海軍無線電信所船橋送信所(船橋市)

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船橋送信所の跡地(手前)。円形道路の内部には団地や公園が広がる(7月25日、本社ヘリから)=山岸直子撮影
船橋送信所の跡地(手前)。円形道路の内部には団地や公園が広がる(7月25日、本社ヘリから)=山岸直子撮影
解体直前の1971年に撮影された送信所の鉄塔群(船橋市視聴覚センター提供)
解体直前の1971年に撮影された送信所の鉄塔群(船橋市視聴覚センター提供)

 船橋市行田に、コンパスで描いたかのような奇妙な円形道路がある。直径約800メートルの円内にはかつて、海軍無線電信所船橋送信所が置かれていた。真珠湾攻撃の決行を告げる暗号電文「ニイタカヤマノボレ一二〇八」はここから発せられ、日本は太平洋戦争に突入した。

 開戦の「Xデー」を1941年12月8日としたことを示すこの電文は同2日、船橋送信所から海軍の全艦艇に、愛知県刈谷市の依佐美送信所から潜水艦に向けて打電された。作戦当日、真珠湾上空に到達し、米軍の迎撃がないことを確信した指揮官機から放たれたのが、「トラ、トラ、トラ」(ワレ奇襲ニ成功セリ)の電文だ。

          ◎

 船橋送信所が開設されたのは大正時代だった15年。高さ200メートルの主塔を中心に、60メートルの副塔18基が円弧を描くように建てられた。当時は最も送信効率が良い配置とされ、敷地を円形としたのはそのためだ。

 日本初の大型無線施設で、東洋一の規模。同年に船橋―米ハワイ間の通信試験に成功し、16年には大正天皇と米大統領の電文交換を行った。23年の関東大震災では東京の被害状況を国内外に発信し、救援に貢献。昭和に入り、高さ182メートルの鉄塔6基などからなる鉄塔群に生まれ変わった。

 「日米無線電信の最初のキーがたたかれるなど、技師の実験場でもあった。日本の近代化遺産に値する場所なのです」。2005年から4年間にわたって送信所の歴史を調べ、「行田無線史」を著した船橋市の郷土史家で、船橋地名研究会長の滝口昭二さん(81)はその価値を語る。

  天にそびゆる 無電塔――。小学校校歌にも、郷土の誇りとして登場した。

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円形道路沿いに残る敷地境界標。刻まれた「海軍」の文字が無線施設の存在を伝えている
円形道路沿いに残る敷地境界標。刻まれた「海軍」の文字が無線施設の存在を伝えている

 しかし今、その姿はない。送信所は1966年に米軍から返還されたが、5年後にすべて取り壊された。記念館を建てて送信装置などを保存し、米国に拠点を置くIEEE(電気電子技術者協会)から歴史的偉業として「マイルストーン」に認定された依佐美送信所とは対照的だ。

 船橋送信所は戦争に利用されたほか、関東大震災時、「朝鮮人暴動」のデマを信じた送信所長が地元住民らに警護を要請した際の発言が、近隣での朝鮮人虐殺事件を誘発したともいわれる。

 滝口さんは、この負の側面が送信所を取り壊した理由の一つだったと考えている。「当時は解体して忘れたかったのかもしれませんが、歴史を消すことはできません。一方で、船橋送信所の跡地は、日本の無線技術の発展を振り返る格好の場所でもあるのです」。送信所の価値が正当に評価され、後世に伝わっていくことが滝口さんの願いだ。

 「行田無線史」を読んだ船橋市の模型制作愛好家、鈴木秀一さん(74)が今年、送信所の姿を市民の記憶に残そうと無線塔などの精巧な模型を作った。滝口さんにはうれしい知らせだった。

 模型は地域の公民館で5月に公開され、10月にも再び市民に披露される。願いは受け継がれていく。(長原敏夫)

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35802 0 遺構を巡る―戦後73年― 2018/08/07 05:00:00 2018/08/07 05:00:00 千葉県版・戦争連載 旧海軍の無線電信所船橋送信所跡。行田公園、行田団地などがある。(25日午後1時22分、千葉県船橋市行田で、本社ヘリから)=山岸直子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180807-OYTAI50007-T.jpg?type=thumbnail

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