若手蔵元 結集し醸す

《5》 低迷越え 美酒王国

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脈々と続く「美酒王国」では、各蔵で個性豊かな酒造りが繰り広げられている
脈々と続く「美酒王国」では、各蔵で個性豊かな酒造りが繰り広げられている
NEXT5が東京都内で開いたイベントで、酒を味わう来場者(左)
NEXT5が東京都内で開いたイベントで、酒を味わう来場者(左)

 美酒王国――。古来、酒造りが盛んな秋田はこう呼ばれる。平成の30年余は、「王国」であり続けるための試練の時代でもあった。

 バブル景気に日本中が沸いた昭和の終わり。風味豊かなワインやシャンパンがもてはやされ、重たい飲み口の日本酒は「オジサンの飲み物」というイメージから消費が低迷。国税庁によると、県内でも1989年(平成元年)には70年代後半の消費量の約3割減となり、酒蔵の廃業も相次いだ。

 郷土の酒を守るため、県が動いた。県醸造試験場は「香りと味を楽しめる酒造り」を目指して酵母の研究を進め、90年に、全国に先駆けて「秋田流花酵母」を開発した。

 この酵母で醸す酒は、爽やかで後味が軽い特徴を持つ。翌91年の全国新酒鑑評会では、県内25の蔵元が計26点で金賞を獲得。都道府県別の受賞蔵元数で全国1位と、さっそく結果を出した。

 酒米の開発も進んだ。県農業試験場などが88年、全国を席巻する酒米「山田錦」を追い越すという目標を掲げた。93年の「吟の精」を手始めに2004年までの間、「秋の精」「美郷錦」、今の県産主力品種「秋田酒こまち」が相次いで農林水産省に品種登録された。さらに10年から、山田錦を母に持つ2種類の酒米の交配を重ねた結果、「百田ひゃくでん」が完成。昨年6月、品種登録の出願にこぎ着けた。

 「地元の酒蔵のブランド力向上につながる」。その一念で、酒米の開発に20年以上携わっている上席研究員の川本朋彦さん(52)。「百田には芳醇ほうじゅんで膨らみのある後味がある。山田錦を超えられる」と手応えを感じている。

 酵母に酒米。うまい酒造りの土台が固まり、売り込みを強化する動きも出てきた。県酒造組合は1999年からほぼ毎年、東京都内で一般向けに「秋田の酒を楽しむ会」を開き、県内各地の銘酒と郷土料理を提供。チケットは毎回完売する人気となっている。2011年には県内酒販店の経営者グループ「酒和从しゅわっと」が発足し、酒蔵と提携して造ったオリジナルの酒を各店で販売するなど、工夫を凝らす。

 若い造り手たちも躍動する。10年に、当時30~40歳代だった若手の蔵元5人が「NEXT(ネクスト)5」※という集団を結成した。

 酒造りのノウハウや技術は本来、各蔵元の極秘事項だ。しかし彼らは「各蔵の技術が高まり、品質のいい酒造りにつながる」と、互いの持ち味をさらけ出し、技を磨き合う。斬新な取り組みで全国から注目される存在となった。

 マーケティング戦略でも異彩を放つ。昨年は若者らに人気の漫画のストーリーと関連づけた純米大吟醸を仕込み、11月にオリジナルの酒器とセットで7000本を発売した。さらに関連イベントを12月1日、東京都内のホテルで開催。集まった愛好家ら約200人に酒を振る舞い、秋田の酒造りをアピールした。

 「NEXT5の活動をきっかけに『秋田の酒』の認知度が高まりつつある」。日本酒と食のジャーナリスト山本洋子さん(57)は、秋田の酒造りの潜在力に期待する。試練を乗り越え、厚みを増した美酒王国が新たな歴史を刻む。

(桜井詠巳)

【※NEXT(ネクスト)5】 「秋田醸造」(秋田市)、「新政酒造」(同)、「栗林酒造店」(美郷町)、「福禄寿酒造」(五城目町)、「山本合名」(八峰町)の蔵元5人によるグループ。麹(こうじ)や酒母を変えるなどして毎年1本、共同で酒造りに取り組んでいる。

無断転載禁止
61428 0 次代へ 2019/01/08 05:00:00 2019/01/08 05:00:00 伝統を守り日本酒製造に取り組む酒蔵(12月20日午前9時15分、横手市で)=桜井詠巳撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190108-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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