとしさん(47)と連絡をとった。スマホ向けゲーム「ポケモンGO」をしていたトラックによる事故で小学4年の次男(当時9歳)を奪われた則竹さんは1年前、被害者参加制度を利用し、裁判でながらスマホへの怒りを訴えていた。

 則竹さんが裁判で読み上げた意見陳述書を見せてもらうと、そこにつづられた一言一句が自身の思いと重なった。「こんな危険な運転がなぜ過失運転とされるのか。私たちのような思いをもう誰にもさせたくない」。もだえ苦しんだ日々を振り返り、11ページに上る陳述書を一気に書き上げた。

 

 昨年11月21日朝、女性の夫、水谷勇二さん(当時44歳)はいつものように「行ってきます」と家族に声をかけて自宅を出ると、乗用車を運転して、大阪の取引先に向かった。

 名神高速道路に入り、滋賀県多賀町で渋滞につかまった時だった。大型トラックに追突され、車は前方のトラックと挟まれて大破。さらに炎上して、遺体が収容されたのは火が消し止められてからだった。

 遺体はDNA鑑定の末、6日後にようやく勇二さんと確認された。自宅に帰って来た遺体はひつぎの中で布団を掛けられ、対面さえかなわなかった。家族は「パパは殺されたんだ」と絶句し、わずかに形をとどめる勇二さんの右膝をさすって荼毘だびに付した。

 大型トラックの男性運転手(50)への捜査では、運転手が事故直前、スマホのアプリを起動して目的地までの距離を調べていたことが判明した。その結果、約10秒間も前方を見ずに時速約80キロで200メートル以上走行。勇二さんの車の2・6メートル手前で気づき、急ブレーキをかけたが間に合わなかった。

 女性は検事に呼び出された際、「脇見運転にしか問えず、裁判では執行猶予が付く可能性がある」と言われたが、納得できなかった。「誰が何と言おうとこれは故意的な『殺人』だ」。直接、裁判官に思いをぶつけることを決意した。

 

 自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)に問われた運転手の裁判は今年1月、大津地裁で始まった。女性は「世間はクリスマス、お正月を家族団らんで楽しい時を過ごしているのに我が家のそこには夫がいない」と意見陳述書を読み上げ、「ながらスマホの危険性・厳罰化が騒がれる中、被告はスマホ操作を続けた」と糾弾した。涙ながらの訴えは30分間に及び、結審した。

 検察官は禁錮2年を求刑したが、裁判官は「ながらスマホの危険性を過小評価しており、軽過ぎる」として、求刑を上回る禁錮2年8月の実刑判決を言い渡した。そして、「ハンドルを握る全ての人々がほんの少し想像力を働かせれば、ながらスマホは根絶できる」と異例の説諭を加えた。

 女性は自らの訴えが裁判官に通じたと感じている。運転手が控訴したために決着はついていない。だが、「今回の判決は第一歩。加害者にも被害者にもならないよう事故は人ごとではないことを伝えたい」と力を込めた。

■運転中の携帯使用 昨年4万件摘発

 県内では昨年1年間、運転中のスマホ画面の操作などが原因で27件の人身事故が発生。過去5年間では死亡事故も3件起きた。道路交通法では運転中に携帯電話で会話したり画面を注視したりすることを禁じており、県警は昨年、4万2719件を摘発した。

 内閣府の昨年8~9月の世論調査によると、運転中の携帯電話使用について、86・3%が「処罰されると知っていた」と回答する一方、36・5%が「使用したことがある」と答え、違反と知りながらも使ってしまう傾向がわかる。時速80キロの車は2秒間で44・4メートル進むとされ、県警は「画面に意識が集中すると、周囲の危険に気付かない」と注意を呼び掛けている。

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16749 0 輪禍を防げ~脱ワースト~ 2018/04/15 15:00:00 2018/04/15 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180415-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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