魚群探知より鮮明に 超音波技術医療分野でも

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本多電子の超音波科学館に展示されている様々な魚探(愛知県豊橋市で)=青木久雄撮影
本多電子の超音波科学館に展示されている様々な魚探(愛知県豊橋市で)=青木久雄撮影

 鮮明な魚影が映っている。赤色は魚群の反応が特に強いところだ。水深も示され、画面を拡大すれば、体長10センチ足らずの小さな魚もシルエットで表示される。釣りの仕掛けの重りが水中を落ちていく様子もわかる。船が移動すると、画面の底の地形も変化する。

 本多電子(本社・愛知県豊橋市)の魚群探知機(魚探)。船の水面近くに設置した魚探のセンサー(振動子)から発信される超音波が底にぶつかって戻ってくる。途中で回遊する魚に当たると早く返ってくる。その時間差を正確に計測して、魚の水深をリアルタイムで表示する仕組みだ。

 ワカサギ釣りの名人としてテレビの釣り番組にも出演している平久江洋和さん(41)(福島県白河市)は、魚探歴15年。「湖の中層に魚がいる時は魚探の情報がないと釣りようがない」とその威力を実感している。

 同社は釣りのレジャー用魚探では、国内シェア(占有率)約5割とトップだ。特に、ワカサギ用ポータブル魚探では約9割を占める。海外でも、北米の氷上フィッシング用はシェア約9割と圧倒的な強さだ。

◆予約完売

 1956年に創業した同社は、同年世界初のトランジスターポータブル魚探を開発した。

 当時の魚探は、真空管を利用しているため大型で、重量もあった。トランジスターを使った同社の魚探は小型で従来の約半分だった。画期的な製品として人気を集めた。

 その後もモデルチェンジを続けている。全地球測位システム(GPS)や、スマホへのデータ転送、全方位をカバーできる高性能ソナーなど多様な機能の製品が開発されてきた。

11月に発売したワカサギ釣り用ポータブルGPSプロッタ魚探「ワカサギパック」
11月に発売したワカサギ釣り用ポータブルGPSプロッタ魚探「ワカサギパック」

 11月に発売したワカサギ用の新モデル(GPS内蔵・税込み7万1500円)は超音波の周波数を7種類から選べる。大型の釣り船で、隣客の魚探との混信を防ぐためだ。乾電池でも使えるため、携帯性に優れている。初回生産(300台)は予約で完売した。

 試作機は静岡県・浜名湖などでテストを繰り返し、開発に2年をかけた。開発を担ったマリン事業部設計チームの林優介さん(29)は入社5年目ながら基礎的設計からプログラムまで手がけた。「(開発の)難易度が高かった」と振り返る。

 平久江さんも魚探開発に助言している。画像をより鮮明にすると探知する範囲は狭くなるが、「広い範囲でも鮮明に映るように改善してほしい」と要望している。

◆農業でも可能性

 同社の武器は、超音波分野でトップを目指す開発力だ。

 魚探センサーの素材になる圧電セラミックスは自社で開発・生産している。

 本多洋介社長(64)は「魚探では後発だが、圧電素材を自社で作っているのはわが社だけだと思う」と胸を張る。

 この超音波技術を土台に新規事業の開拓も意欲的に進めている。産業分野では洗浄機、カッター、医療系では、画像診断装置、顕微鏡などを次々に投入している。超音波関連など156件の特許も持っている。

 同社の研究開発要員は約50人。正社員の3分の1を占める。また、静岡大、浜松医大、豊橋技科大、愛知工業大など約20大学と共同研究を行っている。

 本多社長が目指すのは「ニッチでもトップ」。「超音波にはまだいろんな可能性がある。例えば農業で成長を早めることができないか。つぼみが出ないことや発芽しないことも多いが、いま種をまいているんです」と語る。

取材後記 人には聞こえぬ神秘の世界

 超音波で表示されるのはあくまで魚のシルエット。水中カメラで撮影しても深くなれば暗いし、ライトを照らしても限界がある。水中ドローンがあっても魚は逃げてしまうかもしれない。その点、超音波は魚のいる水深を正確に捉えることができる。「水の中は、超音波の独壇場なんです」。設計チームの林さんの説明が分かりやすかった。

 最新の魚探は操作も簡単で、ゲーム感覚のようだ。魚探を頼りに「穂先(さお先)の小さな当たりを合わせるのが楽しい」という。

 コロナ禍の影響でアウトドア志向が強まっているのか、日本釣用品工業会の調査では釣り用品の売り上げは2021年に5%強の伸びを予測している。

 本多電子のホームページに超音波ハンドブックが掲載されている。250ページを超える大作。社員総がかりでまとめたそうだ。人には聞こえない神秘の世界が広がっている。(天野誠一)

超音波  人間に聞こえない20キロ・ヘルツ以上の高い周波数の音波。空気中では秒速約340メートルだが、水中では約1500メートルと速くなる。イルカは体に超音波を発信、受信する能力があり、水中の状況を素早くつかむことができる。

本多電子  1956年創業、60年会社設立。本社・愛知県豊橋市。本多洋介社長は2代目。従業員230人。売り上げ約57億円(うち海外は約16億円=2021年9月期)。本社内に「超音波科学館」を開設している。超音波体験コーナーがある。

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2581666 0 ずばり逸品 2021/12/09 05:00:00 2021/12/09 05:00:00 2021/12/09 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/12/20211208-OYTAI50009-T.jpg?type=thumbnail

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