(3) 愛知県の伝統野菜「愛知早生ふき」は、その名の通り生育が早く、時期によっては丈が2か月で1メートル以上伸びます。香りが良く、ほろ苦さとシャキシャキとした歯ごたえが特徴で、煮物などに使われます。
「愛知早生ふき」を鎌で切り取り、収穫する平松さん(愛知県知多市で) 江戸末期、現在の東海市加木屋町で自家用に栽培されていたものが伝わったとされます。全国で栽培されているフキの多くは、この愛知早生ふきです。
国の統計によると、2019年の愛知県のフキ出荷量は約3400トンで日本一。2位の群馬県(約890トン)を大きく上回りました。一方、作付面積は70ヘクタールで、群馬県の97ヘクタールを下回ります。これは、栽培方法が異なるためです。
収穫後は大きさをそろえて葉を落とし、袋に詰めて出荷する。大きさや太さで規格が異なる(愛知県東海市で) フキの本来の収穫時期は4月ごろで、群馬県では収穫は1シーズン1、2回。これに対し、愛知県では10月以降、同じ株から3回も刈り取ります。
知多半島では、種となるフキの地下茎を6月から2か月ほど冷蔵庫で保管して人工的に冬を体験させます。そして、8月に植え付けて秋に収穫します。また、ビニールハウスで温度を調整するなどしながら栽培することで、約8か月にわたり収穫ができるそうです。
東海市では都市化が進んで農地が減り、農家は周辺地域で栽培を始めています。市内の農家平松直樹さん(51)もその一人で、「フキはいろんな料理で楽しめる野菜。水やりなど世話をしっかりやれば、それに応えてくれる」と、愛情を込めて栽培しています。(文・写真ともに林陽一)