名鉄百貨店社長 柴田浩氏64

百貨店今後注目する戦略は? 環境に配慮「イミ消費」

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 コロナ禍が始まってから約2年間、名鉄百貨店では感染対策を徹底しながら、様々な取り組みを続けました。電子商取引(EC)の取扱商品を強化したり、化粧品を使い切るタイミングが近づいた顧客に電話をして注文を取ったりしました。

 昨年10月以降は、客足は回復傾向にありますが、コロナ禍の収束は依然として見通せません。人と人との接触を避ける傾向は依然強く、対面販売を重視してきた小売業界は転換期を迎えています。今後はECとリアルな店舗での販売の融合が、一つの焦点になるでしょう。

 ECの品ぞろえは豊富ですが、見て、触って、販売員の話を聞き、気に入ったら買うのが、ショッピングの楽しさです。店舗内のタブレット端末で在庫を探し、取り寄せて試着するサービスなどは、コーディネート提案や商品知識を強みとする百貨店とも親和性が高い。「あの人がいるから買いたい」と言われるような販売員の存在は、今後も百貨店の強みであると思います。

 また、昨今ではSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラル(脱炭素化)などの言葉が脚光を浴びています。省エネ・省資源やフェアトレードなど、社会問題の解決につながる商品の需要も高まるのではないでしょうか。私はこの「イミ消費」に注目しています。年末商戦では、環境負荷を抑えたギフト商品を販売しました。値は張るかもしれないが、考え方に共鳴できる良質な商品の提案こそ、百貨店が最も得意とするところです。

 〈本店は昨年後半、大規模改装を行った〉

名鉄百貨店の柴田社長(名古屋市中村区で)=佐野寛貴撮影
名鉄百貨店の柴田社長(名古屋市中村区で)=佐野寛貴撮影

 今年の着工を予定していた名駅の再開発計画が2020年11月に延期が発表されたことがきっかけとなりました。取引先を回って経緯を説明し、本店への出店を続けられるか聞き取りました。不況のアパレル業界などからは「難しい」という声も聞かれ、面積ベースでは1フロア以上の店舗が抜ける可能性がありました。この状況を踏まえ、ターミナルデパートとして集客力を引き上げる必要があると判断しました。

 改装は投資額10億円にのぼる大規模なプロジェクトとなりました。8フロアに13の新規店舗が出店し、50店近くが配置を替え、各階とも魅力のある売り場に生まれ変わりました。

 中でも意識したのは、上層階とデパ地下(地下の食品売り場)の強化です。「シャワー効果」と「噴水効果」と言われ、上と下のフロアに集客すれば、中層階での買い物も促されます。今回はメンズ階地下1階に高級スーパー「紀ノ国屋」、本館8階にはシェアラウンジを併設した書店「ツタヤ ブックストア」が入り、反響を呼びました。

 〈改装効果は〉

 昨年12月の本店の入店客数は、前年同月比で3割増えました。売上高も40億800万円で18・7%の大幅増、コロナ禍前の19年同月比でも9割台という水準となりました。改装したフロアはもちろん、手を加えなかったフロアでも売り上げが伸長しています。

 「開店祝い」効果と言えますが、これを持続させるのが今年の目標です。

 コロナ禍前の売り上げを100%とした場合、インバウンドが見込めない現状では、80~85%に戻せるかが攻防戦だとみています。

 名鉄百貨店には、「ナナちゃんマスター」と名付けた社内選抜スタッフを中心に、訓練を積んだ接客のプロフェッショナルがそろっています。改装を機に来店したお客様には、確実にリピーターになっていただけるはずです。

コロナ危機を好機に

 2021年の名古屋市内の4百貨店による合計売上高は、3435億円(速報値)だった。20年からは1割ほど回復したが、コロナ禍前の19年比では8割台の水準だ。

 ある百貨店の広報担当者は「新規感染者数と、来店客数はほぼ反比例している」と話す。新型コロナウイルスの感染拡大は人混みを避ける心理につながり、質の高い接客も阻んでしまった。電子商取引(EC)なども台頭する中、業界の危機感は強い。

 経済産業省の百貨店研究会は昨年7月、報告書をまとめた。地域産品の発掘とブランディング、購買データの蓄積と活用、リモート接客やライブ動画での商品販売(ライブコマース)――などの打開策を提案した。

 長らく人々の消費を支えてきた百貨店への信頼は、今なお高い。コロナ禍で培われた新たな工夫や技術を取り入れれば、危機を好機に変えることも十分可能だ。(聞き手・佐野寛貴、写真も)

名鉄百貨店  名古屋鉄道の子会社で、1954年に開店した本店(名古屋市中村区)と、2000年に開店した一宮店(愛知県一宮市)の2店舗を展開している。かつては名証第1部に上場していたが、04年に名鉄の100%子会社となった。昨年の売上高(速報値)は前年比1・6%増の298億8600万円。従業員数634人。

しばた・ひろし  1957年生まれ。80年早大卒、名古屋鉄道入社。秘書室長や総務部長、広報部長などを経て、2015年に同社専務、17年に副社長。19年6月から名鉄百貨店社長を務めている。愛知県出身。

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