河野裕「君の名前の横顔」(ポプラ社) 朝井リョウ「正欲」(新潮社)

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読者による文学賞

(@dokusyaprize)  末祐一郎さん

 2021年に出版された本の中から、市井の読書家たちが「大賞」を選ぶ第3回「読者による文学賞」が今月23日に発表された。受賞したのは、河野裕さんの「君の名前の横顔」と、朝井リョウさんの「正欲」。同賞を運営する すえ 祐一郎さん(30)が選考理由やその他のノミネート作品について語った。

「他人とのずれ」扱う2冊

末祐一郎さん
末祐一郎さん

 最終選考作品の9冊から受賞作を選ぶのに、かなり議論は紛糾したが、それぞれの推薦理由に、二つの共通点を見いだした。一つが、「自分の人生に違和感を覚えている人に、肯定でも否定でもなく、『多様な世界がある』というメッセージを届けたい」。もう一つが「自分の世界とは別に、全く想像も及ばなかった価値観があるということを、気づかせてくれるような作品を届けたい」。

 そうしたテーマを最も強く打ち出している作品として、最後まで残ったのが、受賞作の2冊だ。どちらも「他人とのずれ」というテーマを扱いながら、視点やその扱い方はかなり違っている。「こっちが正しい」「こっちがより現実的」などと優劣をつけるより、その違いを楽しんでもらおうと、同時受賞が決まった。

 「正欲」は、社会的マイノリティーや多様性というテーマをストレートに扱っている。物語という枠を超え、自分の身近な生活と地続きで多様性について考えさせる力はすごいと感心させられた。

ツイッターで発表された第3回「読者による文学賞」受賞作品(読者による文学賞提供)
ツイッターで発表された第3回「読者による文学賞」受賞作品(読者による文学賞提供)

 「君の名前の横顔」は、他人との違いに対し、世の中で「間違いとされたもの」が消されていく世界や、それらに対して迎合する姿までを、きれいで優しく描き出していたことが、高く評価された。

 ほかの最終選考作品で、一読者として印象に残ったのは、「いつかたどりつく空の下」(八幡橙)。主人公は葬儀社に勤める女性で、他人の死に触れながら、何のために生きていくのかということを考えさせる。軽やかさもありながら、コロナ禍で葬儀ができないというような現代的な問題も扱っている。今だからこその作品だなと感じ、話自体も面白かった。

 賞の運営者として、新鮮だったのは「不村家奇譚―ある憑きもの一族の年代記―」(彩藤アザミ)だ。ミステリーをホラーでコーティングしたようなストーリーだが、かなり異色な作品。そのジャンルの中での完成度は高いが、読者を選ぶ本だと感じた。一冊一冊、丹念に読んで選ぶ審査方法だから、こうした作品が最終選考まで残るのだろう。そういう意味でも、「読者による文学賞」の意義は大きいと思えた。

読者による文学賞

 ツイッターで受賞させたい作品を募り、候補作は、有志の読者が分担して全て読み、審査を進める。第3回は、142件の推薦本のうち、重複やシリーズ途中巻などを除いた78作品を審査。2次選考を通過した9冊から、愛知県内の読書家を含む最終選考委員4人が受賞作を決定した。第1回は「どうかこの声が、あなたに届きますように」(浅葉なつ)、第2回は「神さまの貨物」(ジャン=クロード・グランベール、河野万里子訳)が受賞している。

受賞作以外の最終選考作品

「不村家奇譚―ある憑きもの一族の年代記―」彩藤アザミ

「うしろむき夕食店」冬森灯

「パラソルでパラシュート」一穂ミチ

「私たちは空になれない」風森章羽

「いつかたどりつく空の下」八幡橙

「白光」朝井まかて

「残月記」小田雅久仁

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