三秋縋「恋する寄生虫」(メディアワークス文庫)

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作家 逢沢満恵さん

@mitsue_aizawa

 今年4月に電子書籍「チャンスの神様は前髪しかない」でデビューした名古屋市の作家・逢沢満恵さん(26)は、 三秋みあきすがる さんを大好きな作家に挙げた。中でも、6年ほど前、最初に読んだ「恋する寄生虫」が、「今も忘れられない」と熱く語る。

感情は錯覚? 揺らぐ自分

「恋する寄生虫」(左)と「スターティング・オーヴァー」
「恋する寄生虫」(左)と「スターティング・オーヴァー」

 主人公は、他人に触れることができないという極度の潔癖症の男性。そのため、恋もできない。それが、出会った高校生の少女と、互いにひかれあう。その少女も、視線恐怖症で、対人関係を築くのに難があるのだが、主人公の潔癖症とともに、徐々に改善されていく。

 実は、ひかれあっているのは、2人の脳にすみつく寄生虫。恋心を抱くのは、その寄生虫に操られているからなのだ。

 自分のものだと思っている感情は、本当は勘違いなんじゃないか。実は錯覚なんじゃないか。そんなふうに、自分の「脳」を疑いにかかるという感覚を抱かせる。信じているものが、根底から揺らいでいく。読み終わった後は、世界の見え方が変わったように感じた。

 三秋さんの本は、ファンタジーっぽいのだが、現実離れしすぎていないのが魅力だ。実際に起こっていることだと言われても、それほど違和感がない。あふれるロマンが、三秋さんのすてきな文章に落としこまれている。

 三秋さんの著書では、デビュー作の「スターティング・オーヴァー」も面白く読んだ。

 20歳の主人公の男性が、もとの記憶を残したまま、10歳の小学生に戻るところから始まる。

 主人公には愛する恋人がいて、その彼女と付き合うため、小学生に戻ってからの10年間は、全く同じ人生を再現しようとする。しかし、少しのずれで、幸せだった「1周目」の人生と同じルートがたどれなくなってしまう。彼女への思いは変わらず強いのだが、一度ずれてしまうと、どんどんうまくいかない方向へ進んでいく。

 三秋さんが描く主人公は、特別な人間ではない。等身大のキャラクターなので、自分に投影しやすい。彼の目線でストーリーが進み、抱いた悔しさ、つらさも含めて、強く感情移入してしまう。自分も、もし同様に過去に戻っても、同じ人生は歩めないだろうなと考えさせられる。

 不思議な物語だが、その世界に入りこんで楽しめるのだ。

逢沢満恵さん
逢沢満恵さん

  あいざわ・みつえ  劇団の脚本を書いていた経験があり、自分の組み立てたストーリーについて、役者や演者を通すよりも、文字から想像してもらう方が面白いと考え、小説を書き始めた。デビュー作のKindle(キンドル)版「チャンスの神様は前髪しかない」は、女性が偶然の出会いに運命を感じ、主人公の男性と恋に落ちるが、その「偶然」は全て男性が仕組んでいたというストーリー。男性の計画や作戦が、徐々に明かされていく。表紙は、小中学校時代の同級生という画家・ 猪瀬名月さん が手がけている。

逢沢満恵さんおすすめの10冊

「スターティング・オーヴァー」三秋縋

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」相沢沙呼

「あの日、君は何をした」まさきとしか

「告白」湊かなえ

「『アリス・ミラー城』殺人事件」北山猛邦

「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー

「93番目のキミ」山田悠介

「名探偵誕生」似鳥鶏

「紅蓮館の殺人」阿津川辰海

「十角館の殺人」綾辻行人

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3121841 0 東海読書アカウント 2022/06/29 05:00:00 2022/06/29 09:39:25 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220628-OYTAI50035-T.jpg?type=thumbnail

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