島田潤一郎「古くてあたらしい仕事」(新潮社)

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丸善名古屋本店 能口優子さん

(@MARUZENNAGOYA)

 本との出会いが、生き方に大きな影響を与えることもある。丸善名古屋本店(名古屋市中区)スタッフの 能口のぐち 優子さんは、島田潤一郎さんの「古くてあたらしい仕事」に心を動かされたという。「色々な悩みを抱えている人に読んでほしい」と強く推す理由を語った。

つらい人にそっとエール

「古くてあたらしい仕事」を推す能口さん(丸善名古屋本店で)
「古くてあたらしい仕事」を推す能口さん(丸善名古屋本店で)

 著者の島田さんは、転職活動で50社連続不採用になった経験がある方。兄弟のように仲が良かった 従兄いとこ が事故で亡くなったのをきっかけに、従兄の両親を励ますための本を作ってプレゼントしたいと、33歳の時に1人で出版社「夏葉社」を起業した。

 島田さんの著書で最初に読んだのは、「あしたから出版社」。3年ほど前、仕事上の悩みを抱えていて、雇用されるよりも自分で何かできないかと考えていた。それで、出版社を起こした島田さんに興味をひかれたのだ。

 当時は、生きていくためにしなければならない仕事と、生きていくこととの間に壁を感じていた。何をしてもうまくいかず、行き詰まった感じがして、転職を繰り返していた。そんな時に、「古くてあたらしい仕事」を手に取った。

 書中、島田さんは、従兄を亡くしたつらい思いを吐露している。そのうえで、「きみもほんとうは大変なのかもしれないが、ぼくもいま、大変なんだ」「なにをいいたいかというと、うまくいえないけど、つらいこともたくさんあるけど、どうか、がんばって」「ぼくもがんばるから、きみもがんばって」と語りかけている。島田さん自身の悩みも踏まえ、それを乗り越えていこうとする気持ちがひしひしと伝わり、胸にしみた。

 私だけが大変なんじゃない。それを知ってくれている人がいた。言葉にしてくれる人がいた。島田さんから届いた手紙だと思えて、読む度に泣いてしまう。

 「悔いのないように生きる。よくやった、と思えるように。楽しかった、と思えるように」「人生は嘆いたり、悲しんだりして過ごすには、あまりにも短すぎる」という文章も印象的だ。行き詰まり、これからどうしようと悩んでいる人たちに、ぜひ読んでほしい。

 夏葉社が出版している書籍では、「古書店主とお客さんによる古本入門 漱石全集を買った日」もお薦め。京都の古書店「善行堂」の店主・山本善行さんと、お客さんである清水裕也さんとの対談形式で著されている。こんなに本が好きな人がいて、こんなに好きだと言っている、やっぱり本って最高だ、という本。

 古書店に関連する本としては、「チャリング・クロス街84番地」(中公文庫)も紹介したい。ロンドンの古書店に勤める男性と、本を購入するニューヨークの女性脚本家との間で、実際に交わされた書簡集だ。心温まる交流がつづられており、誰かのために本を選ぶということが、本当に魅力的だと思える。この本を読むと、もっと人とつながっていたくなる。そんな働き方がしたいと考える人は、多いんじゃないかな。

能口さんおすすめの10作品

「古書店主とお客さんによる古本入門 漱石全集を買った日」山本善行、清水裕也

「チャリング・クロス街84番地」ヘレーン・ハンフ

「90歳セツの新聞ちぎり絵」木村セツ

「シェイクスピア&カンパニー書店の 優しき日々」ジェレミー・マーサー

「富士日記」武田百合子

「北欧こじらせ日記」週末北欧部chika

「読書の日記」阿久津隆

「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹

「麦本三歩の好きなもの」住野よる

「昔日の客」関口良雄

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