ゆかり1枚にエビ7匹分…二度焼き際立つ味、香り

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主力商品のゆかり=稲垣政則撮影
主力商品のゆかり=稲垣政則撮影

 開封した途端に、こんがりと焼けたエビの香りがさっと広がった。バリッ。しっかりした食感とうまみ、そして、新鮮な風味。パッケージには、製造年月日だけでなく、製造時刻までもが分単位で印字されている。

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 坂角総本舖(愛知県東海市)のえびせんべい「ゆかり」。駅の売店でも見かける愛知の土産物の定番だが、東海市内の2工場にある売店と本店、直営店の葵店(名古屋市東区)では、前日に作ったものが並ぶ(休日明けは除く)。ネットでも「工場できたて便」を販売している。

 1枚に平均で7匹分入る原材料のエビは、南太平洋のニューギニア島近海や、三河湾などで取れた天然もの。7、8センチ程度の比較的小ぶりなアカシャエビなど数種類を、海外産は冷凍で、国産は冷蔵で仕入れている。

 エビ以外は、小麦粉、でんぷん、砂糖、塩、その他の調味料を加えているだけで、原材料ベースでは、7割がエビの身。たんぱく質とカルシウムが豊富で、低脂質なのが特徴だ。

◆晩酌のつまみ

せんべいを焼く古い道具(レプリカ)を手にする坂泰助社長(愛知県東海市で)
せんべいを焼く古い道具(レプリカ)を手にする坂泰助社長(愛知県東海市で)

 1966年の発売以来、売り上げは累計34億枚(今年3月末現在)を突破した。誕生のきっかけは、65年頃。3代目社長・坂誠氏が、「これからは値段が高くても、おいしいものを売らないといけないね」と百貨店の担当者と話して帰宅すると、先代が火鉢で「生せんべい」をあぶって晩酌のつまみにしていた。

 当時のえびせんべいは、粉を多く使ったものを一度で焼き上げるのが一般的だった。エビをたっぷり使い、食べるときにもう一度焼く「生せんべい」は、2代目が自家用などとして、特別に作っていた。江戸時代の漁師が、当時たくさん取れていたエビをすり身にして焼いて食べたとされる「エビはんぺい(はんぺん)」に通じるものだ。

 誠氏は「これだ」と思ったという。エビたっぷりの生せんべいを焼いて売り出そう、と。5代目の坂泰助社長(57)が、父の誠氏から直接聞いた話である。

 高度成長期に入り、「百貨店で贈答品の扱いが盛んになってきていた。縁をつなぐという意味で、ゆかりと名付けたそうです。父はアイデアマンでした」と振り返る。

◆機械化と職人技

ゆかりの二度焼きの工程。焼き具合などを目視で確かめる(愛知県東海市の坂角総本舖本社工場で)=同社提供
ゆかりの二度焼きの工程。焼き具合などを目視で確かめる(愛知県東海市の坂角総本舖本社工場で)=同社提供

 工程は、洗って殻を取ったエビに、小麦粉などを加えて混ぜて種生地をつくり、大きな鉄板で挟み焼きにしてうま味を凝縮させる。一定の温度で乾燥させ、7日間以上保管して熟成させた後、遠赤外線網焼き機で二度焼きして、香りを引き出す。

 かつては1枚ずつ手焼きしていたが、独自開発した機械で量産が可能となった。それでも、「水加減と火力調整は、人の手で行っています」と製造部の野瀧壮志部長(51)。うまみの強いエビや糖度の高いエビなど、仕入れによってブレンドは異なるが、製品の味や食感は均一にしなくてはならず、職人の勘や技が「我が社の強み」という。製造一課の堀内功課長(48)は、「毎日単調ではありません」と語る。

◆100年

 ゆかりは、売り上げのほぼ半分を占める看板商品となった。泰助社長は、「100年愛され続けるブランドにしたい」と夢を描き、「時代に合った価値のあるものにしていくことが必要」と話す。昨年、初めて、塩味を若干減らした。気づかないくらいの調整だった。

 環境保全活動にも力を入れている。エビの殻の一部は食品会社が買い取り、食品に使用している。100%天然で、国内加工されていることが評価されているという。また、愛知県豊橋市の養鶏場と契約し、飼料としても活用されている。このほか、割れたゆかりと千葉県産のピーナツを合わせたYUKARIcoをオンライン販売している。

 時代の流れで、変えてはいけないもの、変えるべきもの。そのさじ加減は難しそうだ。

取材後記 殻まで全量活用目指す

 1枚のゆかりの7割がエビの身だと聞いて驚いた。「ジュニア農林水産白書2021年版」によると、エビ類の国内自給率は4%にすぎない。ゆかりのエビは、時期によってばらつきがあるが、10%ほどを国内で調達しているという。

 国内の水産業は、漁獲量の減少が続いている。東海大の平塚聖一教授(水産加工学)は、水産物の加工では「丸ごと利用することが大事だ」と指摘し、消費者には「どこで取れたものか、何を使っているのか、原材料の表示を自分で見て判断してほしい」と語る。

 坂角総本舖も、ゆかりの製造過程で出るエビの殻を鶏の飼料に使うなど、「全量の活用」を目指している。

 江戸時代、漁師が食べたはんぺんがルーツともされるゆかりには、製造現場の日々の工夫と努力で、大切にしたい自然の恵みがたっぷりと封じ込められていた。(天野誠一)

エビ

 世界で約3000種類あるとされ、そのうち大量に輸出入されているのは20種類程度といわれる。日本はインド、ベトナム、インドネシアなどから輸入している。

坂角総本舖

 1889年創業。本社・愛知県東海市。社名は、創業者の坂角次郎の姓名から付けた。従業員569人。売上高は110億円(2020年2月期)。東海市内に2工場がある。

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3064683 0 ずばり逸品 2022/06/08 05:00:00 2022/06/08 07:22:36 2022/06/08 07:22:36 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220607-OYTAI50020-T.jpg?type=thumbnail

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