<6>デマンド交通広がる

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山間部の集落を巡る移動販売で買い物をする地域のお年寄りら(6月29日、新城市池場で)=原田拓未撮影
山間部の集落を巡る移動販売で買い物をする地域のお年寄りら(6月29日、新城市池場で)=原田拓未撮影

 老人保健施設に入所している夫を見舞おうと、西尾市吉良町の女性(77)は6月24日朝、自宅にタクシーを呼び、最寄りの名鉄西尾線・上横須賀駅に向かった。5分ほどで到着すると、通常なら約1000円の乗車料金がかかるところを、300円だけ支払って降りた。

 女性は今春から、市が民間委託して運行する乗り合いタクシー「いこまいかー」を利用している。市民なら自宅から最寄りの駅・バス停まで一律300円で乗せてくれる。

 女性はこれまで、自らハンドルを握り、通院や買い物などを済ませていた。しかし、今年1月、子供をはねそうになり、運転免許を自主返納。すると、外出が面倒になり、ベッドに寝そべってテレビを見てばかりの生活を送るようになった。そんな折、知人から「いこまいかー」を教わった。家庭のある長女に車で病院の送り迎えを頼むのは心苦しかっただけに、「自分でできることが増えたので、とても助かる」と喜ぶ。

 

 利用者の予約を受け、指定場所から目的地まで低額で送迎する「デマンド交通」は全国で広がっている。県内では今年4月現在、13市町村が導入。公共交通網が手薄な地域で、免許を手放した高齢者の新たな足として期待がかかる。

 西尾市の場合、一色と幡豆の両地区を中心とした市南部で人口が減少している。2004年には一帯を走る名鉄三河線・碧南―吉良吉田駅間(16・4キロ)が廃線。2年後には名鉄西尾線の2駅が廃止された。残る鉄道・路線バスも全て赤字で、存続が危ぶまれている。一方、同市は1世帯当たりの自家用車保有台数が全国791市のうち2番目に多い1・776台(自動車検査登録情報協会調べ)と車への依存が進む。

 そこで、市は12年10月、代替の交通手段として「いこまいかー」の運行を開始。利用者は年間1000人前後で、うち7割は高齢者が占める。今年3月からは一部地域で、自宅からスーパーや病院などへの送迎も始めた。市の担当者は「日常生活に不便がないよう交通網を整備し、高齢ドライバーの免許返納につなげたい」と話す。

 

 民間企業も、車がないと日々の買い物に困る高齢者の支援に動き出している。

 セブン―イレブン新城バイパス店は5月から週に2回、店から約30キロ離れた新城市池場地区に移動販売車を走らせ、住民に食料品や日用品を届けている。

 同地区は山間部にあり、住民約70人のほとんどが高齢者。近くにJR飯田線・池場駅があるが、電車は1時間に1本あるかないかでめったに乗らない。冬場には市街地に向かう国道が凍結してスリップ事故が多発するといい、パンを購入した男性(73)は「年をとって、運転が危ないなと思うことが増えた。コンビニが向こうから来てくれるなら、もうハンドルを握らなくてもいいかな」と歓迎する。

 高齢ドライバーの問題に詳しい立正大の所正文教授(産業・組織心理学)は「デマンド交通は自治体の福祉事業として運営されることが多く、財政が豊かでない自治体には限界がある。車を持たない高齢者を手助けする社会貢献事業がビジネスとして成立するよう、知恵を絞る必要がある」と話している。

(第2部「高齢ドライバーの今」おわり。梶浦健太郎、山下智寛、林興希、藤井有紗、岡花拓也、徳澄奏、小笠原綾理、萬屋直が担当しました)

無断転載禁止
33863 0 輪禍を防げ 第2部 2018/07/28 05:00:00 2019/02/12 20:07:43 山間部の集落で移動販売を行う「あんしんお届け便」で買い物をする地域の住民ら(29日午前11時16分、愛知県新城市で)=原田拓未撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180721-OYTAI50013-T.jpg?type=thumbnail

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