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防犯カメラの使い方が多様化している。カメラの高性能化やIT技術の発達を受け、観光や行動分析、自宅のペット監視など活用の場が広がっている。低価格化も進み、身近な存在になってきた。(中島幸平)
■動画配信 名古屋市中区の観光名所「中部電力 MIRAI TOWER(ミライタワー)」から望む久屋大通公園周辺の様子は、動画投稿サイト「ユーチューブ」でいつでも見られるようになった。
動画は昨年12月上旬から、ミライタワー3階のコワーキングスペース(共有オフィス)の窓に設置された防犯カメラによるものだ。周囲の混雑の様子や周辺の渋滞状況、天気を即座に把握できる。
設置した防犯設備大手トリニティー(名古屋市)によると、動画再生回数は昨年末時点で計約1万1000回だったが、2月15日時点で計8万7000回ほどまで増えているという。動画のテロップでイベントの告知やコロナ対策の注意喚起を促すことも可能だ。
基本利用料は工事費込みで月1万4300円(税込み)から。兼松拓也社長は「コロナ禍で観光地やショッピングセンターなどでの需要が高まっている」と話す。
■高画質化 かつての防犯カメラは白黒で画像が粗く、10メートル離れた車の形がわかる程度だった。最近は数百万画素で車のナンバーや人の表情もはっきりと撮影できる製品が多い。この鮮明な画像をAI(人工知能)などが分析して活用する事業や商品が相次いでいる。
NTTコミュニケーションズ(東京)などは2020年9月から、久屋大通公園の地下広場に設置した防犯カメラの映像を、AIで解析する実証実験を行っている。不審者や迷子、体調不良者の検知や、匿名化したスマホの位置データで来園者の行動を分析している。
デジタルキューブテクノロジー(名古屋市)は昨秋、音声警告ができるAIカメラの販売を始めた。登録していない人や車両の進入をAIが検知すると、「立ち入り禁止です」などと音声で警告する。同時に警備担当者などのスマホに画像も送信できるという。
近畿日本鉄道は昨年11月、名古屋線久居駅(津市)など2か所の踏切で、防犯カメラなどを活用した遠隔監視システムを導入した。カメラの映像、警報機や遮断機といった機器のデータからトラブルの有無などを即座に判断できる。

■1万円台が売れ筋 低価格化も進んでいる。ビックカメラ名古屋駅西店(名古屋市中村区)の売り場では、3000円台~3万円台の家庭用防犯カメラ約20種類が並ぶ。1万円台で売れ筋のパナソニックの「屋内HDカメラ」は、外出先からスマホを通じて、留守中の子供や犬猫、高齢者などの様子を見られる。動作の有無や温度などを検知する機能も備える。
売り場を担当する同店の井上大樹さんは、「ペットを飼う方が購入するケースも目立つ」と話す。

調査会社・富士経済によると、業務用の防犯カメラの国内市場規模は20年の563億円から、24年には619億円に拡大する見通しだ。
ただ、防犯カメラは、利用者の安心や利便性の向上につながる一方で、設置時の設定次第で画像流出の危険性をはらむ。ITジャーナリストの三上洋さんによると、個人や企業が独自でパスワード設定などをしなかったカメラの映像が、ネット上で閲覧可能だったケースもあったという。三上さんは「利用者は、パスワードの使い回しをしないなどの対策が必要」と指摘している。