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家族でだんらんする美穂さん(左)や寿生君(手前右)ら
家族でだんらんする美穂さん(左)や寿生君(手前右)ら

 ◇4人を子育て中のママ 板崎 美穂さん 36

 松山市内の自宅は、にぎやかだった。次男の伸央のぶちかちゃん(5)や長女の萌依めいちゃん(3)、三男の信乃介ちゃん(1)がブロックやかるたで遊んだり、言い合ったり。

 そばの座椅子で、長男の寿生としき君(7)が弟や妹の姿を目で追い、時折、にっこりとほほ笑む。一緒に動き回ることはできない。重い障害があり、人工呼吸器を身につけている。

 美穂さんは「騒がしいでしょう。寿生が寂しくないように家族を増やそうと考え、望んでこうなったの」と目を細める。

     ◎

 久万高原町出身で大学卒業後に県警に入り、刑事として薬物や組織犯罪の捜査に携わった。同じ警察官の秀史さん(37)と結婚してからは防犯やストーカー対策に取り組んだ。

 2011年4月、寿生君を出産した。妊娠中の検査で異常はなかったが、呼吸が浅く、全く泣こうとしなかった。胸に抱いたのはほんの一瞬で、県立中央病院(松山市)に搬送され、緊急手術が行われた。

 翌日に医師からは、脳室に髄液が過剰にたまる「水頭症」、小脳の一部が落ち込む「アーノルド・キアリ奇形」などと告げられた。聞いたこともない病名や、我が子の命が危険にさらされる深刻な事態に、うまく状況がのみ込めなかった。

 毎日、母乳を搾って新生児集中治療室(NICU)に届け、保育器に入った寿生君の小さな手を握った。再び抱っこをできるまでには約3か月かかった。

     ◎

 寿生君は3歳の時、NICUから愛媛医療センター(東温市)に移った。呼吸の状態が少しずつ安定したため、自宅で過ごす時間を増やしていった。

 小学校は先生を家庭に派遣してもらう選択肢もあったが、県立しげのぶ特別支援学校(東温市)への入学を決めた。「子どもは子どもの中で学ぶことで成長する」との思いからだ。

 4月から週2日、学校に車で送迎し、授業にも付き添う。半年が過ぎ、たん吸引などの医療的なケアを学校の看護師に任せる試みを始めた。問題なく進めば付き添う負担が減り、通学日数を増やすことができる。

 育児休暇中の県警に復帰することもかなうかもしれない。「子どもが安心安全に暮らせる社会に向け、警察官として役立ちたいとの思いはある」と明かす。

     ◎

 7年前は、先の見えない不安に苦しんだ。それでも人との出会いに恵まれ、何度も救われた。「県重症心身障害児(者)を守る会」などに参加し、悩みを分かち合うようになった。

 9月に県が重症障害児の支援者養成を目的に開いた研修では、看護師や保健師ら約100人を前に、家族の思いを語った。緊張はしたが、「親身に話を聞いてもらえるだけで安心する。私も多くの人に理解し、支えてもらったからこそ今がある」と訴えた。

 これからは自分が、同じような境遇に悩む人たちの力になる番だ。そう心に決めている。

     ◇

 ◇取材後記 「普通のこと」 できる社会に

 日常生活で医療的なケアが必要な子どもは増えている。重い病気を持って生まれてきても、救命できる医療技術が広まってきたことが背景にあるという。国は支援の充実を打ち出すが、各自治体の財政状況が厳しく、十分な支援はまだ行き届かないのが現状だ。

 今回の取材で「子育ては大変でしょう」と聞くと、美穂さんは「そうでもないですよ」と即答した。言葉の端々からは苦労よりも、支えてくれる人々への感謝や子どもたちの成長を喜ぶ思いが伝わってきた。

 板崎さん家族の願いはシンプルだ。寿生君が家で暮らし、学校に通うといった「普通のことを普通にできること」。ただ、実現にはいくつもハードルがあるのも事実。行政だけでなく、地域社会で暮らす私たち一人一人が理解を深め、応援の手立てを広げていくことも重要になる。(石原敦之)

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54450 0 人あり 2018/12/17 05:00:00 2018/12/17 05:00:00 家族でだんらんする美穂さん(左)や寿生君(手前右)ら(1日午後4時14分、松山市内で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181217-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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