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消火設備 誤操作防げ…名古屋炭酸ガス事故

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 名古屋市のホテル駐車場で起きた消火用の炭酸ガス(二酸化炭素)噴出事故では、消火設備の機能を十分把握していなかったことが誤操作を招いたと指摘された。後を絶たない事故を防ぐため、二重三重の安全対策が求められている。(杉本要)

消火設備の作業手順を記した文書を貼る中消防署員(6月1日、名古屋市中区で)=杉本要撮影
消火設備の作業手順を記した文書を貼る中消防署員(6月1日、名古屋市中区で)=杉本要撮影

■濃度900倍

 名古屋市消防局によると、事故が起きたのは、空気中の酸素濃度を急激に下げて火を消す「不活性ガス消火設備」の一種。立体駐車場や電子機器の多い変電室など、放水に適さない場所などに設置されている。

 水や消火剤による機材などの汚損が防げるほか、窒素ガスを使う同種の設備に比べて安価なこともあり、炭酸ガスを使った消火設備は名古屋市内だけで約800か所に設けられている。

 空気中の二酸化炭素濃度が10%以上に達すると人は意識を失ったり、死亡したりする恐れがあるが、消火設備の使用後は濃度が空気中の約900倍の約35%に達するという。今年1月には東京都港区のビル駐車場で、4月にも新宿区のマンション駐車場で設備が誤作動し、作業員計6人が炭酸ガスを吸い込み死亡した。

■消防が呼びかけ

 相次ぐ事故を受け、総務省消防庁は今年4月、全国の駐車場管理会社などに、こうした消火設備がある場所で工事や作業を行う場合は、専門知識を持つ消防設備士らを立ち会わせるように求める通知を出した。

 名古屋市消防局も、工事などの際には、〈1〉消火設備を手動モードにして、熱や煙の誤検知による起動を防ぐ〈2〉ガスの元栓を閉める〈3〉誤って起動させたら直ちに「非常停止ボタン」を押す――ことを呼びかけている。

 管内に事故現場を抱える中消防署も年末までに、約370か所の消火設備全てに事故防止策を記した文書を貼り出す方針だ。

 ただ、起動からガス放出までの時間はわずか約20~40秒。この間に避難するか設備を止める必要がある。

 工事関係者からは「起動と停止ボタンの配置などメーカーごとに仕様が異なり、非常時は押し間違いを招きやすいのでは」との声も聞かれるが、ある消火設備会社の幹部は「設備に対する知識不足が事故を招いたのだろう。ボタンの位置や色はメーカーで多少違うが押し間違えることは考えにくい」と話す。

 同署では事故を防ぐため、設備の操作手順などを解説した動画を動画投稿サイトで公開。予防課の鵜飼圭一消防司令は「マニュアルを整備して訓練を重ね、通報や避難の方法を周知することが重要だ」と訴える。

■事故は防げる

 今回の事故では、現場にはいなかった上司も誤操作防止に必要な指導を怠ったとして刑事責任を問われた。捜査幹部は「現場の担当者に安全管理の知識や技能を身につけさせるのは監督者の義務だ」と語気を強める。

 総務省消防庁は今年5月、事故防止に向けた専門家会議を設置、年度末までに対策をまとめる方針だ。豊橋技術科学大の中村祐二教授(火災物理科学)は「正しい手順で作業すれば事故は防げる。工事前の朝礼で、関係者全員が設備の操作方法を確認したり、押し間違いを防ぐため、操作盤のボタンの配置を統一したりするのも有効ではないか」と指摘する。

 炭酸ガス消火設備は効果が高い反面、ひとたび事故が起きれば人命に直結する。リスクの認識と安全対策の徹底が求められる。

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2217161 0 ニュース 2021/07/19 05:00:00 2021/07/19 05:00:00 2021/07/19 05:00:00 消火設備の作業手順を記した文書を貼る中消防署員(6月1日午後2時27分、名古屋市中区で)=杉本要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210719-OYTNI50001-T.jpg?type=thumbnail

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