現場は今《上》 老朽インフラ 廃止も

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解体作業が始まった上小阿仁橋(12日)
解体作業が始まった上小阿仁橋(12日)

 県内に本格的な積雪が観測された今月中旬、上小阿仁村・羽立集落の村道から幹線道路である県道へつながる「上小阿仁橋」(全長約120メートル)の両端に「車両通行止」の立て看板が置かれ、解体工事が粛々と進められていた。

 橋は日中戦争が始まった1937年の完成で、老朽化が進み、国土交通省が2015年に点検した結果、「緊急対策が必要」との判定が出た。しかし、管理する村には財政難から橋を維持・補修する余力はなく、橋を利用する人口も減って費用対効果が見合わないことから廃止が決まった。

 「単に賛成したわけではない。諦めた上での賛成だった」。羽立集落の代表、武石新太郎さん(71)は無念の表情を浮かべた。

 村が昨年10月から複数回開いた住民説明会では、住民から橋を新設するなどして維持するよう求める声が相次いだ。集落から橋を渡ると病院行きのバスの停留所があり、住民らは廃止に反対した。一方、村側は「修繕は費用面で不可能。新設もできない」と説明。68世帯が点在する集落のために橋を架けることに難色を示し、最後は住民側が折れる形で収束した。

 上小阿仁橋と同様に国交省から「緊急対策が必要」との判定を受けた県内市町村管理の橋はほかに9か所あり、人口減などを理由に4か所の廃止が決まった。人口減は、公共のインフラや施設のあり方に抜本的な見直しを迫る要因となっている。

 湯沢市が11月上旬に開いた意見交換会。約20人の住民らを前に、市は約450の市有施設の半数が築30年以上と老朽化が進んでいる現状を示した上で、全施設をこのまま温存した場合、今後40年間にかかる維持補修費として1214億円が必要になるとの試算を明らかにした。

 年平均で約30億円の負担で、今年度の市の一般会計総額(約270億円)の1割に相当する巨費が見込まれる。長年、公共施設を利用してきた住民たちも、市の説明に納得するしかなかった。ただ、最寄りの施設が廃止されれば、離れた施設を利用することになるため、住民からは「集約後の交通の便はどうするんだ」といった不安の声が相次いだ。

 人口減に伴い、税収が伸び悩む中、公共施設の整備は、借金なしに賄うことはできない。鈴木俊夫市長は「老朽化に伴い、維持費もかさむ」と危機感を隠さない。市は2040年までに全公共施設を床面積ベースで45%削減する方針で、これを具体化するための再編計画の中間案を、年度内にまとめる予定だ。

 ただ、インフラや公共施設の廃止は、地域バランスを欠けば住民の間に不公平感を生む。自治体経営に詳しい一般社団法人「日本経営協会」(東京都)の川嶋幸夫・専任コンサルタントは「人口減や財政難を理由に廃止もやむなしと押し切るのではなく、住民の理解を得ながら、近隣に代替施設を用意するなどサービスの一定の質を保つ工夫が必要だ」と指摘する。

 全国最悪ペースで進む本県の人口減は、県民の暮らし、自治体運営、産業界と様々な現場に影を落としている。脈々と続いた営みを維持するか、縮小するか、厳しい選択が求められた現場の今を追った。

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56328 0 人口減秋田 2018/12/23 05:00:00 2018/12/23 05:00:00 「通行止め」の看板の奥で撤去作業の始まった上小阿仁橋。奥には羽立集落が広がる(12月12日午後2時57分、上小阿仁村で)=伊福幸大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181225-OYTAI50008-T.jpg?type=thumbnail

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