酒米の実り《中》 同品種 土地ごと違う味

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新政酒造が無農薬栽培に取り組む水田では、しっかりと穂が実っている(7月30日、秋田市河辺岩見で)
新政酒造が無農薬栽培に取り組む水田では、しっかりと穂が実っている(7月30日、秋田市河辺岩見で)

 酒米品種だけでなく、酒米が作られる土地や作り方にもこだわる蔵が出てきた。

 同じ品種の酒米を使い、ほかの条件をそろえた上で、水田の場所ごとに別々に醸造する取り組みを2014年から行っているのは「栗林酒造店」(美郷町)だ。

 ワインの本場・フランスでは、同じブドウ品種でも、気候や土壌によって異なる味わいになる「テロワール(土地ならではの香りや味わい)」を楽しむ文化がある。ワインも好きな栗林直章社長(50)は、酒米でも、風土の味が出せるのではないかと考えた。

 きっかけは、酒蔵のある自治体と同じ名前を持つ酒米「美郷錦」との出会い。県内で1999年に品種改良され、膨らみのある豊かな味わいで吟醸酒に向くが、収量が少なく、倒れやすいため、生産者が少なかった。町などの協力で、生産農家を探したところ、町内で数戸が名乗りを上げた。

 ところが、同じ町内でも、日照時間が長く、日中の気温が高い平野部の金沢西根地区と、冷たく清らかな水が流れ、気温も低めの山裾の六郷東根地区では生育環境が全く違うことに気付いた。栗林社長は、仏ブルゴーニュを訪れた経験から、土地ごとに別々に日本酒を醸造するアイデアを思いついた。

 どれほどの違いが出るか、半信半疑だったが、平野部ではきりりと引き締まった味に、山裾の地域ではふっくらとまろやかな口当たりに仕上がった。酒販店などからの反応も良く、県外からの客も多く訪れる飲食店でも飲み比べで提供され、好評だ。

 「No.6」などで全国的に人気を誇る新政酒造は、昨年から、無農薬の酒米作りに挑戦している。秋田市河辺岩見の山あいにある農村集落「鵜養うやしない」の水田では7月下旬、元気よく背を伸ばす稲が広がっていた。秋田酒こまち、美山錦、陸羽132号などを育てている。

 2009年から全ての商品を、新政が誇る最古の酵母「6号酵母」で生産する。酵母の風味を生かすため、醸造用乳酸などの添加物を入れない酒造りに取り組んでおり、酒米も農薬を使わない酒米を使いたいと考えている。

 無農薬栽培は、病気や虫が付きやすく、雑草がはびこりやすい。昨年は穂が実りにくくなる「いもち病」が発生した。それでも5トンほど収穫できた。収穫した米を使った酒は秋以降に販売される予定だ。昨年から集落に移り住んで栽培に取り組む同社の古関弘さん(43)は「どんな酒になるか楽しみ」と期待を込める。

 県内でも酒造会社自らが米作りに取り組む例はあるが、無農薬での栽培は珍しい。古関さんはさらに今年、土壌に肥料を入れない栽培も試みた。病気の発生なども肥料が原因ではと考えたのだ。今年もいもち病が発生したが、ほとんどの水田でしっかりと穂が実っている。

 酒米の開発にも携わった県総合食品研究センター(秋田市)の高橋仁センター長は、「日本酒が多彩になるなかで、消費者は米の作り方にも興味を持ち始めた。米の栽培環境を想像しながらお酒を飲みたいと考えている人が増えているのではないか」と話す。

無断転載禁止
39910 0 美酒のみなもと 2018/09/05 05:00:00 2018/09/05 05:00:00 古関さん(左)の説明を聞きながら稲の成育状況を確認する杉山教授(右から2人め)(7月30日) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180905-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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