完了しました
やっている主な目標
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
12 つくる責任つかう責任
香る梅林 ビールでも
廃棄される実
クラフトビールで知られるビール会社「伊勢角屋麦酒」が、三重県いなべ市の観光名所・梅林公園で取れるウメの実を活用したビール「UME WHITE(ウメホワイト)」を開発した。同市などとコラボして、廃棄されていたウメの実を有効活用したSDGsの目線から生まれた商品だ。

東海地方有数のウメの名所として知られる梅林公園は広さ約38ヘクタールに、約100種・約4000本のウメが植えられ、春には紅白の花が咲き誇る。来場者を楽しませた後、花が散って実を付けるが、実はほとんどが廃棄されていたという。
市商工観光課の東松大司課長は「ウメの実を収穫しても活用が限られ、これまでほとんど捨てられていた。どう有効活用するかが長年の課題だった」と振り返る。
和食にも合う味

同社は、市が進める地域資源を有効活用するSDGs事業に参加。事業内容を精査する中で、同社がウメの実をビールに漬け込むことを提案した。
開発は3月から開始。市の担当者らに同社の各種ビールを試飲してもらった結果、基になるビールには、相性を考慮して癖のない自然な口当たりが特徴の白ビール「ヒメホワイト」が選ばれた。伊勢市内の
ヒメホワイト2000リットルに対し、ウメの実約60キロを約2週間漬け込み、ウメの実のかすかな渋みとほろ苦さなどウメの余韻が感じられるビールに仕上がった。
製造責任者の出口善一さんは「ウメの香りが引き立つよう、漬け込む期間の調整が難しかったが、和食にも合う爽やかな味わいにできた」と笑みを浮かべた。
すでにアンテナショップ「三重テラス」(東京)や近鉄百貨店四日市店(三重県四日市市)などで販売されており、売れ行きは好調という。鈴木
高校生ともコラボ
他にもSDGsの観点から生まれた取り組みもある。同社は従来、ビールに使った麦芽の残り殻が年間約300トン排出され、約1200万円かけて産廃処理していた。この一部を県立明野高校(三重県伊勢市)や養豚業者に譲り渡し、有効利用し始めた。同高生徒らがその麦芽の殻を混ぜた飼料で育てた、新たなブランド豚「伊勢志摩パールポークほろよい」を誕生させ、今年4月から販売された。
鈴木社長は「明野高校との取り組みは、SDGsの観点から一番成果が出たケース。これからはSDGsの視点を取り入れた会社経営が求められる時代。ウメホワイトのように、地産地消の商品を今後も生み出していきたい」と意欲を燃やしていた。(倉橋章)

【伊勢角屋麦酒】 老舗餅店「二軒茶屋餅角屋本店」(創業1575年)傘下のビール会社。同本店はみそ・しょうゆの醸造業も手がけていることから、醸造技術をいかして1997年に設立した。ウメホワイト(330ミリ・リットル)はオープン価格。