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国税庁が1日公表した2022年分の路線価(1月1日時点)は、名古屋国税局管内(東海3県と静岡県)の平均変動率が前年比0・2%増と、2年ぶりに上昇した。コロナ禍により、昨年は局平均で全国最大の下落率となったが、大規模再開発が続く名古屋市中心部を軸に回復が進んだ。一方、外国人観光客が急減した観光地は落ち込みが続いた。(薦田大和)
栄周辺
名古屋市内では、全ての税務署管内で最高路線価が上昇した。
特に大規模再開発事業が相次ぐ栄地区周辺の上昇が目立った。最も上昇率が高かったのは、名古屋市東区久屋町8丁目(久屋大通り)の8・7%増だった。中区栄3丁目(大津通り)も前年の6・8%減から大幅に回復し、1・8%増となった。
久屋大通りでは、公園と店舗が一体となった「Hisaya―odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)」が20年9月に開業した。百貨店「丸栄」跡地には今年3月、新たな商業施設「マルエイ ガレリア」がオープン。ホテル大手ヒルトンの最上級ブランド「コンラッド」が入居する複合ビルが26年に開業を予定する。
一連の再開発による地域の活性化期待が、新たな不動産需要を呼び込んでおり、地価は上昇基調で推移すると予想されている。
不動産サービス大手「CBRE」名古屋リテールサービス部の河本納幸ディレクターは「中心部の空室率は0%近くを推移しており、募集物件の後継テナントも早く決まっている。賃料も高水準で、今後も成長は続くだろう」と分析する。
波及
名古屋中心部の地価回復は、周辺地域にも波及している。
中川区西日置1丁目の江川線通りは、管内2番目の上昇率となる8・5%増となった。名駅から2キロ・メートルほどと利便性が高いため、活発な投資の受け皿になるとの見方がある。賃貸マンションなどの需要が見込まれるという。
熱田区金山町1丁目の新尾頭金山線通りは、昨年の6・4%減から2・6%増に持ち直した。金山駅近辺の飲食店が並ぶ地域で、コロナ禍による時短営業などの影響で撤退や賃料減免が相次いでいた。コロナの影響が落ち着いた最近は、売り上げは回復傾向で、新規開業も出るなど出店意欲も高まっている。
金山地区の鉄板焼き屋「たぬき」は、売り上げは一時ピーク時の2割程度まで落ち込んだが、現在は8割程度まで回復している。オーナーの安井貞次さんは「今後は更に客足も回復するのでは」と話す。
ワースト2位
一方、古い街並みが訪日客から人気だった岐阜県高山市の上三之町下三之町線通りは、昨年に続いて最高路線価で全国ワースト2位の下落率となるマイナス8・3%となった。
コロナ禍前の19年は外国人観光客数が60万人と過去最高を更新したが、20年は6分の1の約10万人に落ち込み、21年は約3000人とインバウンド需要は蒸発した。宿泊施設や飲食店の需要減が地価を下落させている。
今年6月には条件付きで外国人観光客の受け入れを再開したが、地価が反転するにはしばらく時間がかかると予想されている。
伊勢神宮近くの三重県伊勢市宇治今在家町(内宮おはらい町線通り)は変動ゼロだった。伊勢神宮は高山よりも国内観光客比率が高いとされ、街は、活気を取り戻しつつある。
大型連休期間中(4月29日~5月6日)の伊勢神宮の参拝者数は、20年は7174人に落ち込んだが、今年は30万8760人に回復した。
旅行会社・伊勢志摩ツーリズム(伊勢市)の安和彦営業統括部長は「見通しは明るい」と話している。