<下>骨格の状態から環境推測

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プロトケラトプスの頭骨を発見した日本人メンバー
プロトケラトプスの頭骨を発見した日本人メンバー

 海外調査では、様々な出会いがあります。今回の中国科学院古脊椎動物・古人類研究所(IVPP)との共同調査では、台湾からの留学生、廖俊棋さんと調査をしました。彼は2015年、県立大に経済を学びに来たものの、教養科目にあった「恐竜学」を受講。それを機に恐竜に興味を持つようになり、帰国後は中国の大学院へ。今では中国最高レベルのIVPPで研究するようになりました。

 発掘隊は、中国の研究者や学生など総勢20人ほどで構成されます。そこで現場では4、5グループに分かれますが、我々のグループは廖さんがサポートしてくれました。広大な草原で、地元のモンゴル族の人に会った場合、中国語を話せる人が必要だからです。

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発見したプロトケラトプスの全身骨格
発見したプロトケラトプスの全身骨格

 我々を含む数グループは前日より北へ移動し、調査を始めました。1時間後、IVPPで最もよく恐竜化石を発見するという中国人技術師の向礼世さんが、丘の反対側から我々を呼びました。そこには形がわかる化石は残っていません。すぐに向さんがそこから300メートルほど先で手招きをするので「また小さなものだろう」と思って近づくと、なんとプロトケラトプスの全身骨格がありました。向さんが「最初の場所から見えた」と言うのを疑っていると、周囲は「彼なら見えたはず」と言います。確かに、発掘現場には必ず一人は「化石に好かれる人」がおり、頻繁に発見することがあります。彼もその一人だったようです。

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 内モンゴル自治区には、白亜紀の前期(約1億2000万年前)と後期(約9200万年以降)の地層が広く分布しています。我々が調査しているウランスハイ層から最もよく発見されているのがプロトケラトプスです。トリケラトプスで有名な角竜類に属しますが、角がありません。

 バヤンマンダフ地区では、プロトケラトプスの全身骨格が非常に興味深い状態で発見されます。通常、恐竜の全身骨格が発見される場合は体の片側が上向きになるいわゆる「横向き」の状態の場合が多くを占めます。だが、プロトケラトプスの場合は腹部を下側にし、体はほぼ地層に平行あるいは頭が上に向いた状態になっています。普通は地表で自然死した動物であれば、横に寝たような状態になります。「なぜでしょうか」

 研究によると、砂漠にあった砂丘の斜面崩壊により大量の砂で埋もれてしまったものと考えられています。今回の調査で発見したプロトケラトプスも、背中側を上にし、後ろ脚は折り曲げられた状態でした。もしかすると、砂の中から脱出しようとしていたのかもしれません。

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 このように、化石として発見された動物がどのような過程を経て埋もれたのかを調べる研究は「タフォノミー」と呼ばれ、当時の環境や生物の生活を知るうえでとても重要な研究です。砂漠で生息し、限られた水場で生活するような恐竜が後期白亜紀に存在していました。そこには、プロトケラトプスのような植物食恐竜のほかにも、それらを餌としていた肉食恐竜たちも群がっていたことでしょう。バヤンマンダフ地区では、ヴェロキラプトルのほか、リンへラプトルという肉食恐竜も見つかっています。

 今回の調査では、1センチほどの小さな肉食恐竜の歯を発見しました。今年の調査では、この歯の持ち主である肉食恐竜、またそのほかのまだ知られていない恐竜の発見を目指し、ゴビ砂漠を踏査したいと思っています。(県立大恐竜学研究所准教授・柴田正輝)

 <角竜類> 前期白亜紀のアジアで出現。その頃の大きさは1~3メートルほど。角はなく、頭の後ろのフリルが少し広がっている程度だった。その後、後期白亜紀に入り、北米へ移動した種類には顔に様々な形や大きさの角を持ち、フリルを大きく発達させた角竜も。一方、アジアはフリルが若干大きくなるも、角を発達させていないプロトケラトプス類が繁栄していた。

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300975 0 よみがえる恐竜 18ゴビ砂漠発掘調査 2019/01/25 05:00:00 2019/01/25 10:57:46 プロトケラトプスの頭骨を発見した日本人のメンバー https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190124-OYTAI50007-T.jpg?type=thumbnail

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