習志野 最後の県勢V

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1975年夏の甲子園決勝で、サヨナラ打で両腕を上げながらホームを踏む越智さん。愛媛の新居浜商を破り、県勢2連覇を果たした
1975年夏の甲子園決勝で、サヨナラ打で両腕を上げながらホームを踏む越智さん。愛媛の新居浜商を破り、県勢2連覇を果たした

 1975年8月24日。夏の甲子園決勝のスタンドは、高校野球ファンであふれかえっていた。スコアボードの後攻には「習志野」の校名。前年の覇者・銚子商に続く県勢連覇をかけて、新居浜商(愛媛)との頂上決戦に臨んでいた。

 習志野の2番打者だった越智修一さん(60)は、アルプス席を埋め尽くす人の山や、うねるような大歓声を鮮明に覚えている。「あんな大舞台で試合ができるだけで幸せだった」

 試合は点の取り合いとなった。序盤リードされたものの、五回に逆転。七回にまた追い付かれた。だが、越智さんは「不思議と負ける気はしなかった」。

 同点で迎えた九回裏。越智さんは先頭で打席に立った。「ストライクがきたらとにかくバットを振ろう」。無心で振り抜いた打球はレフト前に転がった。

 味方がつなぎ、二死一、三塁となった。「いい場面で回ってきたな。羨ましいぞ」。三塁走者の越智さんには、そんなことを考える余裕があった。右翼へ鋭い打球が飛ぶとホームに走り出し、両腕を上げて喜びながら、両足でベースを踏んだ。劇的なサヨナラ勝ちでつかんだ日本一。「これまでの人生であの時ほど喜んだことはない。一生の宝物です」

 閉会式で深紅の大優勝旗を受け取ったのは主将の福田弘俊さん(60)。「優勝なんて全く考えていなかった」

          ○

験を担いで甲子園では決勝までユニホームを洗わなかったという越智さん(市川市で)
験を担いで甲子園では決勝までユニホームを洗わなかったという越智さん(市川市で)
優勝記念の皿を手に当時を振り返る福田さん(松戸市で)
優勝記念の皿を手に当時を振り返る福田さん(松戸市で)

 福田さんたちの2年先輩には、後に阪神の4番となった掛布雅之さんがいた。打撃練習でも、その構えや打球の鋭さは別格だった。入学間もなかったが、「こんな高校生がいるのか」と驚がくした。

 だが、掛布さんが2年生の時に出場した夏の甲子園は初戦敗退。「あの掛布さんがいても勝ち上がれなかった」。部員らは全国のレベルの高さを目の当たりにした。さらに、その2年後には銚子商が全国制覇。ライバル校の躍進に「自分たちの代では甲子園に出場もできないのか」と危機感が広がった。

 とにかく練習するしかなかった。毎朝、始発電車で朝練に向かい、睡魔と闘いながら授業を受けた。照明設備はなく、夜はボールがよく見えるよう石灰をまぶして練習した。

 選手の間では「きつい」「辞めたい」が口癖になっていた。それでも「何だかんだ言っても、みんな野球が好きだった」と福田さん。弱音を吐いても、歯を食いしばって白球を追った。

 迎えた最後の夏。小川淳司さん(現ヤクルト監督)の投打の活躍もあって準決勝でライバルの銚子商を破ると、そのまま県大会を制した。甲子園でも勢いは衰えず、当時の大会記録となる67安打を放って頂点に輝いた。福田さんは「無欲だったのがかえってよかったのかもしれない」と勝因を語る。

          ○

 それから43年。県勢はその後、夏の全国優勝から遠ざかっている。92年に拓大紅陵、2000年に東海大浦安が決勝まで進出したが、あと一歩及ばなかった。

 福田さんは「県勢も優勝する実力は十分にある。また千葉に大優勝旗を持って帰ってきてほしい」と期待を寄せ、こう強調する。「甲子園は実力だけでは勝てない。運も味方につけないとね」。厳しい練習をやり抜いた学校に、野球の神様がほほ笑んでくれると信じている。

 

▽1975年夏の甲子園決勝

新居浜商010200100―4

習志野  000040001X―5

無断転載禁止
31638 0 夏の球譜 高校野球100回大会 2018/07/08 05:00:00 2018/07/08 05:00:00 第57回全国高校野球 決勝 新居浜対習志野 9回裏、習志野・下山田の右前打で3走の越智が還りサヨナラ、新居浜商を破り習志野が2度目の優勝を決める =写真部撮影 【大阪一括登録。使用の際は事実関係を再確認してください】 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180710-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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