魚介類広がる陸上養殖/技術進歩異業種参入も/

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日本特殊陶業のカワハギの陸上養殖実験(岡山県倉敷市で)
日本特殊陶業のカワハギの陸上養殖実験(岡山県倉敷市で)

 岡山県倉敷市の住宅街の一角にひっそりとたたずむ研究施設。直径約5メートルの水槽で20センチに満たない黒い物体が動いている。ひし形でおちょぼ口、ぷっくりした腹部が特徴的な海水魚カワハギだ。

 今年5月から、この施設で陸上養殖のシステム開発に向けた実証実験が行われている。手がけるのは自動車向けのセンサーや点火プラグなどを製造する日本特殊陶業(名古屋市)だ。

 同社が強みとする排ガスの浄化技術を応用し、排せつ物から出る毒性のあるアンモニア濃度などを水槽内のセンサーが検知する。集めた水質データを制御装置が分析し、効果的な餌やりや水槽の 濾過ろか などを含めた自動管理システムの構築を進めている。

 カワハギは温度が下がる冬に餌をあまり食べないため、成長まで1年半かかる。水温を一定に保つ陸上養殖ならば、食欲が落ちないためその半分の期間で済むという。サケやサバの養殖システムも検討している。

 脱炭素化による車の電動化が進むと、同社の主力製品であるプラグなど内燃機関部品の市場縮小は避けられない。これまで培ってきた技術を新たな市場開拓に活用する狙いがある。

 9月から現地に常駐するビジネス開発本部の足立史菜さん(28)は「来年中にはシステムを売り出したい」と意気込む。

 異業種から陸上養殖への参入が相次いでいる。いかだや網を設置する海での養殖と違って漁業権が不要な上、情報技術(IT)の進展で飼育管理がしやすくなったためだ。外部からの病原菌侵入によるリスクが少なく、安定した供給量が見込める利点もある。

 トラフグやニジマス、チョウザメ、バナメイエビなど養殖される魚種も増えている。

 世界的な漁業資源不足懸念も追い風となり、今後も新規事業者の参入が見込まれる。

 矢野経済研究所によると、陸上養殖システムの国内の市場規模は、2020年度の約67億円から25年度には100億円近くまで伸びる見通しだ。

 東欧でサーモンを手がける陸上養殖会社の日本法人ソウルオブジャパン(東京)は、津市に日本最大級の養殖プラントを建設中だ。東京ドーム3個分に相当する約13万7000平方メートルの敷地内に直径20メートル前後のいけすを36基設けて、来年にも稼働させる。

 同社は、卵のふかから約2年をかけて、24年の国内出荷を目指す。年間生産量の目標は200万匹分程度に相当する1万トンで、エロル・エメド社長は「輸入品に比べて、鮮度や味が強みになる」と強調する。

 尾鷲商工会議所(三重県尾鷲市)は10月、バナメイエビの陸上養殖に成功した。今後は、中部電力の火力発電所跡地に整備される木質バイオマス発電所の排熱を活用し、バナメイエビ以外の陸上養殖にも挑戦したい考えだ。プロジェクト室長の山本浩之さん(41)は「なるべくコストをかけないように工夫して、地域の新たな水産資源を生み出したい」と語る。

課題はコスト 一方、陸上養殖は設備投資費用や電気代など運用コストがかさむことが課題だ。

 水産庁の試算によると、トラフグの陸上養殖では、1キロあたり3278円のコストがかかる。減価償却費を除く維持費(2219円)の約6割が電気代、約2割が飼料代、残りが人件費などだった。同庁の担当者は、「排熱などの利用でコスト削減につなげる技術開発も重要になる」と指摘する。(この連載は中島幸平が担当しました)

陸上養殖  陸上に設けた施設で行う養殖。飼育時の水を繰り返し利用する「閉鎖循環式」と、飼育水を海などから引き込む「かけ流し式」がある。閉鎖循環式は、水温調節や水質管理がしやすく、魚種の制約がないことから、新たな生産手法として注目を集めている。

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