現場は今《下》 事業承継 技と伝統後世に

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 江戸後期の1818年に創業した羽後町の「弥助そばや」。冷たい汁の「冷やがけ」で知られた名物「西馬音内そば」発祥の店として、県内外から来客のある人気店だ。しかし、6代目店主のこん昇一郎さん(75)には跡取りがいない。

 10月15日、秋田市山王の県庁で開いた記者会見。金さんは店の将来を、秋田市を拠点に外食チェーンを全国展開する「ドリームリンク」に託す決断をしたことを表明した。一族経営は途絶えるが、のれんと味を守ることはできる。

 「秋田、そして日本の大切な文化を絶やさない決意だ」。事業譲渡を受ける村上雅彦ドリームリンク社長(56)が胸を張ると、金さんは「200年続いた伝統は自分だけのものではない。これで後世に残せる」と、ほっとした表情を浮かべた。

 民間調査会社「東京商工リサーチ」によると、2017年の県内の社長の平均年齢は63・36歳(全国平均61・45歳)で、47都道府県では2番目に高く、経営者の高齢化は確実に進んでいる。加速する人口減に直面した県内では、あらゆる産業で後継者不在や人材難が深刻化し、中小・零細企業を中心に事業の継続が難しくなっている。

 「これも時代の流れ。事業承継も、新しいあり方なのでしょう」。鹿角市で唯一の酒蔵「かづの銘酒」の5代目だった田村清司さん(68)は、後継者難から事業譲渡をして間もなく1年になる。

 明治初期の1872年に創業した。「千歳盛」「花輪ばやし」「地底の神秘」など香り豊かな銘酒の数々は女性ファンも多い。しかし、転勤族の長男(40)、専業主婦となった長女(38)ともに6代目を継がず、従業員に打診しても、手を挙げる者はなかった。地元で唯一の酒造りの灯を消すまいと、秋田商工会議所の「県事業引継ぎ支援センター」に相談。昨年12月、事業譲渡が決まった。

 かづの銘酒は現在、譲渡先企業の100%子会社「千歳盛酒造」に変わり、取締役に就いた田村さん。長年培った技と経験を基に酒造りの現場に立つその表情は明るい。後継者難に悩む地域の経営者たちへの、事業承継のノウハウ伝授にも力を入れている。

 同センターには14年4月の開設以来、事業承継に関する相談が1140件(昨年度末時点)寄せられている。公認会計士や税理士らが相談、支援にあたり、マッチングの成約件数は、初年度は1件だったが、3年目の16年度には16件、17年度は20件と、着実に実績を上げている。

 同センターの河田匡人統括責任者は「従業員数が10人に満たない小規模な企業で後継者難が目立つ。地域に根ざして確立された『ここにしかない』という技術やサービスを維持し、後世に引き継ぐには事業承継が果たす役割は大きい」と強調する。

(この連載は、森山雄太、寺口信二、桜井詠巳、佐藤亮、伊福幸大が担当しました)

無断転載禁止
56322 0 人口減秋田 2018/12/26 05:00:00 2018/12/26 05:00:00

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