自動運転 熟練の腕に迫る

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通行人を検知し5メートル手前で停止した完全自動運転のバス=石川奈津美撮影
通行人を検知し5メートル手前で停止した完全自動運転のバス=石川奈津美撮影

 ハンドル脇の赤いボタンを押すと、運転席に誰もいないマイクロバスがゆっくりと走り出した。交差点にさしかかると減速しながらハンドルが勝手に回る。しばらく直進したかと思うと急停止し、体がつんのめった。運転席のモニター画面には「障害物注意!」の警告が点灯。正面を見ると、約5メートル先に人が立っていた。

 柏市の東京大柏キャンパスで行われている完全自動運転バスの試験走行。東京ドームの半分にもなる約2ヘクタールの屋外の実験場はアスファルトで舗装され、信号機や横断歩道、踏切など実際の交通環境が再現されている。

 バスの頭脳や目の役割を果たすのは、車体に取り付けられた様々なアンテナやセンサーだ。

 屋根にある半球状のアンテナは全地球測位システム(GPS)情報を取得し、カーナビのように走行経路を指定する。大雨で視界不良になったり、降雪で道路の白線が見えなくなったりしても走行が可能だ。これに加え、携帯電話の電波を受信する棒状の2本のアンテナが、GPSの位置情報で生じる数メートルの誤差を10センチ以下にまで補正する。

 車体の前方や側面に取り付けられたセンサーはレーザーを照射し、約50メートル先の人や物を検知する。衝突を回避する一方、ギリギリまで寄せることもできる。バス停に到着した際の縁石と車体の隙間はわずか4センチだ。

 技術開発を手がける同大発のベンチャー企業「先進モビリティ」技術部主任の安藤孝幸さん(34)は「熟練の運転手並みの走行が可能」と説明する。

 こうした技術の利用が期待されている分野の一つが、過疎地の高齢者や子供といった車の運転ができない「交通弱者」への対策だ。政府は自動運転車の実用化に向けた工程表で、2020年までに、過疎地など限定した地域で無人の自動運転車による輸送サービスの実現を掲げている。

 交通弱者は今後、県内でも増加が見込まれる。65歳以上の高齢者が県内人口に占める割合は、15年の25・9%から、45年に36・4%と大幅な伸びが予測される。免許を自主返納した高齢者は17年に約1万9000人と、12年の3・7倍に上った。

 自治体は交通弱者対策として、「コミュニティーバス」や乗客のデマンド(要望)に応じてタクシーなどに相乗りする「デマンド交通」の導入に力を入れている。ただ、人件費がネックとなり、運行日数や時間には限界がある。完全自動運転なら、いつでも無人の車両を走らせることができるため、より住民の需要に即した運行が実現する。

 東京大で自動運転の研究に取り組む須田義大教授は「自動車産業は100年に1度の大変革の時代を迎えている。産官学が連携して人々の生活をより豊かにする研究を進めていきたい」と意気込む。多くの人の夢をのせて、バスは実験場を走り続ける。

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23280 0 ちばテック 最前線 2018/05/24 05:00:00 2018/05/24 05:00:00 人を検知し5メートル手前で停止した完全自動運転のバス(4月27日午後3時59分、柏市で)=石川奈津美撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180524-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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