酒米の実り《上》 秋田のコメ5種で醸す

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「秋田酒こまち」が入った袋を見ながら、酒米への思いを語る山本社長
「秋田酒こまち」が入った袋を見ながら、酒米への思いを語る山本社長
5種類の酒米を使った純米大吟醸の「秋田ロイヤルストレートフラッシュ」
5種類の酒米を使った純米大吟醸の「秋田ロイヤルストレートフラッシュ」

 地域に根ざした酒米を使った日本酒が人気だ。県内では、県由来の酒米を活用する酒蔵が広がり、新品種を開発する動きもある。県内の酒米の取り組みの今を紹介する。

 「秋田ロイヤルストレートフラッシュ」。5枚のトランプがあしらわれたユニークなラベルの日本酒が3月、県内外の酒屋に並んだ。

 五つの酒米を組み合わせて造り、トランプのポーカーで最も強い組み合わせにたとえた。手がけたのは「山本合名」(八峰町)。「秋田に由来する五つの酒米で、秋田の酒を表現したかった」と山本友文社長(48)は語る。使用するコメは一般的に1、2種類で、5種類はまれだ。

 5種類は、1960~70年代の県内主要品種「改良信交」、78年に長野で品種改良され秋田で多く栽培される「美山錦」のほか、「吟の精」は91年、「美郷錦」は99年、「秋田酒こまち」は2001年に、それぞれ秋田で品種改良したコメだ。

 複雑で重さの感じられる個性的な味わいに仕上がり、山本社長は「シンプルな特徴のうちの蔵とは違う味になった」と手応えを感じた。4合瓶(720ミリ・リットル)で2500円と高価格にもかかわらず注文は殺到し、県外を中心に7000本がすぐに売り切れた。

 能代市の農家が改良信交を作ると聞いて、昨秋、新旧5種類の組み合わせを思いついた。酒母やこうじ、3度に分けて入れる仕込み用のコメにそれぞれ異なる酒米を使う。

 県内の酒蔵は兵庫県などの産地から、「山田錦」など全国的に評価の高い酒米を購入することが多かった。昨今の日本酒ブームで、消費者は地域ならではの酒を求めるようになり、酒蔵も地域ゆかりの酒米にこだわる例が広がっている。山本合名も13年の全国新酒鑑評会で県産酒米の酒が金賞を受賞して以降、県産米中心の酒造りに替えた。

 「福禄寿酒造」(五城目町)は、1950年代に選抜された改良信交を、今年初めて「一白水成」の仕込みに使った。近年ほとんど使われておらず、生産はわずか。知り合いの大潟村の農家に頼み込み、1500キロを全量仕入れた。

 渡辺康衛社長(39)は、「こうじ作りを見直したいと考えていた時、かつての秋田の酒米を使ったらどうなるかと思ったのがきっかけ」と話す。米が固く、味が出にくいため、味が薄くなり、雑味が出るリスクがあったが、水を多めに吸わせるなど工夫し、想像以上にいい酒ができたという。「スッキリとして、酸味とコメの味わいのバランスが良い」と渡辺社長。11月頃に火入れをして出荷する。

 今はほとんど生産されていない食用米「陸羽132号」を使うのは「秋田清酒」(大仙市)。地元にあった農事試験場陸羽支場(現在は農研機構の研究拠点)で1921年に品種改良された。寒さに強く、昭和初期から戦後まで県内で最も多く作付けされ、昭和初期の東北飢饉ききんを救ったとされる。宮沢賢治が冷害に悩む岩手県で普及させたコメとしても知られる。

 「幻のコメ」を知ってもらおうと、地元農家に栽培を依頼して使い始めた。複雑な香味とシンプルな後味で人気が高いが、扱うコメの量が決まっており、生産を増やしたくても増やせない状況だ。

 全国的に低価格の普通酒の消費量が減る一方、吟醸酒など高級酒の消費は増えている。民間調査機関「酒文化研究所」(東京)代表の狩野卓也さんは、「多様な酒の中から購入するのに、消費者は選ぶ理由が必要。地域にゆかりがある酒米などストーリーのある酒は訴えやすく、消費者に歓迎されている」と分析する。

◆「秋田酒こまち」全国5位(昨年生産量) 栽培は県内のみ

 農林水産省の速報値(今年3月末)によると、酒米の生産量が全国で最も多いのは「山田錦」で3万8300トン。どっしりとした味わいで、兵庫県などで生産されている。毎年行われる全国新酒鑑評会の金賞受賞酒にも多く使われている。

 次に多いのは淡麗な味わいの「五百万石」で、新潟県や富山などが主産地。全国的には山田錦、五百万石の生産量が圧倒的だが、「倒れやすい」「病気に弱い」「寒冷地に向かない」などの特徴があり、県内ではほとんど生産されていない。

 長野県で品種改良された「美山錦」は、全国で3番目で、寒さに強く、秋田県内でも生産されている。100年以上の歴史がある「雄町」は岡山県で選抜され、全国4番目。

 一方、秋田県の主要な酒米品種「秋田酒こまち」は全国5番目の生産量で、昨年は2417トン。県内だけで栽培されており、背丈が短く、倒れにくい。上品な甘みとうまみ、軽快な後味が特徴だ。県由来のコメはほかに、「改良信交」や「吟の精」「秋の精」「美郷錦」「ぎんさん」などがある。

無断転載禁止
39750 0 美酒のみなもと 2018/09/04 05:00:00 2018/09/04 05:00:00 日本酒を造るために用意された秋田酒こまち(手前)。山本友文社長は造る酒のほとんどを県内産の酒米で醸造している(29日、八峰町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180904-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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