〈食品〉「鯖街道」ISS届いた

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若狭高生「サバ醤油味付け缶詰」

宇宙サバ缶の商品化に向けて計画を練る福嶋さん(中央)ら生徒たち(小浜市で)
宇宙サバ缶の商品化に向けて計画を練る福嶋さん(中央)ら生徒たち(小浜市で)
生徒たちが考えたパッケージ案
生徒たちが考えたパッケージ案

 古代から朝廷に食材を献上した若狭は「 御食みけつ 国」と呼ばれた。代表的な食材だったサバを京に運ぶ道「 さば 街道」。その街道は近年、地元の高校生たちの活躍で、宇宙にまで延びた。

 「サバ 醤油しょうゆ 味付け缶詰」。県立若狭高(小浜市)の生徒たちが開発してきた宇宙日本食は2020年、国際宇宙ステーション(ISS)に届けられた。

   ◇

 始まりは、県立小浜水産高(同市、後に若狭高に統合)が水産加工業の実習で製造したサバ缶。06年、海外への輸出を可能とする食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の認証を受けた。

 ハサップは元々、米航空宇宙局(NASA)が安全な宇宙食を作るために考案した。認証取得に尽力した小坂康之教諭(44)が授業でそう説明すると、ある生徒が言った。

 「だったら、サバ缶、宇宙に飛ばせるやん」

 面白い、と思った小坂教諭は、宇宙食への挑戦を決意。宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ )に手紙を送り、研究者に指導を仰ぎ、生徒たちと開発を始めた。

 宇宙では味覚が鈍り、味が薄く感じる。おいしく食べられるように、しょうゆを濃いめの味付けにするなどの工夫を重ねた。

 だが、すぐには形にならなかった。宇宙食には「常温で1年半以上保存できる」「食中毒を起こさない」のほかに、「飛び散らない」という条件もある。サバ缶には汁が伴う。宇宙空間で飛び散れば、機械の故障につながり、大惨事になる恐れがある。

 生徒たちは、片栗粉など思いつく限りの粉を試した。そんななか、15年頃、鯖街道の宿場町として栄えた若狭町熊川の特産品・葛粉を活用するというアイデアが出た。煮汁に加えて実験すると、傾けてもこぼれないとろみがついた。18年秋、JAXAから宇宙日本食に認証された。

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 「福井県の若狭高校のみなさんが作ってくれたサバ缶です」。20年11月、宇宙飛行士の野口聡一さんがISSで味わった。「普通は開けるとプシュッと汁が出てくるが、大変優秀。ジューシーでしょうゆの味もしみていて、大変おいしい。うまい」とたたえた。その様子は動画投稿サイトユーチューブで公開され、大きな反響を呼んだ。

 サバ缶作りに取り組んできた西本光里さん(3年)は、「宇宙でおいしく食べてもらえて感動した」と振り返る。中学3年の頃、宇宙日本食に認証されたニュースを見て、若狭高を選んだ。春には地元の企業に就職する。「私たち地方の高校生が世界の宇宙食を作れたのは誇りになった。仲間と一緒に課題をクリアしてきた経験は、今後にいきるはず」と充実の表情で話す。小坂教諭は「ついに夢をかなえてくれた」と教え子たちをたたえた。

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 21年度、西本さんの後輩3人が、宇宙サバ缶を地域の特産土産として販売する計画を進めている。販売戦略やパッケージをデザイン中で、福嶋航英さん(2年)はほかの2人と話し合い、サバが宇宙服に身を包むユニークな図案を考えた。缶詰のデザインに金色を使い、小浜水産高の校名もあしらうことで「宇宙というプレミアム感と長年続く研究の歴史を表現した」と狙いを語る。これを基にした正式なデザインは、「サバの日」(3月8日)に公表される。

 宇宙サバ缶研究には、これまで300人以上の生徒が関わってきた。小坂教諭はこう振り返る。「教師の指示を待つのではなく、みんなが主体的に取り組み、成長してくれたことが一番の成果。宇宙という壮大で高い目標は、生徒たちの主体性を引き出すための最高の課題です」

   

 ◆メモ

 

宇宙日本食

 宇宙飛行士のストレス軽減を目的に2006年に始まり、食品メーカーなどの申請を基にJAXAが審査。これまでにカレーやからあげ、ようかんなどが認証されている。

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