1本100粒添加物不使用 小豆ごろごろ定番アイス

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年3億本近く売れる井村屋のあずきバー(津市で)=青木久雄撮影
年3億本近く売れる井村屋のあずきバー(津市で)=青木久雄撮影

 硬く凍っていて、最初はなかなか手ごわいが、すぐに軟らかくなり、小豆がごろごろ。「あずきバー」はいつも食感と味が心地いい。

 あずきバーは井村屋グループ(本社・津市)の看板商品だ。販売開始から来年で50年目を迎える。健康食品として小豆が注目されていることも追い風となり、昨年度はシリーズ全体で2億9200万本を売り上げた。今年度以降に3億本達成を目指している。

 1本に小豆を約100粒使う。このうち半分程度は形を残す。均一にちりばめることで、小豆の粒の感覚や風味を楽しめるという。

 甘みは、砂糖と塩、コーンスターチなど天然物だけで調整している。安定剤などの添加物は一切使わない。

 井村屋グループの浅田剛夫会長(79)は「私たちには創業から小豆を炊く技術があった。だからこそ、長く愛されてきた」と話す。

◆2人  あずきバーの開発を始めたのは1972年のことだ。小豆を使ったぜんざいやようかんが主力商品だったが、63年にアイス事業に参入した。当時は、大手メーカーがバーもののアイスクリームでしのぎを削っていた。

 「小豆をアイスで活用したらどうか。いっぺん、ぜんざいを固めてみよう」

 当時の井村二郎社長が開発チームに指示したという。その年の3月に入社したばかりの前山健・井村屋会長(72)によると、チームといっても先輩と前山氏の2人だけだった。

 重い小豆が下に沈んでしまうのを防ぐため、 攪拌かくはん 装置を使い、粒の配置を均一にした。

 炊いた生豆を100度近くから20度ぐらいまで冷やし、バーマシンで氷点下に凍らせる生産ラインも作り上げた。前山氏は「生豆から炊く設備は当時の他社にはなく、差をつけた」と振り返る。

◆進化  73年に1本30円で本格販売した。アイスは10円が主流だったこともあり、売れ始めるのに時間がかかった。そのうち他社も小豆のバーを出してきた。

 「食べるとうちの方がおいしい。一日の長があった」と前山会長は振り返る。

 自社で小豆を炊き、あんこを作った強みから、あんこを買うライバル社よりも、コストや調達で優位に立てた。次第に売り上げが伸び、夏の最盛期には生産が追いつかなくなった。

 2006年には、冷却能力が高い米国製の製造機を輸入して生産ラインを切り替えた。11年には2号機を導入、生産能力を2倍以上に引き上げた。市場の変化に合わせ、甘さも進化させているという。消費者はなかなか気づかないが、現在はすっきりとした甘さに調整しているそうだ。

 夏以外の季節や様々な年齢層にも市場を広げようと、宇治金時、ミルク金時などアイスの種類を増やした。今年発売した「北海道あずきバー」は材料を北海道産に限定、オホーツクの高級塩も使用している。

 開発部門は現在約70人で、うち半数が女性だ。

◆博士  井村屋グループは産学連携にも力を入れている。「小豆博士」として知られる北海道・名寄市立大の加藤淳教授(62)と、小豆の免疫機能を探る共同研究を進めている。加藤教授は「小豆は食物繊維の摂取源として優れていて、ポリフェノールも赤ワインよりも多い。感染症予防の観点からも、免疫機能に着目したい」と話す。

 あずきバー初の海外生産拠点が今月、マレーシアで稼働し、まもなく販売を始める。

 浅田グループ会長は「自然を大事にする、小豆を軸にし、和の商品である。わが社の経営哲学を一番表しているのがあずきバー」と力を込める。生産数が年3億本を達成しても「その先には、全日本で1年に1人3本食べる計算となる、3億6000万本がある」と意気込む。

 取材後記 冷菓生んだ熱き心

津市にある本社の広大な敷地に工場が立ち並ぶ。あずきバーシリーズの約8割が当地で生産されている。甘い香りが漂う工場を特別に見せていただいた。大量のあずきバーが高速コンベヤーで次々と流れていた。

 グループを率いる浅田氏は1970年の大阪万博の年に、創業家の知人にこわれて転職した。その2年後に前山氏は大学の掲示板を見て応募、入社した。2人の会長はともに「縁があった」と同じ言葉で往時を振り返った。

 地方にあって、ブランドを大きく成長させた原動力は創業家の言葉でもある「特色経営」にあった。まねをしないことだ。

 前山氏は「無我夢中でした。あずきバーには、これまで関係した全員の力が結集している」。浅田氏も「前に進まなければ新しいものは出てこない。若い人には体感してほしい」。ひんやりとした冷菓を生み、育てた2人は、なお熱い心を持っていた。(天野誠一)

 井村屋グループ  本社は津市。1896年、三重県松阪市で井村屋を創業。1947年会社設立。2010年、持ち株会社移行。17年、東証1部上場。中島伸子社長。21年3月期の連結売上高約422億円のうち、あずきバーを主力とする「冷菓」事業が30%を占める。グループ従業員は984人。

 小豆  原産地は東アジアとされてきたが諸説ある。日本では古事記に「小豆」「大豆」の記述がある。赤豆は厄をはらうとされ、祝い事に赤飯を食べる風習にもつながった。国内生産の94%が北海道(2020年)。明治維新後に入植した人たちが栽培を始めたとされる。

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2401394 0 ずばり逸品 2021/09/29 05:00:00 2021/09/29 05:00:00 2021/09/29 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210928-OYTAI50018-T.jpg?type=thumbnail

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