完了しました


門型の機械から伸びたロボットの腕が、上下左右から、様々に角度を変えて塗料を吹きかける。内側に止まっている車両の前面が、つややかな白色へと変わってゆく。日々、大勢の乗客たちを運んでいる在来線車両の「化粧直し」だ。
JR東海が5月25日、在来線車両などの検査や修繕を担う「名古屋工場」(名古屋市中川区)を報道陣に公開した。国鉄発足前の1924年に開設された、歴史ある工場だ。8年前から行われていた耐震工事が、今年3月に完了した。
建物の耐震補強や建て替えと同時に、機械設備も117台が更新、改良された。ロボットや機械による自動化を積極的に取り入れ、作業の効率化と負担軽減につなげた。
車両を塗装するロボットでは、使用塗料を油性から水性に変え、化学物質の使用を抑えた。在来線向けでは国内初導入の水性塗装ロボットで、環境負荷を低減した。以前は手作業だったという車体の洗浄も、ブラシがついた専門の機械を導入して自動化されている。
鉄道の車輪と車軸を合わせた「輪軸」の修繕場も建て替えられ、設備の更新が進んだ。重さ約1トンの輪軸を効率よく検査・修繕するため、作業場を集約。床にはレールを張り巡らせ、フォークリフトを使わなくても転がして運搬できるようにした。輪軸を格納する高さ約12メートルの棚も、搬送装置が自動で格納する仕組みを導入している。
効率化だけでなく、品質向上につながる改良も見られた。加工の一部を機械化し、手作業以上にきめ細かい仕上げを可能にしたほか、品質をチェックする新しい試験装置は、測定の項目を増やして精度を向上させた。
今回の工事では、広さ約8万9000平方メートルの敷地内で18棟の耐震補強、14棟の建て替えが実施された。豪雨対策として、たまった雨の浮力で自動的にせり上がる止水板を設置するなど、地震以外の災害を想定した設備も入った。
神田英樹・名古屋工場長は、「自然災害が発生した場合にも、車両の保守を安定してできる設備に変わった。新たな機械も入り、今後も安全で快適な車両を提供し続けたい」と話した。
(佐野寛貴、写真も)