完了しました

名古屋市内の百貨店で、顔立ちや身体を計測、分析するサービスが相次いで始まっている。個人の特徴にあったファッションを提案するとともに、店舗を訪れることの魅力をPRする狙いもある。販売員の専門知識を強みに、コロナ禍で遠のく客足を呼び戻そうとしている。(佐野寛貴)
■20項目チェック
ジェイアール名古屋高島屋は今月、女性の顔立ちを八つのパターンから分析し、その人に似合うメイクや洋服を提案する無料サービスを始めた。予約開始から数日で9月中の約100人分の枠が埋まる人気ぶりだ。
専門資格を取得した高島屋スタッフが診断にあたる。顔を正面と横から撮影し、縦横の比率や輪郭、目や唇の形状など約20項目をチェック。顔のパーツや輪郭が丸い「キュート」や、卵形の輪郭で目が大きい「エレガント」などに分類する。
診断結果を踏まえて、販売員が好みを聞き取り、メイクの実演や服選びの相談を受ける。所要時間は約70分。駒田剛士・担当バイヤーは「時間は長めだが、販売員と話して買い物をする楽しさを提供したい」と語る。
■5秒でスキャン

名古屋栄三越も8日から、全身のサイズを計測できる「3Dボディスキャナー」を使ったサービスを始めた。下着メーカー「ワコール」が行っているもので、東海3県では初。無料で体験できる。
計測用の下着に着替えてブース内に入ると、センサーがバストやウエスト、肩幅、股下の長さなど18か所をわずか5秒で計測する。結果は店内のタブレット端末で確認でき、AI(人工知能)が体形に合った下着を提案する。若い女性も気軽に利用できるとして、全国でも好評だという。
同店では、靴や寝具の売り場でも、体形や筋肉量などを調べる測定器を導入している。藤本綾・衣料品担当は「きれいに見せるため、自分のことを把握したいというニーズは強い。来店のきっかけにしてほしい」と期待する。
■健康アドバイス

名鉄百貨店本店で10日にオープンしたセレクトショップ「ハルメク おみせ」には、足の健康状態をチェックできる「足圧測定器」が導入された。
理学療法士と共同開発した「ずっと自分の足で歩ける靴」が目玉商品のひとつで、測定結果を靴選びに生かしてもらう。測定器で足をスキャンすると、左右の足の長さ、幅、親指と小指の角度、体重のかかり方が分かり、販売員のアドバイスも受けられる。
足腰の衰えは、シニア層にとって大きな関心事だ。ハルメクの勝谷進・靴事業開発室長は「靴は、5ミリ違えば履き心地が異なる繊細な商品。姿勢にも直結するので、測定で自分の足への理解を深めてほしい」と呼びかける。
「コロナ前」回復不透明
日本百貨店協会(東京)の集計によると、名古屋市内にある百貨店の2021年1~7月の月別売上高は、19年同月と比べて67~91%で推移している。「コロナ禍前」の水準への回復時期は、依然として不透明だ。
感染状況の悪化は人混みを避ける心理につながり、来店客数の減少に直結する。ネット通販の利用も広がっている。今年8月の名古屋高島屋への来店客数は、262万人。前年同月比で14・4%増となったが、19年同月比では依然として5割を切る。
各百貨店の取り組みは、来店客の相談に乗って助言する、カウンセリングに近いサービスだ。
名古屋高島屋広報は「パーソナル性の高い接客が、百貨店の強みであることには変わらない」と力を込める。