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    <7>現在編 写真で貧困 伝えたい

    • 写真家を志す鈴木さん(県立丹生高で)
      写真家を志す鈴木さん(県立丹生高で)
    • ダ・ヴィンチ大賞を受賞した作品「命を繋ぐ」
      ダ・ヴィンチ大賞を受賞した作品「命を繋ぐ」

     高校生アートコンペ最高賞受賞 鈴木芯さん18

     フィリピンのスラム街。濁った水の入った容器を懸命に運ぶ少年の後ろ姿をとらえた。「命をつなぐ」と題した1枚を撮影したのは、県立丹生高3年の鈴木芯さん(18)。昨年11月、大阪芸術大主催の公募展「世紀のダ・ヴィンチを探せ!高校生アートコンペティション2015」で全16部門の最高賞に輝いた。

     同年6月に父と参加したスタディーツアー。一人の少年が、家族が食事や体を洗うのに使う雨水を集めていた。きゃしゃで小さな背中に太陽の光があたり、少年が力強くたくましく見えた。「僕らは水道から出てくる透明な水を当たり前に飲んでいるけど、少年の運ぶ水は家族の命をつないでいる」と感じた。

     高校に入り、サッカーも弓道も長続きしなかったが、写真好きの祖父に触発されて入った写真部で開眼した。「時間は流れているのに、僕がレンズをのぞいて見た景色がカシャッという音で切り取られる。その瞬間がたまらない」。子どもの無邪気な表情やしぐさを撮った写真は数々のコンテストで入賞した。

     フィリピンにはこれまで2度行った。小学5年の時、テレビで見たアフリカの貧しい子どもが忘れられず、途上国の姿を自分の目で確かめたかった。ゴミを拾って生きる家族、路上で生活する子ども。「僕の写真を見た人がこの子を助けたい、と行動してくれたら」。気づくと、シャッターを押し続けていた。

     5人きょうだいの長男。家では、中学3年から3歳の4人の妹が遊んだり、けんかをしたり、泣いたりする日常を撮る。「妹たちが大きくなったら、こんなにかわいい頃があったんやで、と教えて、みんなで笑いたい」

     今春、東京工芸大写真学科に進学する。風景や建築物、水の中。経験を積み、貧困にあえぐ国の実情を世界に伝える写真家になるのが目標だ。

     人なつっこい笑顔と優しい語り口が、撮られる側の心を一瞬で解きほぐす。

     ◇夢の頂へ 自分を鼓舞

     アイドル 武田舞彩さん17

    • 「みんなに元気を届けたい」と話す武田さん(東京都港区で)
      「みんなに元気を届けたい」と話す武田さん(東京都港区で)

     〈アイドル〉が職業になってから、2年がたつ。

     鯖江市出身の武田舞彩まあやさん(17)は、10人組アイドルグループ「GEMジェム」でセンターを務める。軽快で力強いダンスと透き通るようで芯のある歌声。ライブや舞台に挑戦しながら、東京の高校に通う。

     「切り替えるのは難しいけど、アイドルも学校も、今すごく楽しい」

     幼い頃の夢は「お姫様」。元「モーニング娘。」で、坂井市出身の高橋愛さんにあこがれ、アイドルを目指すようになった。小学3年の時、両親の勧めで受けた芸能事務所のオーディションに合格し、放課後と休日、大阪と名古屋の育成スクールに特急電車で通い詰めた。

     「人から遅れちゃうのが悔しくて、とにかく必死だった」。往復約4時間。その間に宿題と食事、仮眠。苦手なダンスの体の動きは、車窓に映る自分の姿を見て復習した。家に帰れば、声を録音して何度も聞き直し、父を相手に演技の練習を重ねた。

     デビューが約束されていたわけではない。「このまま続けて何もなかったら」と不安もあったが、「休んだら、チャンスが一つ減る。今までの努力が全部、無駄になる」と奮い立たせた。引っ込み思案な性格はいつしか、「一番になりたい」と願望に変わった。センターとしての自覚も芽生えた。

     この夏、18歳になる。選挙権を得る。「自分の意見が世の中に反映されることってすごいこと」。デビューしたときのように、大人の仲間入りのようにも感じる。

     アイドルとは、との問いに「元気を届ける存在」と迷いのない答えが返ってきた。大きな瞳の奥に揺るぎない決意がのぞいた。(渡辺彩香、おわり)

    2016年01月08日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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